シェイブテイル日記2

シェイブテイル日記をこちらに引っ越しました。

米国「金融政策では過剰な財政再建策は打ち消せない」

少し前になりますが、米国財務書が今年4月に出した為替報告書で日本のアベノミクスについても触れられていました。*1
この報告書で、日本に関する部分はそう長い文面ではなく、その前半は日本の経済状況に関する事実の記載のみでしたので、改めて後半部分を読んでみました。

以下日本に関する後半部分の拙訳です。

過去15年間、日本は慢性的なデフレを脱却し、持続的な経済成長を確立しようと悪戦苦闘している。 安部首相のアベノミクス「三本の矢」はこの挑戦の中で最も有効なものである。
アグレッシブな金融政策と当初積極的だった財政政策は短期的には日本の経済成長に寄与し、2013年の第四四半期にはGDP成長率は2.5%に回復した。 2013年の4四半期を通じ、内需は累積で3%ポイント寄与し、純輸出はマイナス0.2%ポイントにとどまった。

日本の財政当局は政府純債務対名目GDP比140%、粗債務対名目GDP比250%という状況から、公共政策をより持続的な基盤にするために、2014年には緊縮財政に転じた。 日本では2014年4月に消費税を従来の5%から8%に上げ、2015年10月に予定されていた第二段階では更に10%に上げるよう計画されていたが、これは財政当局の債務削減策の重要な部分を占める。

しかしながら、日本があまりにも急激な財政再建策をとることはデフレ脱却を困難にするため、財政刺激策の効果縮小や復興投資など財政政策を含む全体に気を配る必要がある。 
短期的には、消費税によるマイナス効果を、国内需要を喚起する財政政策で緩和せねばならない。
2013年12月には消費税による成長抑制効果を緩和するため日本政府は5.5兆円の補正予算を承認した。

日本政府は消費税引き上げ効果が成長に影響する場合政府支出を前倒しする計画としている。 財政当局は一般政府歳出が成長を加速するという計画を立てているが、当局の予測よりも成長が減速するようならば、追加的な財政政策を準備しておく必要がある。
財政再建が始まり、円安効果が減弱することでIMFは日本の成長は2014年に1.5%、15年には1.0%に減速すると予想している。

日本が持続的成長とデフレ脱却をもたらす政策をとることが、政策の成功と同時に国内需要増大を通じて日本の経済政策が機能することで世界経済にも寄与する。 持続的国内需要成長は、事業・住宅投資、家計消費、インフレに打ち勝つ賃金増加に依存する。この点で、日本は財政再建のペースを十分に計算することが重要である。 過度な金融政策依存では過剰な財政再建政策を打ち消すことも、成長トレンドと国内需要を高める構造改革に替えることも出来ない。
内需を持続的に増加させる、野心的かつ効果的な構造改革には、さらなる就労増加、高所得化政策も含まれる。
その他、新製品や規制緩和により国内セクター(特にサービス分野)を開放し、日本での事業・投資を容易にする政策や、農業利用の土地有効利用も含まれる。 

安倍首相はTPPの交渉参加を表明し、日本は交渉に2013年7月より加わった。
TPPにより農業や医療サービスなどの分野で内部改革を推進させ成長を促進させることができる。


元々アベノミクスは大胆な金融政策と機動的な財政政策、そして民間投資を活性化する成長戦略の三本の矢だったわけですが、2013年5月には早くも経済財政諮問会議の民間議員らから財政再建を第四の矢とせよという横槍が入り、消費税8%への増税が既定路線のようになり、現在のような輸出大企業などは好調だが、好景気は中小零細には及ばないというまだら模様の景気となり、物価も増税した2014年春頃から再デフレに向かって反転し始めました。

麻生財務大臣などは消費税増税国際公約などとうそぶきましたが、米国からは金融政策+財政再建という現行の変質アベノミクスへの否定的な見解が出され、元の三本の矢に戻ることが期待されています。

1997年の5%への消費税増税の際には増税の悪影響が顕在化したのは増税の翌年でした。 安倍首相には今後の景気変調への目配りを欠かさず、景気底割れを防ぐためにも、財政出動を躊躇なく検討してもらいたいと思います。

*1:Report to Congress on International Economic and Exchange Rate Policies U.S. Department of the Treasury Office of International Affairs April 15, 2014