シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

黒田日銀異次元緩和とコイン洗浄係

5月16日時点で、長期金利(新発10年国債利回り)は0.840%となっています。
この長期金利、5月8日時点では0.6%を下回っていたものが、この数日で大きく上げて(価格は下落)現在の水準になりました。

長期金利上昇は個人レベルでも住宅ローン金利負担増加などの悪影響がありますが、アベノミクスにとっても、好景気になれば長期金利が上昇することは容認できるものの、デフレで不景気から脱却していない段階での長期金利は障害となる可能性が否定できません。

今回の長期金利急上昇については、アベノミクスでのデフレ脱却手段として、日銀が新発国債の7割にも及ぶ大量の国債を買うため(いわゆる池の中のクジラ状態)、市場に厚みがなくなり、ちょっとしたショック、例えば為替が1ドル100円の節目を超えた、といったことや、長期金利上昇を容認するかのような経済閣僚発言などで、国債が売られた結果、大きく金利が動いたと説明されています。*1

ただ、この5月の国債利回り急上昇以前にも記録に残るほどの長期金利上昇(国債暴落)がありました。

その、今年4月の国債暴落の経緯は次のようです。
4月3日に黒田日銀より異次元量的・質的緩和が発表されました。
翌日の4月4日は、日銀による長期国債大量購入というニュースを好感して国債が利回り0.315%(価格は146円44銭)まで買い進まれます。

ところが翌日5日には一転して反落、サーキットブレーカー発動2回を交えて、利回り0.620%(価格は143円10銭)まで暴落しました。こうしてわずか1日で0.3%もの長期金利上昇が生じました。(図1)

この4月の国債暴落で金融機関が疑心暗鬼になった結果、ちょっとしたショックに驚いた金融機関が保有していた国債を売り急ぎ、5月の急落につながった可能性も考えられるでしょう。

国債は4/5と5/9を起点に二度大幅な下落を記録

図1 黒田日銀の異次元緩和以降の国債市場
東証JGB日本国債先物(10年物)6月限価格


それにしても、普通に考えれば国債市場に巨大な買い手として黒田日銀が出現したので国債は買い、が正しい反応に思えるのに、実際には上昇の後、まさかの暴落。この4月の国債暴落については、日銀内自爆テロとの見方も報じられています。

長谷川幸洋ニュースの深層
突然の金融市場局長更迭は「自爆テロ封殺作戦」!? 乱高下繰り返す長期金利と黒田日銀に何が起きているのか

「この人事は例年より1ヵ月半くらい早い。4日の『ビッグサプライズ(金融緩和)』以降、肝心の長期金利は下がるどころか、逆に上昇気味になっていた。これは、はっきり言って金融市場局のお粗末なオペレーションのためです」

こう語るのは、ある外資系金融機関のアナリストだ。…。

「日銀は緩和を発表した4月4日の夕方、金融市場局が『当面の長期国債買い入れの運営について』というペーパーを公表しました。これは金融政策決定会合での緩和決定を受けて今後、どう長期国債を買っていくか、基本方針を示したものです」

「その中に(4月5日以降に実施する買い入れより適用)という一文が入っていたために、ディーラーたちは当然『日銀は5日から長期国債の大規模買い入れに動く』とみたのです。それで5日朝から一斉に買いに出たのですが、日銀はまったく買いに出てこなかった」

「それで『これはおかしい』という話になって、午後からは逆に一斉に売りに出た。半分パニックです。長期金利が午前の0.3%台から午後に0.6%台に跳ね上がったのは、それが理由です。この乱高下で大損した金融機関もたくさんあるようです。なにしろ、儲かるとみて買い上がっていって高値を付けたところで、逆に売らざるをえなくなったんですから」

「これで『日銀に裏切られた』と思ったディーラーがたくさんいます」

 金融市場では大損させられた恨みもあってか、先週あたりから「局長を更迭すべきだ」という声が出ていた。私が「局長交代は必至ですね」という話を耳にしたのも先週である。まさしく、その通りになった。黒田日銀は5月1日付で青木周平金融市場局長を決済機構局長に異動させ、代わりに山岡浩巳金融機構局審議役兼金融市場局審議役を後任の金融市場局長に任命した。

 決済機構局長は同じ局長とはいえ、金融市場局長に比べればあきらかに格下である。事実上の更迭とみていい。例年の人事より時期が早いうえ、黒田が20ヵ国・地域の財務相中央銀行総裁会議(G20)のためワシントンに出発する直前というタイミングも「これ以上、自分の留守中に下手なマネはさせない」という意思の表れではないか。
市場の一部には、今回の乱高下を単なる日銀のオペレーション技術のまずさではなく、黒田体制に対する日銀守旧派によるクーデター、ないし意図的なサボタージュとみる向きもある。

この官僚による自爆テロという言葉では、思い出される話があります。

2007年から表沙汰になったずさんな年金記録問題では、問題含みの年金記録が次々に明るみにでて、当時の第一次安倍内閣は次第に窮地に追い込まれていきました。
当時の自民党中川秀直は、「社保庁改革案があったため、解体されて非公務員化されれば、いずれ隠していた年金記録問題が明るみに出てしまうので、それならばということで、改革案潰し(自民党潰し)のために社保庁が『自爆テロ』として年金記録問題の情報をリークしたのではないか」と語っています。

4月の国債暴落が日銀守旧派官僚の故意かどうかはわかりませんが、仮に中央の官僚たちが、国民生活を脅かしてでも自分たちの「ぬるま湯住環境」を脅かす存在を許さない、と思っているとしたら、とんでもない思い上がりでしょう。

青木元金融局長の所業は、意図的ではなくともタイミングが悪すぎます。
「デフレ不況 日本銀行の大罪」(田中 秀臣著)によれば、「日銀は長期国債を大量に買い取るべき」と批判した内部の研究者は、コイン洗浄係に異動となった、とか。

青木元金融局長も、今回は異例の降格をされても決済機構局長まででしたが、内部批判である可能性があり、またその後の大きな国債下落の引き金となった可能性がある以上、できることならそのコイン洗浄係にでもなってもらえば、一罰百戒ということで、「日銀内自爆テロ」もポジティブに転化できるかもしれません。*2

*1:http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPTK067655920130514

*2:筆者としては、中央官僚に厳しくすれば国が良くなる、とだけ考えているわけではなく、逆に国のために尽くす有能な官僚については、高く評価処遇できる人事的仕組みがあれば、天下りを目的とした財務省増税画策といった国民無視の行動も減るのではないかとも思っています。