シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

アベノミクスの位置づけ再考察

先週末のドル円相場は93円台を窺う円安となり、株式市場は12週連続陽線と、54年前の岩戸景気以来の連続上昇となりました。ここまでのアベノミクスは成功を収めつつあると言えます。
 
そこで、今回は政界と経済学界でのアベノミクスの位置づけについて再度考察してみましょう。

1.政界経済地図
図1は現在の政界を金融政策の積極度(上下)、財政政策の積極度(左右)で4分割して示したものです。安倍内閣のアベノミクスは2%インフレ目標に向けた無制限金融緩和という主張のように、金融政策に積極的です。 みんなの党も同様に金融政策積極派です。 かつての小泉・第一次安倍内閣も竹中氏が主導する形で金融政策には積極的でした。 ただ、第一次安倍内閣と比較して、第二次安倍内閣は金融政策も一層積極的になり、また財政政策にも積極的に変化しています。

図1 アベノミクスを巡る政界経済地図
現政界を縦方向に金融政策積極性、横方向に財政政策積極性で4分類した。
なお、党内で主張が多様な海江田民主党と政策が殆ど反自民の民社・共産は記載を省略した。

かつての麻生内閣は財政政策には積極的でしたが、金融政策には関心が薄かったようです。古くからの自民党の経済対策の流れを汲んでいるのでしょう。

これに対し、前野田内閣は金融政策にも積極的でなければ、財政政策にも積極的ではありませんでした。それどころか、財政を引き締める、消費税増税に政権を賭けました。
野田内閣の背後には財務省などの官僚がいたことは有名です。財務省ロボット内閣とも揶揄されていました。

一方、維新の会は雑駁には反官僚政党と言えるのではないでしょうか。中央集権的官僚社会を嫌うため、地方自治道州制に積極的です。 図の対角線方向は主張が逆ですから、いわば反目する関係です。

みんなの党維新の会を友党視するのは、敵の敵は味方、という考え方かも知れません。ただしみんなの党は消費税反対、維新の会は積極的ですから、考え方が近いのかどうかはかなり微妙です。

2.デフレ対応策地図
図2はアベノミクスが対応しようとするデフレに対する経済学的な考え方の地図です。
デフレに対する考え方は、デフレを経済政策で克服すべきで、インフレ期待醸成が有効とするリフレ派と、デフレは仕方がない、あるいはデフレのほうが良いというデフレ派にまず二分できます。

リフレ派は更に狭義リフレ派、リフレ肯定構造改革派、財金併用派の3つに分けられそうです。

図2 デフレ対応策地図

(1)リフレ派 *1 
◯狭義リフレ派:インフレ期待醸成には金融緩和が有効とするもので、更に将来インフレへのコミットが重要とする考え方(原理主義派)と、日銀が積極的に国債などの資産を買い入れるべきという考え方(マネタイズ派)に細分できます。
◯リフレ肯定構造改革:金融政策については狭義リフレ派と考え方を共有するものの、経済成長にはスクラップ・アンド・ビルド型の構造改革が必要という考え方で、新自由主義的ともいえます。代表的なところでは、みんなの党竹中平蔵氏などが相当します。
◯財金併用派:デフレで発生している流動性の罠は金融政策だけでは抜けられない、もしくは抜けるのに時間がかかり過ぎるという考え方です。 その中で、財政政策も積極的であるべきというのがアベノミクスの考え方と思われます。金融政策と財政政策のバランスを取り、財政政策の悪影響(金利上昇や円高など)を予見しこれを金融政策で補完しようとしています。 80年前のデフレを短期間で解消した高橋財政も結果的には同じ考え方ですから、デフレ脱却の王道と言うことができるかもしれません。 
 なお、日銀の協力が得られないなら、政府自ら政府紙幣を発行し、国債増発なしに積極財政をしよう、という政府紙幣発行派(言わば過激派)も財金併用の考え方としてはかなり近いと言えるでしょう。

(2)デフレ派
◯反インフレ派:理由はともかくとしてインフレを極度に嫌がる考え方です。デフレを引き起こした当時の速水総裁など代々の日銀総裁は円高肯定論やらゼロインフレ論(CPI=0%はデフレまっただ中にも関わらずそれが望ましい)といった考え方を述べて来ました。 財務省などは、インフレを離脱すると、国債費が膨れ上がって財政が破綻するという考え方を御用学者に語らせたりしていますので日銀・財務省は共に反リフレ派と言えるでしょう。
◯両極端派:金融政策はデフレ脱却に無効である、ただしデフレを脱却できたら直ちにハイパーインフレになるという矛盾を含んだ考え方です。これも御用学者系の経済学者に好まれる考え方です。
◯デフレ宿命派:これは日本の少子高齢化や、中国などの近隣低賃金国からの輸入が必要である以上デフレは不可避という考え方です。 有名なところでは「デフレの正体」の著者、藻谷浩介氏などがいます。ただ、高齢化が進むイタリアや人口減少中のウクライナなどのインフレ国の説明ができないことや、中国などは日本だけでなく世界中の工場として輸出しているのに、日本だけが長期デフレであることが説明できていないこともあり、まともな経済学的考え方としては扱われていないようです。
◯狭義デフレ派:円の価値維持や円高は日本政府の信用の象徴であり好ましいと原理主義的に考えるグループと、デフレにも関わらず、上方バイアスがある物価指標である総合CPIと連動した給料が保障されているため、デフレの方が良い、と考えるグループもいます。後者は一部の公務員などが相当しますが、公務員給与の原資を出している一般納税者がデフレで苦しむのは構わないというあたりは論理が問題というより、倫理の問題という気もします。

こうしてみますと、国民の支持を集めつつあるアベノミクスは残念ながら政界でも経済界でも現在の主流派ではないことが確認できます。

 選民思想デフレ派は論外ですが、マクロ経済の知識不足でアベノミクスに批判的な政治家などは、もう一度マクロ経済学を勉強するなどして、アベノミクスへの理解を深めてほしいところです。

*1:リフレ派・デフレ派の分類ではbewaad氏の過去ログを参考にしました。