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麻生財務相が触れようとしない消費税の真実

19日の報道によれば、麻生財務相フィナンシャル・タイムズに寄稿し、安倍首相よりも踏み込んで消費税増税を公約したとのことです。

財務相「消費税予定通りアップ」 英紙寄稿で表明

 【ロンドン共同】麻生太郎財務相は19日付の英紙フィナンシャル・タイムズに寄稿し「消費税は予定通り引き上げるつもりだ」として、来年4月から8%に増税する意向を示した。
 消費税増税について、政府は「さまざまな指標を見て総合的にタイミングを判断したい」(安倍晋三首相)との立場。麻生氏の表明は一歩踏み込んだ「対外公約」となりそうだ。
 麻生氏は「金融緩和に財政健全化が伴わなければ、悪い金利上昇が起きうるが、それはわれわれの計画ではない」と強調。政府債務について「政策当局者らは危機感を持っている」と訴えた。

 財務大臣が首相を差し置いて増税国際公約することの是非はここでは措くとして、麻生氏が言うように消費税を上げなければ財政健全化ができないか、といえば、事実は逆です。
 財務省HPから引用した下の図1*1のように、デフレ状態の日本で消費税を上げた1997年以降、消費税収は増えたものの、総税収は減りました。

デフレで消費税率を上げたら総税収は減ったことが財務省HPに載っている
図1 消費税増税と総税収
引用元:財務省HP
平成9年(1997年)に消費税が引き上げられると消費税収は増えたものの、
所得税法人税収は減り、総税収としても減っている。
この図を見やすくしたグラフは消費税・世論調査と税収の推移 - シェイブテイル日記 消費税・世論調査と税収の推移 - シェイブテイル日記を参照。

また、増税対象が消費税である理由としてしばしば標準税率が5%で低すぎる、という話が出てくることがあります。
確かに標準税率でみた場合、日本の消費税率は消費税を導入している他の国々より低く見えます。
ところが日本の場合、他の諸国で導入されている軽減税率や生活必需品に対する0税率といった制度が殆どないため、国税全体に占める消費税率という切り口では、世界的に見ても決して低くはなく、ましてや消費税率を10%(国税としては8%)に増税した場合、国税に対する消費税率は何と37%と、世界最高レベルに達してしまうことが菊池英博氏により指摘されています(図2)。*2

増税を実施すれば、国税に対する消費税比率は世界最高水準へ

図2 消費税の標準税率と国税に対する比率
日本の消費税は標準税率としては低いが、軽減税率などがないため、
国税に対する消費税率は国際的にも決して低くはなく、増税を決行すれば
世界最高水準の37%へと上昇してしまう。

 デフレ下に消費税増税すればデフレがひどくなり、総税収が減って、財政健全化には逆行すること、日本の消費税は軽減税率や0税率といった制度が不備であるため、増税を強行すれば、国税に対する消費税率は世界最高水準になってしまうことも含めて、日本は消費税増税を急ぐべきかについて、麻生財務相は説明する責任があるのではないでしょうか。

*1:引用元: http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/011.htm

*2:2012年7月26日「社会保障と税の一体改革に関する特別委員会」での提示資料による。