シェイブテイル日記2

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バーナンキはなぜ大量の債券を買ってきたのか

 安倍政権では、金融緩和に積極的な黒田東彦氏を次期日銀総裁に、また岩田規久男氏を副総裁に充てる人事を各党と調整中です。
もし白川氏に代わるこれらリフレ派の日銀トップは恐らく長期国債のさらなる購入などの積極策を打ち出してくるでしょう。

 これに対し、経済学者の池尾和人氏は、最近のブログの中でも「デフレの罠の中では、貨幣供給量が増えても物価が上がるという関係は成り立たない。経済にマネタリーベースを注入しても効果はない。」と主張しているようです。*1

では、日銀よりもずっと積極的に資産を購入してきたFRBは一体何のために大量の資産を購入してきたのでしょうか。
これについては、昨年3月29日にジョージ・ワシントン大学ベン・バーナンキFRB議長自身により、学生たちに対して行った講演の中で、その理由が語られています。*2 *3

 我々は危機の前に既に8,000億ドルの国債保有していました。 ところがLSAP(Large Scale Asset Purchase;大規模資産購入=QE;量的緩和)と表示されている領域(図1)を見ると、我々は2009年を初めとする時期に2兆ドルの新たな証券をバランスシートに加えました。 …。

 さて、なぜ我々はこのような資産を購入したのでしょうか。 


FRBによるLSAP(大規模資産購入)
出所:BERNANKE: Here's How QE Works, And It's NOT By Printing Money - *4 *5

 その基本的考え方は、我々が国債とGSE*6債権を購入して中銀のバランスシートに計上すると、それは市場でのこの種の債権の供給量を減らす、というものです。 …。 これらの債権の入手可能な供給量が少なくなれば、投資家はこれらの証券に対してより高い価格を払うのを厭いません。価格は利回りと逆の関係があります。

 繰り返しますと、国債を購入して我々のバランスシートに計上し、これら国債の入手可能な量を減らすことによって、我々はより長期の国債GSE債券の金利を現実に引き下げたのです。 更に投資家がポートフォリオに入れる入手可能な国債とGSE債権が希少になれば、投資家が社債のような他の証券に向かうとすると、他の証券の価格をも引き上げ、利回りを引き下げたのです。 そしていつものように、より低い金利は経済に支援的な刺激効果を持つことは言うまでもありません。

我々は短期利子率に焦点を当てるのではなく、より長期の利子率に焦点を当てていました。 ですから、(LSAPつまりFRBのQEは、伝統的な金融政策と同じく)経済を刺激するために金利を引き下げるという基本的な論理は同じなのです。

池尾氏はデフレの罠の中では、マネーと超低金利の債権は完全代替的であるため、中銀が債権を買っても無意味という立場のようです。

ただ、日本でも中銀が2%のインフレ目標を掲げ、円安・株高が進んでも、何人かの経済学者がかつて懸念したような金利急上昇が生じない理由のひとつは、嫌々ながらも日銀がFRB同様に国債などを100兆円以上と大量に購入しており、債権市場がタイトになっていることと無関係ではないと思います。