米政府も検討した政府債務問題解決法
前2回にわたり増税論者が、その前提としている事実認識についてブログに書きました。
これらにより、増税不可避を唱える方たちからも、政府債務が積み上がった日本でも破綻はどうやら近い将来にはおきないこと、消費税増税は債務が多少減る可能性はあるものの、(個人的にはデフレ脱却前の消費増税は却って債務が増える可能性が高いと思いますが)、反対給付が増えるわけではないことは同意いただけたようです。
ただ、それで議論が尽きたわけではありません。
異口同音におっしゃることは、「では増税によらず、社会保障財源を得る方法や効果的に政府債務(の対GDP比)を減らす方法はあるのか。」ということですね。
筆者としてはこれが唯一無二とは思いませんが、検討に値する方法はある、と言えます。 しかも、今年初めに、アメリカ政府が真面目に検討した、といわれる方法です。*1
検討のきっかけは米国議会のねじれによる、財政の崖問題の懸念が増大したためでした。
米政府が1兆ドルのプラチナコインを発行するというものです。
まず1兆ドルのプラチナコインを米政府が発行します。以下は、ブログ「道草」から引用しますと…。
財務省はそのコインをFedに預け入れることだろう。
それを受けてFedは財務省の口座に1兆ドルの準備預金を振り込むことになるだろう。
そして財務省は銀行から財務省証券を買い取り、その代金を支払うためにFedに対して自らの口座にある1兆ドルの準備預金を(財務省に対して財務省証券を売却した)銀行の口座に振り替えるよう依頼することだろう。
こうしてFedが新規に発行した貨幣(準備預金)と引き換えにすべての財務省証券が償還されることになる。
道草「1兆ドルのプラチナイーグルコイン」 by James Hamilton
これと同様に、日本でも100兆円政府紙幣を日本政府が発行し*2、日銀の政府口座に100兆円振り込ませれば、100兆円の政府債務償還財源ができます。このように国債を無金利永久債務に相当する政府紙幣に置き換えることで、金利上昇による国債費増大の問題を解消もしくは大幅に縮小できる可能性があるでしょう。
なおこの方法の問題点は、折角日銀にインフレ目標があるのに、政府が際限なく政府紙幣を発行するならば高インフレが避けられないのではないか、という点でしょうか。
この問題点については、政府が政府紙幣発行を国債償還財源に限って行うと法律で定めるか、あるいは政府・日銀のアコードによりインフレ目標の上限を超えた場合には、政府紙幣から日銀券への両替を日銀が拒否すると決めれば良いように思われます。
財政再建というものが俎上に載る時に、なぜか景気を継続的に冷やすことも、本当に税収が増えるかどうかも無視して家計・企業しか財源として議論されませんが、米政府や英国財務省のように、いえデフレの日本でこそ、通貨発行益というものもきちんと議論すべきではないでしょうか。
個人的には、最近リフレ派経済学者の一部で、米英でも真剣に検討された政府紙幣ではなく、確実に景気を悪くしデフレ脱却を困難にする増税の方を支持しようとするのは、本当に訳がわからないとしか言いようがありません。