シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

ブレイクイーブンインフレ率はなぜVIX指数と連動するのか

インフレ目標を掲げた中央銀行が資産を買った場合、ブレイクイーブンインフレ率(BEI)が下がることで、インフレ期待が高まる、と言われます。この「期待」とは何なのでしょうか。その「期待」によって何が買われるのでしょうか。

早速ですが図表1をご覧ください。

ブレイクイーブンインフレ率は恐怖指数(VIX)に連動している

図表1 米国BEIとVIX指数(2008-2013初め)
上:10年国債BEI、下:VIX指数(上下反転)
*1
なお、日本ではBEIの公表は十分ではなく、また恐怖指数に当たる指数は
ごく最近運用開始されたところなので、日本での相関は分析できていない。

図表1の下はVIX指数です。VIX指数とは、シカゴ・オプション取引所が作り出した「ボラティリティ・インデックス」の略称です。

VIXはS&P500を対象とするオプション取引の値動きを元に算出・公表されており、このVIX指数は投資家心理を示す数値として利用されており、「恐怖指数」という別名が付けられています。

恐怖指数は、通常時10〜20の範囲内動き、相場の先行きに不安が生じた時に数値が大きく上昇する特徴があり、過去のチャートを見ると、大きな出来事が起きた後は大きく上昇していることが分かります。

2008年から2009年初にはリーマン・ショック、2010年はギリシャ危機、2011年夏は欧州危機再燃が発生し、その度にこのVIXは上昇(BEIは下落)が生じていることが分かります。

ところで、なぜVIX指数の上昇と、BEI下落が連動するのでしょうか。

何らかの経済不安が発生すれば、恐怖指数VIX指数は上がります。そうした時は、商品価格などの下落も予想され、BEIは下がっていくでしょう。

その時、インフレ目標を持った国の中央銀行が資産を買い入れた場合、国民は中央銀行から金融緩和のメッセージを受取ります。中央銀行に買われる資産にもよるでしょうが、基本的には経済危機を和らげる措置であり、VIXは下がります。安心感を得た投資家は、株式・海外投資のための外貨、あるいは商品先物などを買うでしょう。こうしてBEIは上昇するのでしょう。

つまり、中央銀行が資産を買い入れれば、投資環境が整えられたと市場関係者は捉え、リスクテイクできるということではないでしょうか。これが中央銀行が資産を買い入れた時の「期待」だと考えられます。

だとすれば、政府要人が「円安は100円までで十分」だとか「消費税は是非導入すべきだ」などと発言すれば、リスクテイクはするな、というメッセージと受け取られ、VIXの上昇要因、BEIの下落要因ともなるのでしょう。

もし日銀が長期金利を買い切るオペレーションの意義がリスクテイク許容のシグナルだとすれば、月々多額の買い入れを行って、日銀当座預金に100兆、200兆と積んでいく金額には、定量的な意義はあるのか疑問にも思えます。
(ただし買い入れを減らしたり、売りオペを行なえば、リスク許容度を減らすというメッセージに取られるのでしょう。)

また、金融緩和でのBEI上昇が、リスクテイクできる環境の提供という中銀からのメッセージだとすれば、株式・外貨などが買われて株高・円安は進むでしょう。 ただ、これらの資産を直接買い入れるのは国民のうち少数割合に留まるでしょうから、なかなか一般までは金融緩和の恩恵は届かないでしょう。*2 ましてや一般庶民が日常製品や食料品を買い入れるときにVIX低下やBEI上昇といった指標変化で購買行動を変えるか、といえばそれは生活実感からは蓋然性が低そうです。

従って、黒田日銀が量的質的緩和を強力に推進した場合、直接的には資産インフレの発生が期待されそうですが、いわゆる一般物価上昇はただちには期待できなさそうです。

BEIが上がれば物価が騰がると当然のように言われていますが、BEI上昇と一般物価の上昇の間には資産インフレで儲かった個人・企業による購買・投資行動の変更というステップを間に介しているものと思われます。

デフレ脱却を強力に推進するのであれば、CPI上昇以前に資産インフレ形成が先行する金融緩和に加え、直接国民にマネーがわたる財政政策も同時に推進する方が賢明でしょう。

*1:出所:BEI=http://economic.investwalker.jp/2013/03/06/us-bei10/ VIX=http://www.marketwatch.com/investing/index/vix/charts

*2:ただし年金資金の一部はリスク資産で運用していますので、年金にはいい効果が見込めます。