シェイブテイル日記2

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前の消費税増税頃の経済状況はどうだったか

 1994年頃村山内閣で消費税率引き上げが決定された時は、現在と経済環境が似ています。 
具体的な年表で当時の状況を見てみました。

 本日は四半期のGDP統計が発表され、GDPはゆるやかに伸びているものの、事前の市場の予測には足りない結果となっています。

 内閣府が12日発表した4-6月期の国内総生産(GDP、季節調整値)の速報値は、物価変動を除いた実質で前期比0.6%増、年率換算で2.6%増となった。同期のGDPは、政府が今秋に消費増税の可否を決める際の重要な判断材料。3四半期連続でプラス成長を確保し、増税の前提となる「経済状況の好転」を一定程度確認する内容となったが、設備投資など勢いが欠ける面もあり、安倍晋三首相は慎重に検討すると見られる。
 
     GDP:年率2.6%増 3期連続、市場予測下回る 毎日jp2013年8月12日

この結果を受けて、安倍首相が消費税増税についてどう判断されるか注目されます。

今ネットで検索しましても、前回橋本内閣で消費税増税を実施した1997年前後、消費税増税を挟んだ経済動向がどうであったか書かれたものがなかなか見つからなくなっています。

そこでネットと書籍*1から簡単な経済年表を作ってみました。

❏村山内閣
1994年7月 村山内閣誕生
1994年9月 消費増税閣議決定、5.5兆円減税
1994年11月 消費税増税法案成立(3→5%)
1995年1月 阪神大震災
1995年秋 武村蔵相「財政危機宣言」

今から思えば村山内閣の時代はバブル崩壊の後遺症が癒えつつあり、比較的穏やかな経済状況でした。
94年時点での政府粗債務の名目GDP比率も83%と、健全とまでは言えませんが現在の250%近い数字に比べれば3分の1程度に過ぎませんでした。
それでも当時は財政状況は危機的、として消費税増税法案が可決され、武村蔵相の「財政危機宣言」がなされました。

❏橋本内閣
1996年9月 橋本内閣成立
1997年4月 消費税増税(3→5%) 5兆円規模、
      特別減税廃止 2兆円規模
      医療費国民転嫁  2兆円規模
      公共事業削減   4兆円規模 
1997年7月 アジア通貨危機
1997年11月 金融機関破綻 拓銀、三洋証券、山一證券
1998年4月 経済総合対策 16兆円規模
        改正日銀法施行

橋本内閣で消費税増税が実施されました。特別減税廃止、医療費国民転嫁、公共事業削減もあわせると、合計13兆円に上る国民負担増となりました。

不幸にもアジア通貨危機が発生したことも相まって、11月には金融機関破綻が相次ぎ、増税のわずか1年後には大規模な減税などの経済対策が必要となりました。
橋本内閣の頃、デフレが顕在化し、名目GDPやサラリーマン平均給与がピークアウトして、ほぼ右肩下がりで現在に至っています。

小渕内閣
1998年8月 小渕内閣誕生
1998年10月 長銀破綻
1998年11月 緊急経済対策 24兆円規模
1999年11月 経済新生対策 18兆円規模

小渕内閣は、橋本増税の悪影響に追われる内閣となりました。2年で40兆円もの景気対策を実施し、政府債務が積み上がったため、小渕首相は「世界一の借金王」などと自らを揶揄したのでした。

小渕首相にとって不運だったのは、1998年に改正日銀法が施行され、日銀の独立性が極めて高まっていて、当時の速水日銀総裁は、すでにデフレ傾向が顕在化しているにもかかわらず、「良いデフレ論」を振りまき、デフレをむしろ歓迎する姿勢を見せました。

そのためこれら40兆円の財政出動は経済の激変緩和効果はあったものの、デフレは深刻化していきました。

図1 構造的財政収支対GDP比推移
出所:IMF WEO Apr 2013 縦軸:パーセント。
日本の場合、構造的財政収支は基礎的財政収支に概ね等しい。
財政危機宣言を行い、消費税増税を決めた1995年頃に比べ
増税後は財政収支は却って悪化した。
1997年夏、経済危機に見舞われた韓国・タイでは
財政収支は殆ど影響が出なかったか、短期間で回復している。

図1は、当時の構造的財政収支(基礎的財政収支に近い概念)の推移です。
皮肉なことに、消費税増税に先立ち、武村蔵相が「財政危機宣言」をした頃は財政収支が上向こうとしていたようです。この辺り、現在の経済環境にやや似ています。

その後消費税増税・国民負担増を実施すると、政府の意に反して財政収支は悪化しています。

アジア通貨危機が日本の財政悪化の原因、といった向きもあるようですが、通貨危機当事国のタイ・韓国などの諸国が2003年までには危機を脱し、財政収支が改善したのとデフレ日本の財政悪化は対照をなしています。
その日本でも、景気が回復した2001年から2007年にかけては財政収支は改善を続けていました。

デフレ日本では増税をすれば、当然景気は悪くなり、その結果財政収支は悪化します。
安倍首相が、多少の景気回復傾向により増税に踏み切り、財政悪化を招いた村山・橋本内閣と同じ轍を踏まないように望みます。

*1:平成経済20年史(紺谷典子)、他