シェイブテイル日記2

シェイブテイル日記をこちらに引っ越しました。

「財政危機」は消費税が創りだす

安倍首相は経済成長と財政再建の二兎を追うと宣言して、消費税増税に踏み切りました。
ただ、消費税増税こそが「財政危機」を創り出している可能性があります。

今日の報道では、12月の消費支出が3・4%減り、9ヶ月連続の減少で、東日本大震災の時期の記録に並んだことが報じられています。

 総務省が30日発表した2014年12月の2人以上世帯の家計調査によると、1世帯当たりの消費支出は33万2363円となり、物価変動を除いた実質で前年同月比3・4%減となった。  消費税率が引き上げられた14年4月以降、9カ月連続のマイナス。東日本大震災の起きた11年3〜11月に9カ月連続で減少した記録に並んだ。
 12月消費支出、3・4%減 9カ月連続、震災後に並ぶ 共同ニュース  2015・1・30

消費税を3%上げればおよそ2%実質所得は減少するのですから、消費支出が大きく抑制されるのは当然でしょう。

また今年の3月には自営業者約600万人に14年度分消費税の納税義務が発生しますが、そのうち半数弱は消費税の全額転嫁ができていないと言われています。 
元々乏しい運転資金を納付しただけでも厳しいですが、預かってもいない消費税を払わされるが払おうにも払えないなら国税庁は差し押さえに動くでしょう。

 *−−−−−−−−*

図は1980年以降の名目GDPと政府純債務の関係をプロットしたものです。
この図にはいくつかの変曲点があります。
ひとつ目は1985年(青丸)。 プラザ合意により日本は急激な円高となり、これに対応するため、日本は低金利政策をとったため、過剰流動性が発生し、日本の80年代後半はバブルとなりました。空前の好景気により税収が増えて、自然に財政黒字化して政府純債務対名目GDP比は減少に転じています。

2つ目が1991年(緑丸)。 バブルは崩壊し、地価と景気は急降下。 それとともに、税収は減り、政府純債務も膨らみました。 
急激な財政黒字は民間の債務急増とセットになっており、バブルは必ず崩壊するのですから、財政黒字がその後の財政大幅赤字に先行することは、日本だけでなく米国金融史、近年の韓国、アイスランドなどしばしばみられる現象です。

ただ、それでも政府純債務対名目GDP比率は30%以下に収まっていました。 (淡いグリーンの範囲内)



財政危機とは無関係な国々を含む先進国全体でみても、近年の政府純債務対GDP比は70%を超えています。(右図)

財政均衡を好む傾向がある日本政府は政府粗債務が増えたということで、政府純債務では対GDP水準がまだわずか23%と言う経済状況にもかかわらず、1995年には武村正義蔵相は国会で「財政危機宣言」を行ないました。

ところが次の変曲点は財政危機宣言より後の1997年に訪れます(上図・赤丸)。 この年、橋本内閣は、95年の武村蔵相財政危機宣言の流れで、デフレ気味の中での消費税増税に走り、なおかつ緊縮財政を断行しました。 

翌年春には自営業者ら多数の自殺者が出て、98年3月には自殺者数の対前年同期比が6割増以上となり、以後12年、自殺者数は3万人台となりました。

著しい不況になったため、政府は倒産の連鎖を防がねばなりませんでしたから、多額の緊急財政政策を実施せざるを得なくなり、不況による税収減も相まって、政府債務は98年以降急増が始まります。 その一方で消費税により国民所得は頭打ちとなり、いまだに橋本増税の年1997年の名目GDPを超えることができなくなっています。

皮肉な話ですが、財政健全化を狙ったがゆえに1997年以降、財政は不健全となりました。
リーマン・ショック時点での中国同様に、もし97年段階で実際とられた政策とは180度逆の、積極財政と金融緩和を実施していたら、名目GDPは大きく伸び、税収も増えていたでしょうから、次の記事の日中比較で分かるように、98年以降にみられる殆ど垂直上昇のようなカーブにはならなかったでしょう。

 昨年春、安倍首相は8%消費税増税を断行しました。 一部緊縮財政支持経済学者は、消費税を上げたが巷間言われるような税収減はなかったと胸を張ったようですが、消費税により総税収が抑制されるのは増税年の翌春からです。

そうすると、今がまさに第4の変曲点になりつつあるのかもしれません。 
97年の経験から考えて、このカーブが変曲点にあるとすれば、今後、名目GDPが一層減り、政府純債務が一層増える方向、つまり左上に曲がるものと思われます。

そう考えると、日本では消費税により財政危機が創りだされていると考えざるをえないのではないでしょうか。