シェイブテイル日記2

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古今東西火の車?

 日本の政府債務は現在1200兆円と言われています。 名目GDPの2倍を超える巨額です。
政府はこの政府債務の抑制と増え続ける社会保障費財源として10%への消費税増税を目指しています。 では日本の政府債務は過去どのように伸びてきたのでしょうか。

図表1は1960年以降の半世紀での政府債務残高推移です。
このグラフを見ますと、1975年以降政府債務は発散に向かい始めたように見えます。

図表1 日本の政府債務残高推移(1960-)
出所:1960−79年 内閣府統計局政府債務現在高
   1980−2013年 IMF

では更に昔はどうだったのでしょうか。
図表2は1920-1970年(左)および1872−1940年(右)での政府債務残高推移です。

図表2 日本の政府債務残高推移
左:1920-1970年、右:1872−1940年
出所: 内閣府統計局政府債務現在高

図表2左グラフでは1940年代に政府債務は発散に向かっているように見えますし、右グラフでは既に1900年代から日本の政府債務は発散に向かっているように見えます。

こう見てくると、政府粗債務の金額だけを見る限り、長期ではどの時代でも政府債務は激増して、破滅に向かっている、という論法ができそうです。

では他の先進国ではどうでしょうか。
図表3に米国、英国、ドイツ、フランス、イタリアの公的債務の推移を示しました。





図表3 各国の政府粗債務推移
上から、米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア。
出所:各国語ウェブサイトより政府粗債務推移でヒットしたグラフ
フランス(4番目)は青線が政府債務推移

図表3のいずれの国でも政府債務残高は爆発的に増えているようにも見えます。
では、現代日本の政府債務の伸び率は過去の日本や海外と比較すると際立って大きいのでしょうか。 

まず日本の過去から。 1900年代以降、10年刻みで政府債務残高の伸び率をみてみました(図表4)


図表4 日本の政府債務残高伸び率
出所:図表1に同じ。 10年刻みで政府債務残高の年伸び率を算出

意外なことかもしれませんが、現代(2000年以降)の日本の政府債務残高伸び率は、1890年以降では最低です。

では、海外諸国との比較ではどうでしょうか。(図表5)

図表5 各国の中期的な政府債務残高伸び率
出所:IMF他。図中に示した期間での政府債務残高伸び率(年率)

欧米主要国でも、過去30年ほどでは年間8-10%ほど政府債務残高は伸びています。
これに対し、日本は同じ期間で年率6%ほど。 2000年以降に限れば、わずかに4%足らずです。

いかがでしょう。 政府粗債務を長期で見た図表1と、政府債務残高の伸び率を過去や諸外国と比較した図表4、5では大きく印象が異なりますね。

2000年代以降の日本では、消費税は上げるのに、政府支出が抑制され過ぎた結果、民間マネーは政府に吸い取られ、名目GDP伸び率は世界で唯一のマイナス圏にあります。*1 

アベノミクスでは、金融政策には熱心ですが、民間にマネーを回す財政政策は掛け声倒れで、現実には緊縮財政のまま。 民主党政権時代とほとんど変わっていません。*2

現在の日本経済では政府債務は確かに大きな問題です。
ただし、それは対名目GDP比率でみた時の話です。 日本は小泉政権以降、財政拡張を目指した政権は全くありません。

世界で唯一名目GDPが下がり続け、それと同時に賃金も下げ続け、その結果、歴史的に見ても国際比較でも伸びの小さい政府債務が、それ以上に伸びない名目GDP比では増え続けるという愚策をそろそろやめて、消費税を凍結してゼロ%にする、あるいは巨額の給付金を国民に配るなど、名目GDPが伸びる政策に大きく舵を切るべきではないでしょうか。 

そうすれば、安倍政権が目指すデフレ脱却も容易ですし、政府債務の対GDP比も減り始めるでしょう。

【関連記事】

*1:詳細は関連記事「自ら名目GDPを減らす不思議の国・日本」をご覧ください。

*2:詳細は関連記事「アベノミクスと高橋財政を比較してみた 」をご覧ください。