シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

安倍首相の増税決断とトコロテン理論

安倍首相は悩んだ結果、10月1日に消費税増税を表明しました。ただ、記者会見を見る限り、安倍首相は今回多少の誤解をしたまま増税を決断した可能性もあります。

 安倍首相が消費税率8%への引上げを表明した時の記者会見を振り返ってみましょう。

 安倍首相は記者会見で、消費税率8%引き上げを決断したことに、「最後の最後まで悩んだ。熟慮した結論だ」と述べた。決断の理由として各種の経済指標が改善したことを挙げ、デフレ脱却や財政再建、成長を底上げする経済政策に同時に取り組む意欲を強調した。

 また、「社会保障を安定させ、厳しい財政を再建するため、財源確保は待ったなしだ」と述べ、「経済再生への自信を取り戻す。国の信認を維持し、社会保障制度を次世代にしっかりと引き渡す。これらを同時に進めるのが私の内閣に与えられた責任だ」と述べた。

 増税分で得られた税収の使途では、「社会保障に全額使う」と明言法人税実効税率引き下げには、「国際競争に打ち勝つため、真剣に検討を進めなければならない」と訴えた。

安倍首相が4月引き上げ正式表明 「最後の最後まで悩んだ」 産経ニュース 2013.10.1 18:31 (1/2ページ)

突然ですが、夏によく食べられるトコロテン、あれは天突きという道具で造られます。トコロテンをこの天突きの入り口から入れて押し出せば、他に漏れ出るところがありませんので、出口だけから出てきます。 当たり前ですね。

トコロテンを押し出す天突き


 安倍首相は消費税増税分を「社会保障に全額使う」と明言しました。ただ、社会保障費は年齢構成の変化による自然増以外に、増額は予定されていません。つまり増税をしてもしなくても、増税分の出口は社会保障費にはないわけです。

では事実上社会保障費には出口がないとすると、消費増税分はどこに押し出されるのでしょうか。社会保障費のみならず、歳出のうち国債費以外の部分(=基礎的財政収支対象経費)には出口がないということは、消費税増税分は国債費に使われることになります。

要するに安倍首相が「社会保障費に全額使う」と言ったところで、社会保障費を増額しない限りは国債費に消えるということです。 ということは、今回の消費税増税は払った国民には戻ってこない構造になっているわけです。 安倍首相の発言を聴く限り、首相はこの点を理解されていないように感じられます。

消費増税を全額財政再建に使うということは、消費税を払った主体(企業など)の、[付加価値額✕増税分]が経済活動から消失することになります。 国家全体でどれだけの金額が消失するかはシミュレーションしてみないと分らないですが、国全体の付加価値率を50%、増税分を3%とするならば、名目GDP△1.5%が毎年縮むという雑駁な計算ができます。


消費税増税の影響はなぜか内閣府シミュレーションだけが軽微と予測している

図表1消費税増税による名目GDPへの影響
出所:内閣府経済財政モデルに関する質問と要望事項 (日米・世界モデル研究所 宍戸俊太郎)

図表1は、政府(内閣府)と民間経済シンクタンクが消費税率1%上げによるGDPへの効果をシミュレートした結果を示しています。
一見して分かるように、民間のシミュレーション結果では、いずれも1%の消費税上げで、年約0.5%の名目GDP縮小を予測しています。
上に述べた非常に雑駁な「トコロテン理論」で予想される結果とほぼ合致しています。*1

ところが内閣府シミュレーションだけは増税直後こそ0.5%の名目GDP縮小するもののその後は名目GDPが回復する、という不思議な結果を予測しています。

安倍首相がどのような判断材料で消費税増税を決断したのかは分かりません。
ただ、もし首相が内閣府の不思議なシミュレーションなどではなく、ここで述べたトコロテン理論で消費税増税分のお金の行方を考えられたならば、増税やむ無しという結論に至ったのか疑問が残ります。

*1:トコロテン理論とは筆者が勝手に作った言葉です。為念