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デフレの正体は借金不足

■デフレの正体は借金不足
突然こういっても何のことだかさっぱり解らないかもしれません。
しかし次の図1を見ていただければその意味がわかっていただけるのではないでしょうか。

企業が債務を持てばインフレに、債務を返済すればデフレに
図1 企業の資金過不足と物価(1980-2013)
出所:企業資金過不足(フロー)=日銀資金循環統計
   物価(GDPデフレーター)=IMF WEO Oct 2014
企業の資金過不足と物価の相関係数が大きい(R^2=0.76)
だけでなく、近似線はほぼ原点を通っている。

以前このブログに書きましたように、全てのマネーは債務と一体となって生まれます。

日本の家計はほぼいつでも貯蓄をしていますから、マネーの元である債務はその他の主体(企業、政府、海外)が担うことになります。
 このうち企業は、投資に適したマイルドインフレならば、健全に債務を持つことができ、1990年半ばまでの日本企業は債務を増やしていたため、日本経済がデフレになることはありませんでした。

ところが1997年、橋本内閣が5%への消費税増税と緊縮財政を始め、民間のマネーを政府に吸い上げた途端、日本はデフレ化しました。

デフレで企業が債務を抱えると、その債務には元来名目金利がつくのに、デフレによる実質金利は更に重くなります。また、将来の売上目標もデフレにより控えめな予測しかできなくなります。

こうして、企業は金利負担のある債務の返済に勤しむようになりました。
企業はデフレに転換した1998年以降、一貫して債務を返済(日銀統計上は資金余剰と表現される)し続けています。

マネーと表裏一体である債務が一貫して減るのですから、企業の債務返済と物価下落は高い相関性を持つことになります。

■政府は何をすべきか
 現在の安倍政権は黒田日銀と一体となって、市中銀行にマネーの元となる(はずの)マネタリーベースを大量に供給しています。
図2はこのマネタリーベースと物価の関係です。

図2 マネタリーベースと物価の相関(1980-2013)
出所:マネタリーベース=日銀資金循環統計
   物価(GDPデフレーター)=IMF WEO Oct 2014
日銀は直近(2014.12)には267兆円ものマネタリーベースを供給しているが、
消費税増税の影響を除けば、物価はゼロを超えず最近では下がり気味。
(14年はGDPデフレーターが現在未発表のため、プロットされてはいない)
ちなみに、日本の名目GDPが最高だった'97年のマネタリーベースは
約50兆円で現在の1/5程度。

最近、日銀は2年前に約束した2015年3月までの物価2%へのインフレ転換をほぼ無理と認めているようです。
日本のGDPの4割に及ぶマネタリーベースを供給しても物価はゼロを超えません。

経済の実態を知る人ならば常識ですが、バブル期ならいざ知らず、銀行は担保なし、将来性も不明という企業にお金を貸してくれるわけではありません。

 銀行の資金は、あくまでも企業側から将来への投資資金を借りるものですが、現在はデフレである以上、図1で見たとおり、企業は合理的な行動として銀行に債務を返済し、それが直接デフレを深化させているのですから、日銀が単に銀行の日銀当座預金にマネタリーベースを積み上げるという行為は、企業が債務を持てるように経済環境を転換するためにはほとんど意味を持っていません。

日本での主な経済主体、つまり家計、企業、政府、海外のうち、家計、企業は資金が余剰で、海外は日本にはコントロール不能とすれば、デフレを脱却するためにマネーの裏付けである債務を抱えることができるのは政府だけです

ところが安倍内閣ではプライマリーバランス均衡を達成するべく、一層の政府債務削減を目指しているようです。

日本が本当に取るべき道は現在の韓国や中国、あるいは半世紀前の日本のように、政府債務を増やして、その結果、民間経済つまり名目GDPを大きく伸ばすことです。
そうすることにより、プライマリーバランス均衡などといった緊縮財政政策をとった場合よりも、財政健全性ははるかに高まります。


 

マネーは誰かの債務と表裏一体。
政府が財政健全化を目指して緊縮財政をした時から日本はデフレ経済に転換した。
現在の日本では、政府以外の主体が債務を抱え込む合理的理由がない。
プライマリーバランス均衡目標は実は政府の財政健全化を却って阻害している

これらさえ為政者の方々に理解してもらえるならば、なぜ日本が現在デフレであり、なぜ日銀が巨額のマネタリーベースを供給しても、インフレ転換にほとんど効果がなく、なぜ今政府が緊縮財政を止めて、国債大量発行などで、債務をもっと抱えて大幅な財政拡大政策に転向し、民間にマネーを供給すべきかも自ずと分かっていただけるのではないでしょうか。