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消費税増税論者が必ず陥る勘違い

今日10日の日経では争点参院選と題したシリーズで、消費税について、政府債務は返済して当然、という観点から記事が書かれていました。 
そこで今回はその政府債務は返して当然という再建論者の常識について考えてみたいと思います。

財政再建
これが今の日本で必要だといわれるのは、かつて公共事業でハコモノなど無駄を重ねた結果、政府が借金を重ねて、我々の子孫がこれを返済せねばならなくなるから、あるいは政府財政が破綻して円が無価値になるから、といったところでしょうか。

ただ、少し考えてみると、政府は公共投資などで使ったおカネはハコモノのコンクリートの壁に塗り込められたわけではなく、どこかの企業または誰か(家計)に支払ったはずです。そのおカネも、企業も家計もドブに捨てることなく、自分で持ったままか、あるいは誰かに支払ったかですね。

これらのおカネ、日本円は基本的に国内だけで通用します。両替されて外国の銀行のものになっても、使えるのはほぼ日本国内だけ。外国人も日本円を捨てたりせず、通用する国内で使います。例外は海外の土産物店くらいですが、これも結局は両替して、日本国内に還流されます。

以上の簡単な思考実験から、政府が借金してまで「使った」おカネは、消えることなく、また海外に散逸することもなく、日本国内のどこかに留まっていることが想像されます。

図1は、日本政府の純債務プラス企業の純債務を家計の純資産と比較したものです。

政府の債務に並行して家計資産が増える

図1 政府純債務、企業純債務と家計純資産
出所:日銀資金循環統計から筆者作成、縦軸:兆円。
家計純資産が政府純債務と企業純債務を支えている状況が分かる。その一方で家計純資産は増大し続けている。
また、政府と企業の純債務を足したものとの差額は日本の海外純資産にほぼ等しい。

図1から読み取れることは、家計の貯蓄から金融機関を介して借り入れられた政府債務は、政府支出として民間に出て行き、再び家計で貯蓄されるので、デフレで税収が増えない中、政府債務が増えるのと並行して家計の純資産も増える、ということです。
日本の場合、海外から借金をしているわけではなく、おカネは日本国内に滞留するため、いつまでたっても新たな政府債務の財源は尽きず、増えた家計の純資産が政府債務の財源になるということですね。

今回の参議院選日本維新の会から出馬している藤巻健史氏を代表とするような、いわゆる財政破綻論者の陥りやすい勘違いとして、この先何年か経つと、政府債務が現在の家計純資産に追いついてしまい、海外に財源を求めざるを得なくなり、数年後には破綻する、という話があります。

ただ、図1を見れば、政府債務の財源が尽きないことのほか、日本には断トツで世界最多(22年連続一位、二位中国の二倍)といわれる、巨額の対外純資産があることも分かります。日本の家計は政府債務ばかりか、海外の巨額債務さえもカバーしていることが分かります。

日本ではデフレで国内で生産した製品が余剰となるからこそ、それを海外に売って経常収支が黒字となり、これが対外純資産増加に繋がっており、日本は近いうちに破綻するどころか、破綻とはまるで遠い状況にあることになります。

正しい政府債務コントロール法は、まずデフレを脱却し、好景気の中で法人税所得税・固定資産税などの税収自然増を待って、政府債務の対GDP比が下がるのを待つことであり、単に政府債務が巨額だから、というだけの理由で財政再建を目的とした増税を行えば、アベノミクスもそこで終焉し、1997年の橋本内閣での増税策同様、却って政府債務の累増を加速するだけに終わることでしょう。

【H25.07.11追記】
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