シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

安倍首相、八方美人ではデフレ脱却は不可能です


5日の講演で成長戦略を語る安倍首相



 今日5日は安倍首相による内外情勢調査会での講演の後に株価が乱高下した日でした。
講演中の12時半、一旦株価は上昇するも、その直後から暴落、講演中の高値から講演後の安値まで3時間半で800円以上の下げを演じました。

 暴落後のマスコミ報道では、安倍晋三首相が講演で、「成長戦略第3弾に言及したが原発再稼働など事前に期待があった政策に踏み込まず失望が広がった」といった見立てのようです。*1 
本当にそれだけでしょうか。

 安倍政権ではデフレ脱却を最優先課題に掲げ、リフレ政策を強力に推進する人物、という人選で黒田総裁、岩田規久男副総裁という日銀首脳人事を行いました。 
新生日銀は異次元緩和を発表し、市場はこれを好感して株価は4月4日の12000円から5月22日の16000円まで一気に駆け上がりました。

岩田規久男副総裁はその著書「リフレが日本経済を復活させる」の中で、日銀がマネタリーベース増大させることにより予想インフレ率が上昇し、これがトービンのqを上昇させることで、予想実質資本コストを低下させ、企業投資を増大させる、というデフレ脱却への想定ルートを書いています。
     日銀が株価高騰政策を続けなければならない理由 - シェイブテイル日記 日銀が株価高騰政策を続けなければならない理由 - シェイブテイル日記

 安倍政権がデフレ脱却を最優先に取り組む姿勢を見せ、国民がそれを支持しているということは取りも直さずアベノミクスでは第一の矢、つまり日銀の異次元緩和に代表されるデフレ脱却に向けた金融政策こそ国民から安倍政権に最も期待されている政策だということです。

それにもかかわらず、今日の講演の中で成長戦略担当官僚の作文に基いてか、「私の経済政策の本丸は、(金融財政政策ではなく)三本目の矢である成長戦略です。」と語りました。*2
この発言こそ、今日の暴落につながったのではないでしょうか。

 現在のアベノミクス成長戦略実務は、日本経済再生本部が担当しています。
 その事務局実務者の顔ぶれは、総合調整担当の財務省出身・飯塚厚氏、産業競争力会議担当の経産省出身・赤石浩一氏、経済財政諮問会議との連携役が内閣府出身・田和宏氏です。
 この田和氏は消費税増税を先導した与謝野馨氏が麻生政権財務相時代に経済財政諮問会議を主導し、また民主党政権では社会保障と税の一体改革に関与するといった具合で与謝野氏の懐刀的存在であり、財務相別働隊とも目されている人物です。

先月の1000円超に及ぶ株価暴落前日の5月22日には、甘利大臣が財務官僚への配慮からか、財政再建を第4の矢と位置づけるとの発言が伝わり *3、次の700円暴落前日にあたる5月28日の経済財政諮問会議では、財政健全化を「第4の矢に」位置づけるという、骨太方針案の策定が報じられています。*4

甘利大臣発言の文脈での財政健全化とは、経済成長による自然増収ではなく、消費税増税による民間からのマネー取り上げを指しており、要するに第四の矢とは負の財政政策あるいはマイナスの第二の矢と言い換えても良いものです。

6月14日にはこの骨太の方針閣議決定される予定と言われていますが、こうした一連の動きからアベノミクスの変質を感じているのは筆者ひとりではないでしょう。

 そして、「私の経済政策の本丸は、(金融財政政策ではなく)三本目の矢である成長戦略です。」という安倍発言による一時800円に及ぶ今日の株価暴落。 毎週政権中枢による、国民が望まない政策の発表のたびに暴落が繰り返されています。
そしてその暴落の度毎に「株価には上がるときも下がるときもある」「もうすぐ乱気流を抜ける」といった無策を誇示するような閣僚発言が追い打ちをかけます。

安倍総理は4月の阿川佐和子氏との対談では、「前回(第一次安倍政権)の一番の反省点は、自分がやりたいことと、国民がやって欲しいことが一致していなかった」と語っていました。 
経産省に配慮した成長戦略財務省にも配慮した財政再建などと八方美人になってはデフレからの脱却は不可能です。
第二次安倍内閣がデフレ脱却に失敗すれば、今の政界有力者の顔ぶれを見ても、デフレ脱却の機会は10年単位で遠のくでしょう。

第一次安倍内閣の際には霞ヶ関を敵に回した結果、社会保険庁自爆テロ攻撃(次々と露見した消えた年金問題)に遭い、政権を放棄せざるを得なくなった安倍首相としては、現政権内部にも巣食う反アベノミクス官僚にも一定の配慮はせざるを得ないのでしょうが、この踏ん張りどころでは、それぞれの所属組織の思惑で動く官僚たちに右顧左眄することなく、強力な金融財政政策を継続実施し、一日も早くデフレ脱却への明確な道筋を示していただきたいものです。

【参考】首相官邸での意見募集サイトはこちらです。
    安倍政権の中心政策を、デフレ脱却に回帰を求めるあなたの声をお届けください。