シェイブテイル日記2

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「デフレ脱却は危ない」はここがオカシイ

最近、「デフレ脱却は危ない−アベノミクスのジレンマ」(高橋淳二著)という本を図書館で借りて読んでいます。
高橋淳二氏は公認会計士が本職だそうですが、この本は反アベノミクス、当然反リフレ、という本です。

ただ、一部御用学者の方たちの手になるような、最初から財務省御用達の結論ありき、というわけではなく、多岐にわたる方面から検討した上で出した結論が反アベノミクス・反リフレ、というスタンスのようですので、意外に人気が高く、「目からウロコが落ちた」といった書評まで散見されます。

「デフレ脱却」は危ない ~アベノミクスに突きつけられるジレンマ

「デフレ脱却」は危ない ~アベノミクスに突きつけられるジレンマ

今回はその本の主張(括弧内はページ数)を書きますので、よろしかったらどこがおかしいのか、あるいはそれが正しいのかをご一緒に考えて見ませんか?

❏(5)アベノミクス金利上昇のないデフレ脱却は不可能ではないのか。金利上昇による危機に至らしめないデフレ脱却ルートを示せ。

❏(32)不必要な量の日銀券を発行しても、デフレでは日銀当座預金に積み上がるだけ。

❏(34)ETF・REITなどのリスク資産購入は通貨価値安定の中央銀行の責務に反し大々的には実施できない。

❏(43)金融政策は車のブレーキのようなもの。どれだけ緩めても加速は無理。財政政策は加速可能だが、財源に問題あり。

❏(46)増税を先送りし財政政策を実施ても賢明な国民は消費・投資を抑え、貯蓄するので効果は減退する(リカードの等価命題)。

❏(51)乱暴だが確実にインフレを起こすには工場店舗などの操業を強制停止させれば良いが、それでは景気は回復しない。すなわちインフレ・デフレは経済活動の結果であって原因ではない。

❏(53)マネタリーベース量で、マネーストックはコントロールできない。マネタリーベースの量を減らした2006年頃にもマネーストックは漸増し、M2+CDで言えば1988年の400兆円が現在は800兆円と倍増している。つまり、日本では通貨量と物価の関係が崩壊していて、いくら金融緩和してもデフレからは脱却できない。

❏(59)インフレターゲット政策をインフレ率引き上げに使った例はなく、実際にはインフレ抑制策だ。

❏(60)しかし、その一方で通貨量を増やし続ければ、どこかでは悪性インフレとなってしまう。

❏(67)債務削減の第一歩はプライマリーバランス黒字化だが、国債費除く歳出70兆円に対し、バブル期での歳入でさえ60兆円だから達成不可能。 PB黒字化には40%成長が必要。

❏(68)国の債務をへらすには、<1>過酷な税制にする、<2>社会保障費など国債費以外を大幅減額する、<3>GDP成長率を高度成長期以上のとんでもない勢いに伸ばす、のいずれかしかない。

❏(74)国の粗債務が1000兆円だが、資産だって多い、という主張があるが、非金融資産の多くは二束三文でせいぜい100兆円程度で、意味が無い。金融資産では例えば米国債およそ100兆円を売却すれば世界経済が崩壊する。

❏(80)日本の政府債務は内債であるため、債務者・債権者ともに国民という、いわばエセ債務である。エセ債務の場合、徴税権があるため、政府は自分で返す気がなく、国民も他人ごととして返す気がなく外債より危険。

❏(86)財政破綻には<1>政府の債務不履行(狭義財政破綻)、<2>ハイパーインフレ(広義財政破綻)、<3>過度なインフレ税(広義財政破綻)、<4>極度円安・外貨準備枯渇(広義財政破綻)、<5>金利上昇、政府歳出激増による財政破綻(狭義財政破綻)、<6>金利上昇、国債暴落、国債保有者が大損害(広義財政破綻)といったシナリオがありえ、日本では<6>がメインシナリオ。

❏(113)1%の金利上昇で金融機関は6・4兆円もの損失が出る。

❏(117)銀行は国債運用損失を貸出業務利益とその他業務利益ではカバーできない。

❏(149)日銀レポートによると、1%金利上昇によるTEAR1比率押し下げは0・3-0・4%で済む、となっているが前提が甘く結論は疑問。 (173)自国債は無リスクとされているがリスクがあるため。

❏(183)巨悪から目をそらすために日銀は利用されていて、「本当の悪人」がのさばっている。金利上昇の弊害に言及しない経済学者は信用してはいけない。

❏(193)日銀券は80兆円しかないのに、銀行預金は770兆円あり、日本には銀行預金を半分一斉に引き上げようとしても、実はおカネがない。金融資産は実物資産と異なり、「仮想資産」に過ぎずババ抜きである。

❏(198)しかし、通貨の信認さえ保たれれば危機は生じない。この意味でデフレでは日銀券に疑問を生じさせない。金利のコントロールが重要。

❏(201)不換紙幣の現代では、通貨・内債乱発で為政者が財産を巻き上げても、逆に国民資産が増えている錯覚に陥る。

❏(207)日本では高い貯蓄性向があるので国債発行システムが維持されて際限なく国債が発行できる。

❏(228)磯野家での喩え話。結論は「日本円の価値の源泉は海外資産があること」

❏(238)日本円には米ドルのような「国力」が伴っていないため、「本当の力」はない。

❏(240)際限なく借金できるなら、国民に100万円ずつ配ればどうか。将来破綻を恐れる国民はそれらを全て貯蓄するであろう。ではひとり1億円配ればどうか。超インフレになるであろうからどちらもダメ。

❏(249)消費税増税財政再建のためにやるのではなく、巨額の政府債務を崩壊させないためにやるもの。(252)財政再建にとっては焼け石に水である。

❏(251)これを法人税増税所得税増税でやれば、カネのある法人・個人は海外に逃げる。逆進性がある消費税なら、徴税される庶民は海外に逃げられないからしっかり徴税できる。

❏(256)デフレなのに名目GDPが維持されているのは名目GDPが水増しされているから。

❏(291)ほどよいインフレの実現は難しい。なぜならば、物価上昇の予想が生じた途端国債が暴落するから。

❏(300)日本円は政府信用(エセ借金)に裏打ちされている比率が高まっていて、エセ濃度が高い。コアCPIをプラスにするには、エセ濃度を50%以下に下げる必要がある。

❏(307)日本が財政破綻をせずに済んでいるのは、「低金利・不景気・デフレ」のおかげ。増税して公共投資をせよ。

(引用終)

さていかがだったでしょうか。
幾つかは「なるほどそうだ」と思える項目がありましたか?

結論から言えば、私シェイブテイルにはごく一部を除き、正しいと思える項目は見当たりませんでした。

とはいえ、Amazon書評では最高の5点をつける方たちが少なからず居る、という状況でもあります。
皆様からも、項目ごとに(ページ数で)、賛否両論をコメント・ブコメとしていただければ幸いです。