シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

ベルカ・アンカーはビルトイン・スタビライザーか

3月26日付Bloombergでは、ポーランドで計画されていた付加価値税減税が、不思議なことに景気後退を理由に中止することが報じられていました。 以下拙訳。

ポーランド首相「景気減速を前に付加価値税減税を実施せず」
Poland Unlikely to Cut VAT in 2014 on Slowdown, Tusk Says  Bloomberg- Mar 26, 2013

ポーランドのドナルドトゥスク首相は、「景気減速により、歳入減となるので付加価値税減税は実施できないだろう。」と語った。

首相は閣議のあと、「付加価値税減税を実施するためには、ポーランドは劇的な景気回復が必要だが、私にはそうなるとは思えない。」と語った。

ポーランド政府は標準付加価値税率を2011年に上げた現在の23%から22%に減税する計画だった。今年の予算計画では付加価値税・物品税は歳入の64%を占める予定。

ポーランド経済は過去12年来最低の景気後退に見舞われ、高失業率により消費支出が抑制され、歳入が減少している。財政赤字は2月末時点で今年の計画の61%に達している。

トゥスク首相のコメントに先立つ3月13日には財務次官は「政府は来年の付加価値税減税を依然予定している。」と語っていたが、首相は今日「我々の財政の状況を考えると、財務次官は楽観的過ぎた。」と語った。


ポーランドは2004年にEUに加盟しました。ポーランドが更にユーロ通貨統合するためには「財政安定化・成長協定(成長安定協定=SGP)」の順守が必要です。*1 この「財政安定化・成長協定」では、ユーロ導入後のインフレ抑制のために、参加各国の財政赤字を対GDP比3%、政府債務残高を同60%以内に抑制することが定められています。

このユーロ統合を意識してか、ポーランドで2001年に財務大臣を務めたマレック・ベルカは、財政健全化のため、ベルカ・アンカーと呼ばれる仕組みを導入しました。
 
以下はウィキペディア ベルカ・アンカーより

ベルカ・アンカー
国の財政赤字の上限(キャップ)を決め、その上限を超えた場合に(世界のどの国でも財政難の際によく起こる)政治的な混乱を招くことなく自動的に緊縮財政の政策を発動する、いわゆるビルトイン・スタビライザーである「ベルカ・アンカー(ベルカの錨)」を世界ではじめて導入したことは、経済学の分野や金融界においてはあまりに有名である。これには国の債務が国内総生産GDP)の55%を超えた場合に付加価値税(VAT)率が自動的に1%上昇することなどが含まれる。

ポーランドでは、国家債務の対GDP比60%のレベルがポーランド憲法に明記されており、さらに下位の法律(憲法よりは改正が容易)でより厳しい対GDP比55%が規定されていることから、結果的には失業率が高まり税収が減れば、逆に増税する仕組みとなっているようです。

日本など多くの国では、好況の時には法人税収が増え、累進税率の所得税も大幅に増えます。逆に不況になれば、赤字企業が増えることで、法人税収が減り、失業者が増え、平均賃金が減れば自動的に減税されます。
これが普通の意味での財政に自然に備わるビルトイン・スタビライザーでしょう。

ウィキペディア ベルカアンカー編集子は、ベルカアンカーをビルトイン・スタビライザーと称していますが、実態的には、不景気の時に増税し、好景気の時には減税が可能となる、ビルトイン・アンスタビライザーとしか言えない代物のように思えます。

自民党の石破幹事長は昨日、日本憲法を改正して財政健全化確保を、と意見表明していました。

政府債務が積み上がった日本とは異なり、ユーロ参加という目的に向けてとはいえ、憲法に財政健全化を組み込んだポーランドでは、財政政策の手足を縛られてしまっているという事実は押さえておく必要があるでしょう。

付言すれば、ポーランドでは政府債務残高の対GDP比率は60%を下回っていますから、国債費比率が高くないなかで政府歳入が歳出と均衡していれば事足ります。ところが日本で財政健全化を憲法に謳った場合、恒常的に政府が民間のマネーを吸い上げ、恒常的な不況とすることを憲法に明記することになります。

*1:現在のポーランド通貨は独自通貨ズロチ