シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

セイニアーリッジ政策によるマイナス5%消費税構想

さて、先日政府紙幣について少々書きました。

この政府紙幣については、丹羽春喜教授(1999)、榊原英資氏(2002)、ノーベル賞受賞者スティグリッツ教授(2002)、 最近では三宅久之岩國哲人宮崎哲弥、といった政治家や経済の専門家各氏からデフレ下の現代日本で発行するように提言されています。

この政府紙幣に関する法律としましては「通貨の単位及び貨幣の発行に関する法律」(S62法律第42号)に、貨幣の製造及び発行の権能が政府に属する「政府の貨幣発行特権 」(いわゆるセイニアーリッジ権限;ウィキペディアのようにシニョレッジと発音する場合もある)が明記されています。
これによれば政府紙幣発行は国会の承認も不要で閣議決定合法的に発行可能ですが、1兆円札といった超高額政府紙幣発行については、現行法では500円以下の補助貨幣と記念通貨の発行が認められているのみのため、結局法改正は必要ということになりますが、傲岸保守的な日銀の同意は不要です。
なお、小野盛司氏の著書「政府紙幣発行で日本経済が蘇る」(2002)によれば、”IMFは2001年、日銀による国債引き受けによる通貨増発 を推奨”した、とのことですが、日銀による政府発行国債の直接引き受けは、経済的効果は政府紙幣と同等(あるいはそれ以上)ですが、財政法第5条で原則禁止されています(国会承認で発行可能)。

上記で紹介しました、小野盛司氏の「政府紙幣発行で日本経済が蘇る」は、政府紙幣発行を唱える人たちのバイブルのような本なのですが、この中で「政府紙幣発行益を財源とするマイナス5%消費税」案が提案されています。
また日を改めてこの案の中身と効果ついて記載したいと思いますが、今日はnomutyan さんのブログに、政府紙幣に関するQandAが書かれているのを見つけましたので、以下ご紹介します。


(以下引用)−−−−−−−−−−−−−−−

そこで今週は、改めて政府紙幣(貨幣)をダイジェスト的に取上げる。
ただ政府紙幣(貨幣)という言葉さえ初めてという読者の方もいると思われるので、分り易くQ&A形式で説明する。
前半は政府紙幣(貨幣)の制度面の解説を行い、後半はこの発行による効果と副作用を取上げる。


Q1:政府が勝手に貨幣(紙幣を含む)を発行できるのでしょうか。また担保は必要ないのですか。

A:「政府貨幣」の発行は、独立国家固有の権限です。日本現行法では「通貨の単位および貨幣の発行等に関する法律」(昭和62年6月1日、法律第四二号)で定められています。同法の第四条には「貨幣の製造および発行の権能は、政府に属する」と明記されています。また同法によれば「貨幣」の素材や形式などは政令で定めることになっています。

今日使用されている、一円玉、100円玉などの補助貨幣もこの法律に基づいて発行されています。記念コインの発行も同様です。また「貨幣」の素材や形式などは政令で定めることになっていますから、コインの形ではなく、紙幣でもかまわないわけです。

さらに同法には、政府貨幣発行に関しては、発行額の制限や担保の規定はありません。発行は政府の自由なのです。ちなみに政府貨幣の額面から製造コストを差引いた額が、貨幣鋳造益となり、政府の収入になります。

Q2:新しい貨幣や紙幣が発行されると混乱が起りそうなのですが。

A:もちろん新しく貨幣や紙幣を発行してもかまいませんが、政府貨幣の発行権を日銀に売却し(政府紙幣を日銀に入金するという表現の方が適切か)、日銀の小切手を受取る方法があります。この場合には、新しい紙幣などを印刷する必要はないのです。つまり現実に流通する紙幣は、現行と同様に日銀券のみで済ませますことができ、複数紙幣の流通という混乱は避けられます。

Q3:日銀券の大増発になりそうですが、大丈夫ですか。また日銀券の発行には制限があったり、担保が必要ではありませんか。

A:まず政府紙幣を日銀に入金した場合、政府が日銀に持つ口座(国庫)の預金残高が増えます。しかしほとんどの支払いは銀行振込みですから、政府が財政支出に伴い預金を引出す時に、日銀券を物理的に増発しなければならないとは考えられません。仮に日銀券の増発が必要になっても、平成10年4月の日銀法改正によって、旧法で課せられていた日銀券の発行額の制限と担保条項は撤廃されてり、問題はクリアされています。

Q4:高額の政府貨幣や政府紙幣を発行することは可能ですか。

A:発行額に上限は有りませんが、上記「通貨の単位および貨幣の発行等に関する法律」によって貨幣の種類は、以下の通りに制限されています。
「第五条  貨幣の種類は、五百円、百円、五十円、十円、五円及び一円の六種類とする。
2  国家的な記念事業として閣議の決定を経て発行する貨幣の種類は、前項に規定する貨幣の種類のほか、一万円、五千円及び千円の三種類とする。
3  前項に規定する国家的な記念事業として発行する貨幣(以下この項及び第十条第一項において「記念貨幣」という。)の発行枚数は、記念貨幣ごとに政令で定める。」

たしかに最高額の500円硬貨でも、10兆円の政府貨幣発行となれば200億枚の鋳造が必要になり、とても現実的な話とは言えません。つまり現実の政策として実行するには、法律の改正が必要になると考えます。この点が政治的に難しい話になると思われます。



■効果と副作用

次は政府紙幣(貨幣)の効果と副作用である。効果については、財政支出に需要創出効果があるかどうかのいつもの議論になる。しかし当然、筆者達は日本での積極財政に賛成であるという立場であり、ここではこの議論は割愛する。一方、副作用についてはていねいな説明が重要である。また政府紙幣(貨幣)に反対する人々は副作用を強調し勝ちであるが、これについても適切な反論を行うことが必要である。


Q5:通貨の流通量が増えることによる物価上昇が心配です。

A:日本には、巨額のデフレ・ギャップが存在し、これが今日のデフレ経済の原因になっています。まずこのデフレ・ギャップの大きさが問題になります。しかしこのデフレ・ギャップの大きさには、諸説があり、数十兆円から数百兆円と大きな幅があります。真相はこの間にあると思われます。いずれにしても日本にはかなり大きなデフレ・ギャップがあることは事実です。

この結果、今日、企業の設備稼働率は極めて低く、街には失業者が溢れています。また金融面からも日本では巨額のマネーサプライが凍り付いたままです。デフレ・ギャップがある限り、物価は上昇しにくいのです。しかし政策を進めるに当り、とにかく物価を上昇させないことが肝腎です。国民の物価上昇の許容範囲が年率2〜3%なら、物価の上昇がこの範囲に収まるよう、場合によっては途中で政府貨幣の発行を抑える必要があります。

Q6:それでもインフレによる物価上昇が心配です。

A:デフレギャップの存在を別にしても、日本の経済は物価が上昇しにくい体質になっています。このことを、まず財を「物」と「サービス」に分けて説明します。

「物」については、先程からご説明しているように日本には大きな遊休の生産設備があり、需要が増えても価格は簡単に上昇しないと考えても良いでしょう。実際、大手製造業に対する「需要が伸びた場合の増産方法」というアンケートの調査でも、大半の企業が既存設備の活用や稼働率引上げと答えています。

また今日消費財に大きな比率を占めているのが工業製品です。最近では、この工業製品は需要が増えると、中長期にはむしろ価格が下落する傾向にあります。たとえばエアコン、パソコン、DVDなどです。

「物」の次はサービスです。サービスと言えば、まず公共料金です。これは政府のコントロール下にあり、当然抑えることは可能です。また医療費も公共料金同様、実質的に政府の管理下にあると言え、抑えることは比較的簡単と考えます。

近年、サービス支出の中で比重が大きくなっているのが通信費です。この通信費は、工業製品と似て、需要が増えるほど価格が低下する傾向にあります。携帯電話の通話料やインターネットの利用料などはこの典型です。これらを理論経済学的に説明すれば、08/11/10(第548号)「デフレ経済の足音」で述べたように、総供給曲線が右肩上がりではなくフラット化しているということです。

残る問題は、コストに占める人件費の比率が大きい一般のサービスです。しかし多くの失業者がいる今日の雇用状況を見れば、人件費が直ぐに高騰することは考えられません。

これらを総合的に勘案すれば、よほどの大きな需要の増大がない限り、サービス価格の上昇は限定的と考えます。

Q7:政府貨幣の発行で、「円」は信認を失い、暴落しませんか。

A:長期的には為替水準は、経常収支で決まると言う考えがあります。政府貨幣の発行によって、経済活動が活発になり、国民所得が増えれば、輸入が増え経常収支の黒字が減ったり、さらに赤字になることが考えられます。たしかに経常収支が赤字になるといった事態は円安要因となります。

また政府貨幣の発行によって、多少物価の上昇が起ることが考えられます。諸外国と同程度の物価上昇なら問題はありませんが、他の国よりも大きな物価上昇があった場合には、「円」の価値が相対的に減価することなります。これも物価上昇は円安要因となります。

しかし日本は、海外に差引き180兆円もの資産を持っています。この海外資産から大きな配当金や利息と言った所得が毎年発生しています。つまり仮に貿易・サービス収支が仮に赤字になっても、簡単には経常収支が赤字にはなりません。

さらに今日、資本取引による国際的な資本の移動が大きくなっています。中短期的に為替相場も、経常収支より、この資本収支の影響がより大きくなっています。まず国際的な資本には金利差で動くものがあります。政府貨幣の発行で経済活動が活発になれば、日本の金利が少しは上昇する可能性があります。これが円高要因となります。

そして国際的な資本の移動に関して重要なことは、経済が成長している国には資金が集まりやすいと言う事実です。もし日本が政府貨幣の発行よる積極財政に転換すれば、日本の景気が良くなります。資本は、期待収益率によって動くと考えられます。日本の景気が良くなり、日本での期待収益率が大きくなれば、「日本に投資を行ったり、日本株を買えば儲かる」と言うことになり、日本に資本が流れて来る可能性が大きいのです。

特に今日のように、欧米の経済がスランプになっており、国際的な資金は行き場を失っています。したがって期待収益率が大きくなった日本には、より大きな資金が集まりやすいのです。さらにこのような状況では「円の先高」を予想した投機的な資金も流入してくることが考えられます。この場合には、かなり急激な円高となる可能性があります。

実際、日本の過去の為替動向では、政府が積極財政を行うと「円高」になり、反対に緊縮財政に転換すると円安に傾向にあります。やはりこれも為替相場に対する資本取引の影響が大きくなっている証拠と考えます。このように政府貨幣を発行した場合には、為替は「円安」にも「円高」にもなる可能性があります。つまり少なくとも政府貨幣の発行によって「円」が暴落するという話は根拠が薄弱です。

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