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カナダ中央銀行の分かりやすい「通貨発行益」

紙幣が発行される時のシニョレッジ(通貨発行益)について、大変分かりやすい説明が、カナダ中央銀行ウェブサイト内にありました。今回はこれをご紹介します。
政権につく直前の安倍自民党総裁が、次のように語ったとして、一時話題になっていました。

•1万円1枚が20円で印刷出来るので、9980円が利益となって、政府に納付される。
輪転機をぐるぐる回して、日本銀行に無制限にお札を刷ってもらう。 *1

これに対し、シニョレッジ(通貨発行益)について誤解しているのでは、という声がネットで聞かれていました。

 確かにこのシニョレッジ、公会計を知らない身の私達には馴染みにくいのですが、カナダ中央銀行ウェブサイト内の背景説明部分に、大変簡潔に、例を使って分かりやすくシニョレッジについて書かれたものがありました。
*2

本日はこれを拙訳でご紹介します。

シニョレッジは、通貨を発行したことによる収益(通貨発行益)です。
歴史的には領主・支配者のものとなっていました。

今日のカナダでは、シニョレッジは流通している紙幣額に相当する中央銀行保有カナダ政府証券からの利子と、通貨発行費用の差額として計算されます。


ここで最もよく使用されている20ドル紙幣を簡単な例として、通貨発行益の仕組みを示します。
20ドル紙幣を発行した収益を2.5%の利子の政府証券に投資したとすれば、発行した紙幣から年0.5ドルの利子収益があります。
紙幣製造費用はトータルで19セント。 もし、発行紙幣の平均使用期間が7.5年だとしたら、年平均発行費用は2.5セントです。
紙幣流通費用は年2セントがこれに加わって、紙幣流通費用は合計で年4.5セントです。
従って、20ドル紙幣1枚が流通する場合のネット収益は年45.5セントとなります。

シニョレッジの収集
コインからのシニョレッジは、王立カナダ鋳貨局がコインを売却する時に一度に発生するのに対し、紙幣のシニョレッジは、中央銀行保有の政府債務証券が生む利子として数年次に亘って集められます。

シニョレッジはどう使われるか
現在の紙幣発行残高は約640億ドルです。シニョレッジは現行利率と紙幣発行残高により変動しますが、過去10年では
14から20億ドルの間でした。
中央銀行の管理費用、約446百万ドル(内、紙幣発行費用は48%)で、これを控除した残りはカナダ財務省に支払われます。

 カナダ中央銀行 背景資料  2013年3月

いかがでしょうか。 分かりやすい説明ですね。
これを読みさえすれば、きっと安倍首相も、日銀券1万円の通貨発行益について間違って説明することもないでしょうね。