シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

1997年の増税に対するクルーグマンの評価

最近、政府自民党から、消費税不可避という意見が相次いでいます。

「消費税を引き上げない選択肢はない」甘利大臣

甘利経済再生担当大臣は、消費税の引き上げについて「外的な要因がなければ、引き上げない選択肢はない」と述べ、財政健全化の重要性を改めて強調しました。

 甘利経済再生担当大臣:「(Q.消費税引き上げないという選択肢は?)それはないと思う。余程、外的なリーマンショックとか、その種の外的要因でもない限り、ないと思う」
 また、甘利大臣は「法律に従って対応できるよう最大限の環境整備を行う」としたうえで、増税するかどうかは「安倍総理大臣が判断する」と述べました。政府は、来年4月の8%への消費税引き上げを今年秋に最終判断する方針ですが、それに向けて有識者会議を設置して増税の影響などを検討させ、判断材料にする考えです。

     テレ朝ニュース 2013年7月30日

石破氏、来春の消費増税「延期は考えづらい」

 自民党石破茂幹事長は26日、政府内で消費税率引き上げの延期論が出ていることについて「今の状況では(延期を)考えづらい」と述べ、予定通り税率を来年4月に8%へ引き上げるよう求めた。都内で記者団に答えた。

 石破氏は昨年8月に成立した消費税増税関連法で増税を見送る条件を定めた「景気条項」について「リーマン・ショックオイルショッククラスの激変を想定しているが、今はそういう環境にない」と指摘。そのうえで「財政の持続可能性や国債の暴落・急騰などを防ぐ観点からも現状では(増税を)引き延ばすのは考えづらい」と述べた。

    産経ニュース 2013.7.26

一方、今日の日経夕刊では、消費税増税を実施しても、2020年度のプライマリーバランス黒字化は達成困難、との政府試算が報道されています。

基礎収支、20年度の黒字困難 内閣府試算、消費増税でも

 内閣府の経済財政に関する中長期試算が1日、明らかになった。2020年度の国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の赤字は、名目国内総生産(GDP)比で1%台前半。消費税率を予定通り引き上げても、20年度にPBを黒字化するという政府目標の達成は難しいという内容だ。

 中長期の財政再建には一段の増税歳出削減を迫られる。来週の経済財政諮問会議に提示する。
     日経新聞 2013年8月1日夕刊

今の政府自民党では、消費税増税でプライマリーバランスの黒字化は期待しがたいものの、増税は必要という捉え方が広まっているようです。

では、前回の消費税増税のころと現在ではどちらが経済状況は優るのでしょうか。図表1は前回消費税増税の前年1996年と今年の経済指標を比較したものです。


図表1 1996年と2013年の経済指標比較
出所:名目GDP,CPI,GDP デフレータ=IMF WEO, 平均賃金(給与所得者)国税庁
   日経平均株価は1996年7月末と2013年7月末終値
 

アベノミクス・黒田日銀異次元緩和にもかかわらず、現在の経済指標はまだお世辞にも1996年当時を上回るとは言えません。 

そして前回消費税増税を行った結果は、と言えば。
消費税増税を実施した途端、名目GDPの成長が止まり経済収縮が始まりました(図表2)。
肝心の債務残高(対GDP比)は減るどころか却って増え方が加速しています(図表3)。
 
図表2(左)名目GDP推移、図表3(右)政府債務GDP比(%)
出所:IMF WEO
名目GDPは消費税増税(1997年)と共にピークアウト。 
増税にも関わらず、政府債務GDP比は全く減らなかった。

このころの経緯をポール・クルーグマンは著書「恐慌の罠」の中で次のように振り返っています。

ワシントンのシンクタンクである国際経済研究所のアダムポーゼンが指摘しているように、日本の財政政策はそれなりの効果を発揮していたのである。 1995年から1996年にかけて財政赤字が拡大したために、短期的ではあるが、顕著な成長の回復が見られた。 だが、1997年に橋本龍太郎が誤ったアドバイスに基いて増税を行ったことで、現在のリセッションが誘発されたのである。
(中略)
21世紀に入って急増する退職者に対して公的年金を支払うことができるのかが問題となっている。その結果、日本政府は、債務が累積するような政策を発動することに二の足を踏んだのである。事実、そうした長期的な支払い能力に問題があることから橋本首相は増税に踏み切ったのである。

    恐慌の罠 なぜ政策を間違え続けるのか ポール・クルーグマン2002年 p144

1997年の消費税増税直前は景気好調の時期でした。
95年から96年までの2年間では民間最終消費+10.7兆円、政府最終消費+5.4兆円、輸出+5.3兆円などで、名目GDPは+18.2兆円の増加でした。 
 このあと1997年に消費税が増税されると、消費税収は増えたものの、景気は一気に落ち込み、総税収は減り、債務残高対GDP比は積み上がっていったのです。 デフレ期の景気とはそれくらい脆弱なものなんですね。

 橋本増税後の景気後退を知らないはずもない甘利氏や石破氏が増税に前のめりであるのには首をひねらざるを得ませんが、安倍首相には、周辺の誤ったアドバイスに乗ってしまった橋本龍太郎内閣の消費税増税失敗と同じ轍を踏まないように熟慮をお願いしたいところです。