シェイブテイル日記2

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予算委員会での白川総裁と山本幸三議員の遣り取り

2月16日の予算委員会で、自民党山本幸三議員が日銀・白川総裁に、デフレ対策など金融政策について質問しました。

山本幸三議員は、
・マッカラムルールから見て、10%以上、あるいは30%程度マネタリーベースを増やさない限り、デフレ脱却はできない
・日銀が物価指標としているCPIには下方バイアスがあり、今日銀が「物価安定の理解」ということで打ち出しているCPI1-3%というレンジは低すぎる
・日銀では「物価安定の理解」などと物価目標数値に何ら責任を持たないやり方をしているが、他のG7諸国は大半がインフレターゲット政策を採っている

といった論旨で白川総裁の金融政策を追求しましたが、

白川総裁は、このように答えています。

(白川総裁)リーマンショック直後は、今山本議員がおっしゃた日銀当座預金を増やした。
→質問で、山本議員は日銀当座預金を増やせなどとは要求していません。 デフレを脱却できるように、マネタリーベースを増やせと言っているんですが、白川総裁は日銀当座預金増額は効果がないことに論点をずらし、質問には答えていません。

(白川総裁)G7構成国では、イギリスとカナダはインフレターゲット政策をとっているが、日本を含む他の国はインフレターゲット政策をとっていない。
→この発言の後、すぐに山本議員から反撃を受けたように、イギリス・カナダの他、EUインフレターゲット政策をとっていますから、独・仏・伊は実質2%程度のインフレターゲット政策を採っています。また米国も2%程度のインフレが望ましいとしていますが、米国の金融政策の目標は緩やかなインフレの他、失業率も抑えることとしているため、インフレ率だけを前面に出して、FRBが政策の幅を狭めることを避けているものと思われます。
 簡単に言えば、G7諸国でインフレターゲット政策をとっていないのは実質日本だけですが、白川総裁がこんな簡単な事実を知らないわけがないのに、「日本を含む他の国はインフレターゲット政策をとっていない」などと、曲解して述べているのはフェアではありません。

この予算委員会で白川総裁が直接言及したものではありませんが、山本幸三議員によれば、白川氏は日銀総裁になる前、「現代の金融政策―理論と実際」という本を著し、
?量的緩和には時間軸効果しかない
?デフレはデフレスパイラルという、大恐慌のような特殊例でのみ不況が起こり、それ以外では不況とは関係ない
という主張をしており、この主張にそった金融政策のみを行っているとのことでした。

 白川総裁をはじめとする日銀幹部が量的緩和に否定的であるのは確かで、昨今もそうした発言が繰り返されています。
しかし政策金利が実質ゼロの今、量的緩和政策以外にデフレを脱却する手段があるのでしょうか。
 またこのデフレ脱却方法論の件もさることながら、驚きを禁じ得ないのは、デフレでも通常は景気が悪くはならない、という主張の方です。 
白川総裁の主張とは逆に、デフレで好況、などという状況は民間の目からは想像しにくいです。
企業の売上が減る、給与が減るといったデフレからの直接的影響こそが不況なのですから。

 既に見てきたように、日本は世界で唯一物価が下がっており、しかもそれが10年以上続いています。
その間、働き盛りの30代男子の賃金水準を例にとれば
(30代前半)’97年・513万円→’08年・453万円
(30代後半)’97年・589万円→’08年・530万円
と、1割以上も年収が下がっています。

今回の予算委員会での山本幸三議員と白川総裁の遣り取りを視聴して、痛感したこと。
自分自身の生活と国民生活が完全に切り離された経済学者である白川総裁は、日本がデフレのために不況であることを実感していない。
となると、少なくとも、白川総裁が日銀総裁である間は、日本がデフレを脱却することはない、そう思えました。

できれば、山本幸三議員のように、デフレの害を理解し、その方法論もしっかりと自分で語れる人。 このような人に日銀総裁の座をバトンタッチしてもらうことはできないのでしょうか。