シェイブテイル日記2

シェイブテイル日記をこちらに引っ越しました。

世界での左派政党躍進と我が民主党の差

近年、左派政党の活躍が目立っています(日本は別ですが)。

ギリシャでは今年1月、シリザ(急進左派連合)が反緊縮を掲げて政権与党(チプラス首相)となったのはよく知られるところです。

スペインでは、2014年1月に結党したポデモスが急速に支持を伸ばし、今年12月の総選挙を前に、台風の目となりつつあります。

スコットランドでは、2015年5月、イギリス議会選挙でスコットランド国民党スコットランド選挙区に割り振られた59議席の大半を得るという大躍進を果たしました。

英国では、労働党がこれまで中道よりで、緊縮財政容認とみられ、党勢が落ちていましたが、今年9月、ジェレミー・コービンが初回で過半数の得票を得て労働党党首に選ばれました。 
最近ではピケティとスティグリッツが反緊縮を唱えるコービンのアドバイザーに就任するとも報道されています。

カナダでもカナダ自由党(ジャスティン・トルドー党首)が所得再配分国民皆保険などを主張し、最近の総選挙で大幅に議席を伸ばし、単独過半数を獲得、政権奪回を果たしました。

過去40年ほどの世界の政治経済を振り返ってみますと、1970年代のスタグフレーションケインズ主義ではうまく対応できなかったことから、マネタリズムが力を得て、それを背景にロナルド・レーガン大統領やサッチャー首相らが新自由主義に則った経済運営を始めました。

それは、小さな政府、市場原理主義自由貿易規制緩和などで特徴づけられる政策であり、財政支出は抑制し、経済政策は金融政策中心となりました。

そして、グローバリズムが浸透し、世界の製造業は中国など、日本を除く東アジアに偏り、欧米では金融部門が活躍して短期利益を上げるために資本が世界を駆け巡るようになりました。


図表1 世界での金融危機発生件数
出所:「なぜ1%が金持ちで、99%が貧乏になるか」(p209)*1より筆者作成。

その結果は、図表1に示すように、第二次大戦後のケインズ主義の時代に比べると、頻繁に経済危機が起きるような世界となりました。 世界経済が欧米金融機関にとってカジノ化したといえるでしょう。

経済危機が発生すると、一旦は資本家も労働者も打撃を受けます。 ところが、その際に労働者はリストラなどに遭って収入が不安定化しますが、資本家の方は経済危機もまた投資のネタとして成長するので、結局新自由主義の時代とは、強者にとっての自由の時代であり、今の世界は1%が金持ちで99%が貧乏という形になってしまっています。

冒頭書いた、左派勢力が伸びた諸国では、経済危機に際して貧乏人が一層貧乏になるため、政府が意図せざる財政出動により政府債務健全性指標を悪化させてきました。 すると新自由主義政権は更なる緊縮財政を目指すようになり、景気回復期にも好況が実感できないことが常態化しました。

この点は日本も同様で、中曽根首相が新自由主義的政策を初めて導入して以降、特に橋本・小泉・歴代民主党首相そして現安倍政権(消費税増税を決断する前を除く)などは緊縮財政を当然の如く継続し、この15年以上、給与所得者の所得はほぼ右肩下がりのトレンドとなっています。

消費税増税アベノミクスが変質する前は、金融・財政の同時発動により、百貨店なども内需で賑わい、また税収も政府や財政学者が想定する幅をはるかに超えて急増し、財政出動は十分元が取れていたと考えられます。

ところが、安倍政権は2014年の消費税増税を容認し、今年になってからは「骨太方針2015」として経済成長と財政再建の二兎を追うとし、事実上緊縮財政に舵を切りました。

ただ、変質するまでのアベノミクスが特別であって、経済右派自民党が、支持層である資本家・金持ち優遇策に出るのはある意味致し方ないのかも知れません。

ただ、日本にも左派政党はあるわけですが、第二党の民主党などまでもが、時代遅れの新自由主義に毒されたように、消費税増税を容認する姿勢は近年の世界の左派政党の潮流から取り残されていて、本当に何を考えているのか分かりません。 シェイブテイルから言わせてもらうなら、民主党の議員などは議員という職業にしがみつく以外何にも考えていないと思うのですが、違うのでしょうか、民主党さん。

*1:この部分の元ネタは B. Eichengreen (2002) Crisis Now and Then, What Lessons from the Latest era of Financial Globalization.