マネーの本質からみた消費税増税の妥当性
昨日のエントリーではマネーの本質とは、汎用引換証であり、価値の裏付けは、市場に流通する商品・サービスの量だ、という話をしました。
これは、現在の不換紙幣もかつての兌換紙幣でも変わらぬ真実です。
マネーの本質からみたインフレ目標政策の妥当性 - シェイブテイル日記
ただ不換紙幣−中央銀行が要求に応じて紙幣を正貨に交換することがない紙幣−の場合にはもうひとつのマネーの本質を併せ持っています。
それは「不換紙幣は債務(借金)を裏付けとして発行されている」という点です。*1
このことをリチャードヴェルナーは貸出しが返済されればマネーは「死ぬ」と表現しています。*2
債務をすべて返済すればマネーは消失してしまう、という不思議だが重要な視点については以前このブログでもとりあげました。
クルーグマンも、家計の債務と、貨幣発行権を有する政府の債務とは別であり、家計債務は返済する必要があるが、政府債務は、返済する必要がない、(とまでいってしまうとやや語弊がありますが、)要するに返済し続ける必要はあるものの完済の必要はなく、ただ経済成長率よりも債務の伸びを抑えればそれで良いことを指摘しています。
政府債務に問題が生じるのは、利払いの永続性に疑問が生じた時で、元本は無限に借り換えができます。現在の日本国債は粗債務残高こそGDP比で2倍の水準ですが、国債金利は0.9%レベルで、保険料に相当するCDSも低レベルのままです。
政府債務を抑制するチャンスとは、マイルドインフレ下に好景気が持続する時であって、デフレで不景気な時に、増税を強行すれば、景気は腰折れし、好景気なら入ってきたであろう法人税や所得税を大きく抑制し、総税収は減ってしまい、逆に政府債務が急速に積み上がってしまうことは、1997年の橋本内閣の消費税増税で私達は経験済です。 ここで同じ愚を繰り返す必要はありません。
5月19日にNHK日曜討論に出席した甘利大臣によれば、来年4月から消費税を上げるかどうかについては、今年10月に決定されるとのことです。
政権周辺での消費税増税への考え方については、5月13日付日経新聞朝刊では *3 、
安倍政権は、民主党政権が2010年にまとめた「2015年度までに基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の赤字額の国内総生産(GDP)比率を半減させ、2020年度に黒字化する」との方針を財政諮問会議も踏襲、麻生・甘利もこれに同調、政権内では菅官房長官は「(PB黒字転換時期を)固定化しないで、もう少し様子を見ていってはどうか」と慎重論を述べた。
…。
消費税増税の見送り論は、デフレ脱却を第一とするリフレ派の中心人物の主張でもある。アベノミクスでの首相のブレーン、内閣官房参与の浜田宏一エール大学名誉教授や、やはり内閣官房参与で財務省OBの本田悦朗静岡県立大学教授などが消費増税には懐疑的で、首相に先送りを進言し続けているとされる。
と、首相周辺も麻生・甘利大臣は増税積極派、菅官房長官・リフレ派ブレーンは増税慎重派に二分されているようです。
一方、市場関係者の間では、消費税増税がなければ、日経平均2万円超えもありうるが、増税すれば、景気は腰折れというのが大方の見方となっています。*4
消費税を増税しても、当面の社会保障制度には何の影響もなく、単に国債利払い費に回ってしまうのですから(下記参照)、現在が消費税を上げるべきタイミングではないことは火を見るより明らかです。