シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

「デフレ宣言 物価下落を止めてはならぬ」

 安倍政権と黒田日銀の量的・質的金融緩和策により、現在円安株高が進行中です。
これは日本が長年病んできた「緩慢な死」から必死に脱出しようとする結果もたらされているものです。 *1

このデフレの由来を辿れば、1997年の橋本消費税増税と「構造改革」の美名のもと実施された緊縮財政、そして当時改正された日銀法のために、金融政策の手段どころかその目的まで政府から独立してしまった速水日銀による引き締め気味の金融政策の結果、1998年から日本は継続的なデフレに突入したのでした。

それから3年以上経った2001年3月、政府が月例経済報告で日本経済の状況をデフレと認定しました。
ところがその翌日、毎日新聞に次のような社説が載りました。


『毎日新聞』2001年3月17日朝刊社説
 政府は16日、3月の月例経済報告で、現在の物価状況をデフレーションと認定した。いまの状況を「悪い物価下落」と断定したわけだ。しかし、最近の消費者物価を中心とした物価の低下は、輸入品の増大や技術進歩、流通合理化などによるところが大きい。これまで割高といわれてきたサービス価格も下がっている。経済の国際化や規制緩和などが進むなかで、新しい価格体系への移行過程にある。
 ところが、月例経済報告は、デフレの定義を、物価下落を伴った景気後退から、継続的な物価下落に改め、一方的にデフレ宣言した。これは、形を変えた日本銀行への一段の量的金融緩和要求だ。経済政策の貧困さを露呈していると言わざるを得ない。物価はもっと下がっていい。

 今回の政府のデフレの定義変更は国際機関などにならったもので、経済協力開発機構OECD)や国際通貨基金IMF)の統計との整合性にも配慮したという。

 国内卸売物価は1998年以来、3年連続して下落している。全国の消費者物価も99、2000年と2年連続で下落している。年明け以降も、1月は生鮮食品を除く総合物価で前年比0・5%の低下。さらに、2月の東京都区部(速報)の生鮮食品を除いた総合物価は同1・1%と、統計の比較が可能な範囲では最大の下げとなった。新たな定義に従えばデフレである。

 しかし、今回のデフレ宣言では、「緩やかなデフレ」と、下落幅が小さいことを強調している。それでも景気に悪影響を及ぼしつつあるとの判断だ。

 最近まで日本の物価は国際的に高いことが問題であった。内外価格差である。物価が下がらないという硬直性も目立っていた。そこで、物価引き下げが政策目標であった。

 そのための施策が規制緩和や流通合理化、製品輸入促進などであった。例えば、最近、下落幅の大きい繊維製品は輸入品の浸透のためだ。通信料金や石油製品などでは規制緩和による競争促進が価格を押し下げている。さらには、硬直的といわれてきたサービス価格も下がっている。外食の場合は、競争激化による価格引き下げが大きく寄与している。

 その意味では、ここ数年の動きは望ましいことなのだ。また、売れないものを売り切るバーゲンなどの努力も当然のことだ。消費者の間でも安くて、いいものを買うという行動が定着してきた。こうしたことが、どうしてデフレなのか。

 また、デフレは金融的現象だともいっているが、これは政治からの責任転嫁である。市中に出回っているお金が不足しているということだ。現実はどうかというと、ゼロ金利時代を含めて、超低金利は長期間続いており、金融は超緩和状態にある。

 この先、デフレ対策として、さらなる量的緩和を実施したとしても効果は期待できない。それどころか、構造改革を中断させることになってしまう。

 いま、日本が陥っている危機は自ら招いたものだ。政府がデフレと認定した経済状況は、その過程にほかならない。人為的インフレ政策で物価を引き上げることで、国民経済全体に何の利益があるのか。債務者のみを視野に置いた政策は、消費者に損害を与えるだけだ。

毎日新聞 03-17-00:12)

要するにこれは今は顧みられることもなくなった「良いデフレ論」に立ったデフレ礼賛社説だったわけです。
毎日新聞が社説で「止めるな」とまで奨めたデフレによって、その後の日本で何が起きたでしょうか。

デフレ日本では、消費者物価指数より大きく給与が下がった

図1 消費者物価指数と平均サラリーマン給与の推移
出所:消費者物価指数(CPI):IMF WEO 1995年=100 ,平均サラリーマン給与:国税庁民間給与実態統計調査
デフレになった1998年から2011年までで、物価CPIは3.8%の下落にとどまったが、
その間に平均サラリーマン給与は465万円から409万円へと、12%も下がった。

物価指標、消費者物価指数CPIには上方バイアスがあるため、デフレの物価下落を正しく検出することができず、明確にデフレとなった1998年から2011年までの間に3.8%の下落にとどまりましたが、平均サラリーマン給与の方は、リストラや雇用の非正規化を伴いながらその間465万円から409万円へと12%も下落しました。

毎日新聞は、いまだに良いデフレ論を堅持しているわけではないでしょうが、デフレ容認論どころかデフレ推進論を唱えて、国民の賃金下落に加担したことについては、国民の前ではっきりと謝罪する必要がありそうです。

*1:ジョージ・ソロス氏(4月5日)はCNBCインタビューに答え、「この25年間、日本は緩慢に死につつあったが、現在は目覚めつつある。」と述べた