シェイブテイル日記2

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日本の恐慌経済からの脱出法

 以前このブログで、1997年の橋本政権以降の日本では主に財政政策と主に金融政策とがそれぞれ実施されただけで、その間の物価下落率は殆ど変わらなかったことをお伝えしました。*1 
 今回はなぜ片方だけではデフレ脱却に効果が薄かったかを再考してみたいと思います。

デフレ不況に対する財政政策と金融政策の効果
橋本内閣が引き起こしたデフレ不況に対し、続く小渕・森内閣
もっぱら財政政策で対応し巨額は国債残高を積み上げた。
続く小泉内閣では在政策は止め、もっぱら金融政策でデフレ脱却を図ろうとした。 
ただ実際には、いずれの政策でもほぼ一定のスピードで物価が下落している。


 ケインズ型の政策を主張している三橋貴明氏は、木下栄蔵氏の著書 *2をベースに

【通常経済(=アダム・スミスの経済)】
 ■企業:企業は自らの利潤の最大化を求めて企業活動を行う
 ■消費者(家計):消費者は自らの効用の最大化を求めて消費活動を行う

【恐慌経済(=ケインズ経済)】
 ■企業:企業は自社の債務(借金)を最小に
 ■消費者(家計):消費者は自らの債務(借金)を最小にするように行動するか、ケインズ経済を肌で感じ取り、貯蓄に励む

という整理をして、現代の日米欧は恐慌経済にある、としています。*3


確かに現在の日本では企業は過去最大の内部留保を、現預金の形で貯め込んでいます。 家計も(主には高齢者家計ですが)1,500兆円近い預貯金を持っています。 

この恐慌状態、あるいは日本のように更にデフレも加わった状態を考えますと、金融財政政策は次のように働くのでしょう。

1.財政政策だけを実施
開放経済・変動相場制の下、財政政策だけを実施しても、金利が上がろうとすることで通貨が買われ、結局輸出企業の輸出減により、財政政策の効果が減殺される(いわゆるマンデルフレミング効果)

2.金融政策だけを実施

国内では投資効率<市場利子率といった案件だらけであり、ゼロに近い金利により借りやすくなった通貨を借りて、海外に投資するキャリー・トレードにより、通貨は売られるが、投資は海外でなされるので、金融政策の効果が減殺される。

そして
3.財政政策と金融政策を同時に実施
この場合、財政政策での円高効果を金融政策が減殺し、マンデルフレミング効果が観察されず、国内投資が活発化する。 投資効率>市場利子率 という案件が増え恐慌経済あるいはデフレを脱却する。

ということで、安倍総裁の提唱する、インフレ目標下の際限ない金融緩和と、大規模な財政政策が最強かと思います。
一旦、インフレ転換し、 投資効率>市場利子率という案件が潤沢な通常経済(アダム・スミス型)に戻れば、もはや金融・財政政策を総動員して公的需要を喚起せずとも、民間経済に点火され、あとは物価目標と失業率位を指標に金融・財政政策をコントロールすればいいのではないでしょうか。


 今回の衆議院選挙では、財政政策オンリーでデフレ脱却を訴える政党は見当たりませんが、金融政策だけで十分とする政党(みんなの党など)は、過去に同様の手法だった小泉改革でデフレを脱却したのか、しなかったとすればそれはなぜかに答える義務があると思います。

*1: デフレ不況脱却策−マネタリストとケインジアンのどちらが正しい?

*2:「経済学はなぜ間違え続けるのか マルクスケインズも見逃した経済の2つの法則」

*3:三橋貴明氏のブログ記事 2009-11-16 http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-10389574120.html:title=ダーウィンの罠 中編]