シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

「大阪都構想」に対抗すべく自民党に実施提案した減価紙幣案

1.今のタイミングでの「大阪都構想」市長選挙の愚

阪市では橋下市長が一旦市長を辞任し、3月下旬に大阪都構想具体化について是非を問う意味での大阪市長選挙が実施されます。 

これに対し、大阪市自民党府議連は2/8には早々と「大義なき選挙は時間の無駄」として「不戦敗戦術を採ることを党中央(石破幹事長)に伝達しました。 ただ石破氏は「(不戦敗戦術は)現段階では承認しかねる」との立場だったとか。*1

また大阪市民も都構想などには関心が薄いようで、橋下市長支持率も市長就任後初めて5割を切ったと報じられています。維新以外の政党も「候補者を立てるべきだ」と答えた人は59%で、「そうは思わない」は29%だったとのこと。(朝日新聞の朝日RRD調査2/7-8による)

では本当に、大阪市を取り巻く課題で、大阪都構想以外には争点とすべきものは何もないのでしょうか。 

消費税が4月に8%へ上がることが決まり、また恐らくは来年10月にも10%に上がるシナリオは不動でしょう。

先の、1997年橋本龍太郎内閣での3%から5%への2%増税では、事前に5.5兆円の経済対策(消費増税への地ならし財政出動)がなされ、確かに増税した1997年始めはまだ経済は落ち着いていましたが、同年後半以降地滑り的に経済は悪化し、山一證券破綻、アジア通貨危機などが生じ、1998年以降ごく最近まで日本の自殺者数は2万人台から3万人台に安定的高止まりし、98年以降GDPデフレーターベースでは16年連続のデフレでした。

97年消費増税の見かけのプラス効果を除外すれば、19年連続デフレ。これは世界金融史上にもまれなほどの連続年数記録。英国の「大不況」では24年デフレなどと称されますが、実際にはデフレは断続的に発生しており、連続年数ではわずか5年です。数百年にわたる金融史上においてさえ、現代日本のデフレの凄さが分かります。その引き金となったのがわずか2%の消費税増税だったのです。*2

となれば2度にわたる5%の消費税増税への対策が求められるのは当然のことでしょう。政府自民党では確かに消費税増税対策として奇しくも前回消費税増税時と同じ5.5兆円の経済対策でお茶を濁していますが、97年後半から数年では、橋本内閣、小渕内閣合わせて58兆円 *3が必要となりました。

要するに5%もの消費税増税をデフレ脱却前に実施することがほぼ決定した以上、都構想の是非などを大阪府市民に問うているような悠長な場合ではなく、

大幅な景気下落を見越した緊急かつ有効な経済対策こそ必要なのです。

2.消費税にも打ち勝つ秘策、減価紙幣

年先まで見通した時、今後の日本の悲惨な経済環境を踏まえると、大阪市長になろうとする人に求められるのは「都構想」などといった愚にもつかない机上の空論ではなく、実績のある経済対策なのです。

デフレ期に大変有効であり、かつ地方単独で実施可能な経済政策といえば減価紙幣が考えられます。

2−1 ヴェルグルの奇跡

 減価紙幣のアイディアは、ドイツ生まれ*4でアルゼンチンで事業に成功していたシルビオ・ゲゼルによって「自由貨幣」という名で、通常のマネーとは逆に時間とともに価値が減ずる貨幣として考案されました。

ただ、実際に実施したのは大恐慌期の1932年オーストリア・チロル州のヴェルグル市の新市長、ミヒャエル・ウンターグッゲンベルガーでした。大恐慌に際しヴェルグル市も御多分にもれず、失業者は2割を超えました。失業対策費により市の財政も尽きかけた時、市長は自分の財産を担保に銀行から32,000オーストリア・シリングを借り受け、これを原資として月に1%価値が減ずる貨幣を作り市民に配布しました。実際には公共事業に参加してもらいその労働対価として払ったことから、「労働証明書」と呼ばれました。この労働証明書は1シリング、5シリング、10シリングの3種が発行されました。そして次の月の初めになると、額面の1%の証紙(スタンプ)を貼らないと無効になってしまう、というものでした。価値が減ずる貨幣、「労働証明書」は恐ろしく速く町中を回転しました。 その後禁止(後述)となるまでの13.5ヶ月間に労働証明書3.2万シリングが254.7万シリングの売上につながったと伝えられています。 

日本の経済対策で、3.2兆円規模というのは普通ですが、それで増加した売上が名目GDPの半分を超える255兆円だった、という状況を考えれば労働証明書の効果の凄さが分かります。 通常のシリングに比べ、貨幣流通速度は14倍に達したそうです。

失業者も大幅に減りました。

 この、当時のマスコミから「ヴェルグルの奇跡」と呼ばれた減価紙幣の威力はオーストリアだけでなく大恐慌中のドイツ・フランス・米国にも喧伝され、米国からはアーヴィング・フィッシャーの発案による視察団が同市を訪問し、フィッシャーはその驚異的効果を賞賛しました。

 オーストリア・ドイツでは200自治体、米国でも400自治体が減価紙幣を実施または計画しました。

もっともヴェルグルの奇跡については、オーストリア国立銀行(中央銀行)が法廷で「オーストリア・シリングの通貨発行権」は我々のみ属するとの主張をして認められたため、実施翌年の1933年にはこの大成功した社会実験は中止に追い込まれました。

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 各スタンプ貨幣には使用した月数に応じた1%のスタンプが貼付されていることがわかる。

2−2 日本での検討例


減価紙幣は「減価する地域通貨」と考えられます。

地域通貨(通常は金利なし)は日本全国多数の自治体・コミュニティで実施され、日本には662件存在が報告されています(2011年時点)。

一方、減価する紙幣は実施例の記録がありません。 減価紙幣が機能するのはデフレですから、大恐慌以降では1997年の橋本消費税デフレ位しか着目される期間はありませんでした。

2009年、長野県職員だった宮本吉寿氏が村井知事(当時)に建白書を提出し、当時麻生総理の発案で景気対策として実施されつつあった「定額給付金」向けの財源を、減価紙幣に充てる、という画期的な提案をしました。*5

ところが宮本建白書とそれに追随した全国20余の自治体への減価紙幣提案は、どうやら同じ総務省に照会した結果(カンペ?)、どこも判でついたように「定額給付金は個々人に配られることが決まっており、それを別の目的の財源とすることは罷りならぬ」という理由で葬り去られました。

2−3 有力大阪市議にシェイブテイルが提案した減価紙幣のスキーム


筆者は大阪在住ではありませんが、とある偶然から元大阪市議会議長さんと懇意にさせていただいています。 この方は現役大阪市議会議員でもあるので、来年・再来年の消費税増税にも打ち勝つ経済対策として次のようなスキームを提案しました(以下概要)。

この減価紙幣提案でユニークなのは、以下のスキームのように、大阪市として特に財源が必要ないという点です。

勿論、減価紙幣の印刷代、管理運営費用など必要ですが、ヴェルグルのように、3.2億円の減価紙幣が大阪市に255億円の売上増をもたらすのであれば、消費税増収分のごくごく一部分でこうした付帯費用はまかなえるでしょう。


1)ヴェルグルの労働証明書に倣い、1000円(あるいは1000ポイント、1ポイント=1円)の減価紙幣を大阪市が発行する。

2) この1000円減価紙幣を大阪市民に限り760円で販売する。強制通用力はないものの、事前に届けてもらった、減価紙幣行使を容認する業者・個人間で、1000円として通用させる。 つまり当初は24%ディスカウントで物品が買える、というわけです。

3)翌月月初になれば、10円の印紙(または切手)を貼付する欄に印紙を貼らなければ通用しないこととする。従って月内にこの1000円減価紙幣を使おうと市民は争ってモノを買う。

4)但し、減価紙幣の減価をとめるために、直ちに預貯金として預ける、あるいは5円のものを1000円減価紙幣で購入して995円の円貨を手に入れるといった行為は禁止。

(この部分はもう少し吟味する必要がありそうですね)

5)大阪市庁あるいは市外への支払いに際しては、ディスカウント部分は除く「760円+貼付した10円スタンプ数」の金券として使う

6)こうした市内と市外での大きな格差を埋める手段として、手形割引の手法や、金券ショップを活用して任意価格での円貨交換は認める

7)こうして2年の通用期間が終わると、大阪市には1000円減価紙幣1枚あたり760円+240円の税外収入が入っているので、この1000円をもって1000円減価紙幣を消却し使命を終わらせる。

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   今回大阪市議に提案した減価紙幣の「利得表」

減価紙幣は市内では常に1,000円で通用するものの、物が安く買えるディスカウント率は次第に悪化し、2年後にはゼロとなり減価が止まる(スタンプ貼付が不要となる)。



*1:日刊ゲンダイ 20140208

*2:2012-04-08 英国大不況時と現代日本のデフレの違いは? −シェイブテイル日記 このエントリーを含むブックマーク

*3:98年4月に16兆円、橋本政権が倒れた後を受けた小渕内閣で98年11月に緊急経済対策24兆円、99年11月にも経済新生対策18兆円

*4:現在はベルギー

*5:2009-01-26 是非ご協力をお願いします - 日本人が知らない 恐るべき真実定額給付金を財源とした地域振興券の発行を