シェイブテイル日記2

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日本経済に対するフレーム

既によく報道されていますように、菅政権は昨日、元たちあがれ日本与謝野馨氏を経済財政担当相に就任させました。
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菅総理、与謝野氏起用は「社保、財源議論のため」(テレビ朝日ニュース 01/14 18:55)
 菅総理大臣は、与謝野経済財政担当大臣の起用について「社会保障と財源の議論を国民的に深めるためだ」と、今回の改造人事の大きな意義の一つだと位置づけた。

 菅総理大臣:「社会保障制度のあり方と同時に、持続可能な財源をいかにしていくのか。与謝野さんにこうした問題の責任者になってもらったこと、これはこの内閣改造の一つの大きな性格の表れだ」
 菅総理はまた、社会保障制度について「持続可能な財源の議論が必要だ」としながらも、「消費税引き上げのためだと決めつけるのはフェアではない」と反論した。
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与謝野氏は、増税論者として知られ、具体的には消費税アップにより、社会保障費負担の安定化を図り、併せて新発国債の発行を抑制しようとしています。
一方、昨今の日銀は、米国金融緩和(QE2)の後追いで、小出しの金融緩和策を実施しています。昨年11月以降の株高は主にこの日米金融緩和策に支えられているところです。

ここで話は飛びますが、ものごとの戦略を考える場合「フレーム」というものが必要になってきます。
フレームとは、写真撮影でいう、あのフレームと同じで、どの枠で構図を考えるか、ということです。

では、民主党・与謝野氏や日銀はそれぞれどのようなフレームで日本経済を見ているのでしょうか。

日本経済の因果関係  ←リンクをクリック!
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 民主党・与謝野氏は、「現在日本は、税収不足があり、今後の年金財源に不安があり、これを国債で補うことは避けたいので、国全体から広く税収が見込まれる消費税アップを目指したい。」といった、上の図の右下のほうに描かれたフレームで日本経済を見ています。
 かたや日銀は、「日本はゼロ金利という『異常な状態』なのに、国内に投資先が不足している。ゼロ以上には金利は下げられないので、量的緩和という方向で一層の金融緩和を行っている。」という図の上部に描かれたスタンスで金融政策運営を行っています。

しかし実際の日本経済の置かれた状況は、もっと広いフレームでしか捉えられません。
それが上の図全体です。 これを見れば一目瞭然、デフレも円高も、国内企業売上不振も、産業空洞化も、国債バブルも、名目長期金利の低位も、市場競争していない年金生活者・公務員以外の給与所得者の収入減も、税収減も全てただひとつの原因に行き着きます。

日本ではカネが不足しています。
税収不足の政府だけでなく、国内企業や家計にもカネが不足しているのです。

ただし日銀から直接金融緩和を受けている金融機関や、経済好調な中国などからの収入がある大企業はカネ余りです。

間違ったフレームに基づき、消費税アップやカネ余りの金融機関に向けた金融緩和などではなく、正しいフレームに基づき、カネが不足している政府・国内企業・家計に直接カネを渡す方策を採るべきです。

1)現代欧米での資産デフレでは各国で100兆円単位のカネが刷られて、なんとか危機をしのいでいます。
2)昭和初期のデフレでは高橋是清金本位制の足かせをはずし、カネを増やして世界に先駆けてデフレ不況を脱しました。
3)19世紀末の欧米のデフレではこれまた金本位制による通貨量の束縛が背景にありましたが、金の採掘技術の劇的改良(青化法)などにより解除されたことでデフレ脱却がなされました。
4)江戸時代の吉宗は当初与謝野氏顔負けの緊縮財政を目指しましたが、その結果著しいデフレに直面し、旧小判1両を新小判1.6両に両替する増歩という方法で貨幣を増やし、デフレを脱却しました。

国も時代も異なっていても、デフレ・カネ不足への対処法は全て、金を刷って必要な人々に行き渡らせることだったのです。

さて現代日本
白川日銀の金融緩和策は、欧米の遅れてやってきたデフレ対策を真似たものですから、なるほど方向性は正しいのですが、桁が1兆円単位と、必要なレベルに対し2桁ほど緩和規模が小さいので、その効果は株価・REITなど日銀が直接リスクをかぶっている範囲に留まり、日本全体を覆うデフレ脱却には全く力不足です。
 更にこのカネ不足のなか、いまのまま政府・与謝野氏の主張するような消費税増税を強行すれば、企業の8割を占める中小企業が続々と倒産し、「世界経済4%成長下での日本沈没」というガラパゴス化した日本ならではの悲劇が起こるでしょう。