シェイブテイル日記2

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デフレ脱却には包括緩和は無効で政府紙幣が有効(2)

デフレ脱却には包括緩和は無効で政府紙幣が有効(1)より

香港では10香港ドルだけが政府紙幣で、他の紙幣は民営3銀行が発行しているので、日本でも日銀券と政府紙幣の混合流通もあり、かとは思います。 ただ、それよりもスマートなのは、政府が10兆円単位の政府紙幣を発行し、これを日銀で同額の日銀券に両替し、この日銀券を市中に流通させることだと思います。こうした考え方は何も私の独創でもなんでもなく、日銀もこの点を想定し、かつ日銀総裁が答弁もしています。

(以下引用)−−−−−−−−−−−−−−−−−
 ──景気対策として政府紙幣を発行したらどうかという議論があるが、中央銀行としてどう考えるか。

(白川総裁答弁) 「政府紙幣の発行は、その仕組み如何によって、実質的には将来の返済が必要な資金調達である国債の市中発行と同じことなのか、あるいは通貨の信認を損なうほど大きな弊害を伴う無利息の永久国債の日銀による引き受けということと同じなのか、そのいずれかになるというふうに思う。政府紙幣が現在の貨幣、コインと同じ仕組みで発行されるケースを仮定して考えると、次のようなことになる。現在の貨幣、コインは市中から日銀に還流してきた段階で、政府においてこれを回収するための財源が必要となるという仕組みなので、政府紙幣もこれと同じになる。したがって、この場合、政府紙幣の発行は結局は、政府紙幣が戻ってきた段階で資金調達が必要になるという意味で、これは国債の発行と実体的に変りないと思う」

 「他方、政府紙幣が市中から日銀に還流してきたときにも、仮に政府がこれを解消せず、日銀に保有させ続けるという形で政府紙幣が発行されるというケースを仮想的に考えてみると、この場合、確かに政府は回収のための財源を必要としないことになる。しかし、この仕組みも日銀に無利息かつ償還期限の無い政府の債務を保有させる点で、これは無利息の永久国債を日銀に引き受けさせるということに等しく、これは大きな弊害が生じる。弊害の中味だが、日銀券の裏づけとなる日銀の資産として、無利息かつ転売不能な資産を保有することになり、円滑な金融調節が阻害されたり、日銀の財務の健全性が損なわれることへの懸念を通じて、通貨に対する信認が害される恐れがある。また政府が、日銀による国債の直接引き受けと同じ仕組みにより、恒久的な資金調達を行うことが、国の債務返済にかかる能力や意志に対する市場の懸念を惹起して、長期金利の上昇を招く恐れがある。政府紙幣の発行については政府が判断する事項ではあるが、以上言った点を踏まえると、非常に慎重な考慮を要すると考えられる」
(引用終わり)−−−−−−−−−−−−−

前回に私が述べた説は、白川総裁の指摘する政府紙幣案の2つ目の「」で述べられた説と同じものです。
白川総裁はこの場合の政府紙幣の弊害を、
「これは無利息の永久国債を日銀に引き受けさせるということに等しく、これは大きな弊害が生じる。弊害の中味だが、日銀券の裏づけとなる日銀の資産として、無利息かつ転売不能な資産を保有することになり、円滑な金融調節が阻害されたり、日銀の財務の健全性が損なわれることへの懸念を通じて、通貨に対する信認が害される恐れがある。」と指摘しています。 
この指摘を簡単にいえば、日銀のバランスシートが政府紙幣によって痛むということでしょう。 
しかし、同じ政府の信用を背景とする「日銀券」「国債」「政府紙幣]の中で、政府紙幣だけ信用がない、というのはありえない。 これらのどれかが信用がないときは日本が経済的に破綻した時であり、そんな時には終戦直後の日本同様、これらのどれにも信用はなくなる(そしてインフレになる)でしょう。
また、政府紙幣を引き受ければ、永久国債を引き受けたと同じ、という指摘がありますが、現在の、デフレのままの日本であれば、日銀が保有する国債もまた永久に償還不可能であり、デフレを脱却し税収が回復すればこれを財源に日銀の(既に引き受けている)国債も今後引き受けるであろう政府紙幣も全て政府で消却してもらうこともできます。
二日にわたって長々と述べてきましたが、まとめますと
1)デフレ脱却には、民間(非金融部門)にカネを潤沢に流す必要があるが、
2)かつての国債・公共事業の組み合わせでも、現在までの日銀による量的緩和、あるいは包括緩和も無力であり
3)有効な策は政府紙幣発行とその日銀券への両替
4)この、政府紙幣によるデフレ脱却に対する日銀の懸念は杞憂に過ぎない
 (あるいは日銀の恐れていること=日銀券の稀少性による過剰な価値の剥落=こそ、国民が望むべきこと
ということです。

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