シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

地域通貨の専門家も支援した「杉並区モデル」はなぜうまく回らなかったのか

年前の杉並区では、地域通貨の専門家、北海道大学西部忠(にしべまこと)氏らをアドバイザーに、電子地域通貨「杉並区モデル」を検討していました。

 
これは杉並区自身が実施主体となり、推進委員会には、杉並商店会連合会、東京商工会議所杉並支部、杉並産業協会、西武信用金庫、イオン、ぐるなび、セブン・カードサービス、JR東日本ビットワレットヤマト運輸、杉並区長に加え、アドバイザーには慶応院政策・メディア研究科の金子郁容教授、前述の北大院・経済研究科西部忠氏といったそうそうたるメンバーで検討されていたようです。
 
さて、地域通貨の実施主体は、80年前のヴェルグルでは町長が出資して町として実施しています。 
 近年の日本では主にNPOなどが地域通貨の実施主体となっていて、なぜか杉並区のように自治体が自らの信用をバックに実施したという事例が少ないようです。
 
これには「歳入歳出外現金」の扱いに関する法律が関連していると思われます。
歳入歳出外現金(公金外現金のこと)は、無制限に保管できるものではなく、その権能が法律又は政令に根拠を有し、保管手続等が法律又は政令に根拠を有している場合に保管できる (地方自治法235条4項)
杉並区では区自身が地域通貨実施主体になることを想定し、この公金外現金の扱いについては総務省への照会がなされています。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kouzou2/kentou/110118/soumu_k.pdf

 照会・回答のコードは 040060。

 

◯杉並区照会事項

求める措置の具体的内容
地域通貨を流通させるにあたり預かり金処理を行うため、地方自治法により法律又は政令の規定によるのでなければ保管することができないとされている現金又は有価証券(入札保証金、職員の給与に係る源泉所得税等)として地域通貨と換金された現金を認めていただきたい。


具体的事業の実施内容・提案理由
区が発行主体となって地域通貨を発行。区内の通貨流通量を増やすことで区内経済の活性化を図り、区内商店街を支援する。
また非接触ICカードを使用し、地域通貨や既存の電子マネーのほか行政サービスなどを搭載することで行財政改革をも実現していく。

総務省回答

地方公共団体が無制限にその所有に属しない現金を保管することは責任の所在を不明確にすることから、当該団体の所有に属しない現金については、債権の担保として徴するもの、あるいは、法律又は政令の規定に基づき保管する現金以外のものについては、認められない。
・また、地方公共団体が任意に保管可能な現金の範囲を定めることは、その現金の亡失等にかかる職員の賠償責任等、現行規定に基づく公金の取扱に関する種々の制度との均衡を失することから認められない。

 杉並区が上記の照会を行ったのは総務省回答経済特区19期となっているので、平成23年(2011年)頃のことだったのではないでしょうか。 その後、昨年3月に断念するまでに、大学教授ら経済専門家を交えて1,2年は検討を継続しているとすれば、杉並区では自治体法第235条4項自身は何らかの方法でクリアしている可能性もあります。 
 
最終的には断念に至っていますが、その断念理由は、電子通貨に限定したため初期インフラ導入コストが高く、事業者の支持を得られなかったということだったと報道されています。
日刊工業新聞 掲載日 2013年04月01日(後半は有料となっています。)
 減価スクリップを実施するにあたり、電子地域通貨「杉並区モデル」から得られる教訓は
 
 
 
1.先が見えにくい減価スクリップを実施するにあたっては、あまり最初から大きな構想を描かず、1段もしくは2段の通貨モデルでの実証検討が必要。
2.減価スクリップを地方自治体主体で実施する場合には、「歳入歳出外現金」の扱いに注意が必要。
といったところでしょうか。
大きな成功事例ヴェルグルでは減価マネーが回りすぎるので、当初よりマネーを減らして運用したとか。
減価することの意義を信じて、印刷したスクリップとして小さく産んで大きく育てるのが良さそうです。