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意味がなさすぎる「日本を元気にする国民運動」

日本では政府債務の大きさが問題となっています。
しかし実態は政府主導で財政健全化指標を悪化させています。
そうした中での「日本を元気にする国民運動」とはどんな意味があるのでしょうか。

 自民党は、賃上げによるデフレ脱却を目指し、「日本を元気にする国民運動」という組織を立ち上げたようです。

 自民党は15日午前の総務会で、賃上げによるデフレ脱却を目指して設置した「日本を元気にする国民運動」の実施本部長に小渕優子少子化担当相を起用することを決めた。同本部は、全国の企業に対して賃上げを促すため、青年局や女性局に所属する議員を各地に派遣する。 
賃上げ運動、本部長に小渕氏=自民 時事通信2013年10月15日(火)13:25

 筆者には、あれだけ党を挙げて消費税増税に邁進した自民党が、デフレ脱却に向けた組織を立ち上げるということには違和感を禁じえません。

と言いますのは、いくら安倍首相が増税分で得られた税収の使途として、「社会保障に全額使う」と明言したところで、現実には国債費に回ってしまう構造があるわけです。
     安倍首相の増税決断とトコロテン理論 - シェイブテイル日記 安倍首相の増税決断とトコロテン理論 - シェイブテイル日記

雑駁に言えば、政府の税収については
国民に還流されない消費税の徴収→名目GDP減少→(消費税収は増えても)総税収減少
となります。 

構造的に政府が民間からマネーを吸い上げて戻さない政策を取るのですから、先の消費税増税の1997年以降日本はデフレとなりました。
日銀は現在の力不足の金融政策について自画自賛している状態ですし、来年からの消費税計5%上げではデフレ相当加速するでしょう。

国税庁などは、価格転嫁できない中小零細企業に対しても、「価格転嫁して消費税を取らない方が悪い」といいます。しかし、いわば椅子取りゲームをしている時に椅子を取り払った本人が「最後に座れない者が悪い」といっているようなもので、悪質です。

歳出の方は社会保障給付が毎年一兆円増えていくなどの状況は変わりませんので、増加あるいはせいぜい維持しかできません。
その差額を国債で埋めているわけですから、財務省から出される税収−歳出差を示すワニの口の開き(図表1)は、政府自ら作り出している状況です。

平成10年以降、「ワニの口」は政府主導で開かされた
図表1 政府税収−歳出差、ワニの口
平成元年頃のバブル崩壊、資産デフレで税収が落ち込んだ。
現在はバブル崩壊のキズはほぼ癒えたが、平成10年以降は消費税率アップを
起点とするデフレにより、ワニの口は更に拡大している。
平成10年以降の数年は、消費税増税ショックで混乱した景気対策のため
多額の国債発行も余儀なくされている。つまり、このワニの口の図は、
増税肯定派(=嘘つき達)からは増税が今後必要であることの説明のように使われているが、
実際は消費税増税の結果を示している。

この状況を客観視すれば、日本政府が民間のマネーフロー(名目GDP)を吸い上げ、ワニの口(税収−歳出差)を作り出し、その差を国債で埋めることにより、財政健全性の指標、政府債務/名目GDPの分母を小さくして、分子は大きくして、数値を悪化させていることが分かります。

消費税デフレでなければ、企業はそれなりにリスクをとって設備投資などで債務を負いますが、消費税デフレの現在では企業は一生懸命債務を返済しますので、経済を回していくため、政府が企業債務に代って債務を負わざるを得ないのです。

安倍首相は消費税上げを躊躇したという情報が漏れ伝わってはきますが、実際消費税増税を決断して、今後の財政健全化指標のさらなる悪化を決定したのが他ならぬ安倍首相ですから、そのお膝元で「日本を元気にする国民運動」をやって、一体どんな意味があるのでしょう。

もし意味があるとすれば、「日本を元気にする国民運動」が率先して、デフレを加速し財政健全度を下げる消費税増税を撤回する運動をすることでしょう。