シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

手紙一通で180度転換した読売の消費税への態度

安倍首相の消費税増税判断まで後一ヶ月たらず。
そうした中、読売新聞が消費増税に対するこれまでの態度を大きく転換しました。

事の始まりは今年の夏、ひとりの老人が書いた暑中見舞いの手紙でした。
ナベツネ書簡。渡辺恒雄読売新聞グループ本社代表取締役会長が、8月上旬、政治家宛に書いたものです。 *1 
その中でこれまでの読売新聞の主張を大きく逸脱して、消費税8%アップへの反対を表明したとのことです。

これまでの読売新聞は、元財務次官の丹呉泰健氏を読売新聞グループ本社監査役に招き入れ*2、消費税増税プロパガンダの先頭に立っていました。

ところが、8月10日の記事では世論は予定通りの消費税引き上げに慎重だとするアンケート結果を発表しています。

読売新聞社は8〜10日に全国世論調査を実施した。
 来年4月に予定されている消費税率の8%への引き上げについて聞くと、「引き上げは必要だが、時期や引き上げ幅は柔軟に考えるべきだ」と答えた人が56%に上り、慎重な意見が多かった。「予定通り引き上げるべきだ」は17%にとどまり、「今の5%から引き上げるべきでない」は25%だった。安倍首相は今秋に税率引き上げについて最終判断する。

 消費税率引き上げに伴い、生活必需品などの税率を低くする軽減税率を「導入すべきだ」との答えは73%を占めた。安倍内閣の経済政策を「評価する」との回答は57%で、「評価しない」の28%を上回った。ただ、景気の回復を実感していない人は80%に上っている。
     消費増税「時期柔軟に」56%…読売世論調査(2013年8月10日23時24分)

 同時期に実施された日経新聞の世論調査では全く逆に消費税推進容認が7割との結果が発表されています。

 消費税率を今の5%から2014年4月に8%、15年10月に10%へ引き上げることについて三択で聞いたところ「予定通り引き上げるべきだ」は17%と前回より6ポイント上昇。「引き上げるべきだが、時期や引き上げ幅は柔軟に考えるべきだ」は3ポイント低下の55%、「引き上げるべきでない」は3ポイント下がり24%だった。
   内閣支持68%、消費増税容認7割 本社世論調査  日経新聞 2013/8/25

 これらのアンケート結果の興味深いところは、両新聞のタイトルではほぼ逆の印象ですが、アンケート結果自身は実殆ど差がありません。(図1)

図1 消費税増税に関する新聞二社直近のアンケート結果
見出しは読売が「消費増税『時期柔軟に』56%」
日経は「消費増税容認7割 本社世論調査 」となっているが、
実際のアンケート結果は酷似している。
グラフ割合は記事本文と多少差があるのは、「その他」
部分を集計から外したため。

1997年の増税時点では新聞は、消費税増税に反対の論陣を張りました。 その後ある時点で、新聞業界全体が消費税増税に賛成に転じました。*3

ここでそのマスコミ界増税の団結が崩壊しつつあります。

8月30日に政府主催で開催された今後の経済財政動向等についての集中点検会合には、日本新聞協会会長・読売新聞グループ本社代表取締役社長白石興二郎氏が意見を次のように述べています。

1. 税率引き上げ、各新聞社が社論を展開
社会保障・税一体改革関連法が成立した昨年8月、多くの新聞社は財政健
全化と社会保障の充実のためには消費増税やむなしと判断し、賛成の立場
を取った。
○ しかし、予定通り引き上げるべきかどうか、また引き上げの時期について
は、景気動向や地方経済の実情を十分に踏まえて判断する必要があるとの
立場から、各新聞社がそれぞれの考えに基づき、社説などの形で社論を展
開している。新聞協会としての統一した見解はまとめていない。このため、
本意見は読売新聞の社長としての見解である。
2. 8%は見送り、15年10月に10%に
読売新聞としては、来年4月に予定される消費税率の8%への引き上げは見送り、
2015年10月に10%に引き上げるべきだと考える。 
日本経済の最重要課題はデフレからの脱却であり、失敗は許されない。
3 デフレ脱却し、財政再建と経済成長の両立を(以下項目のみ本文略)
4 世論調査、「引き上げ時期柔軟に」が多数
5 国際社会の理解得る必要

…。
ドイツ連邦銀行は8月の月例報告で、適切な成長戦略が実行されないまま
来年4月に消費税率を引き上げればアベノミクスの効果が薄れると予測し
た。
6 新聞に高い公共性、5%の軽減税率を
    消費税率引き上げに関する意見 
     日本新聞協会会長・読売新聞グループ本社社長 白石興二郎 2013 年8 月30 日

読売新聞社長よりも、日本新聞協会会長の立場の方が重いはずですが、「新聞協会としての統一した見解はまとめていない。このため、本意見は読売新聞の社長としての見解」として、「来年4月に予定される消費税率の8%への引き上げは見送」るべし、という反対意見を述べるに至っています。 ドイツ銀行が消費税引き上げに反対しているなどという情報も、読売新聞紙上では報道されていなかったのではないでしょうか。

そして消費税は10%に一気にあげよ、その際には新聞への軽減税率を適用し、事実上新聞への消費税引き上げには反対とのこと。

日本新聞協会による消費税率軽減税率の主張根拠については以下のように報道されています。

日本新聞協会は21日、シンポジウム「ニュースや知識をどう支えるか―ネット時代にメディアの公共性を考える」を東京都内で開いた。パネル討論の参加者からはインターネットの普及で「従来の活字媒体が劣勢になっている」と危惧する声が出た。

 2014年4月と15年10月に予定する消費増税に関連し、新聞協会が求めている軽減税率の適用についても議論。元総務相片山善博慶応大教授は「消費税が上がれば購読者が減る。新聞は民主主義を支える装置で、弱ってくると権力への監視機能が弱まる」と述べ、軽減税率の適用が必要との認識を示した。

    軽減税率の適用など議論 新聞協会がシンポ開催   日経新聞 2013年6月22日

財務省の意を汲み、これまで散々消費税増税を煽っていながら、代表取締役の手紙一本で180度意見を変える新聞が、本当に「民主主義を支える装置」で、「権力への監視機能」などを持っているとして、軽減税率をなどを訴える資格などあるのでしょうか。