シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

自殺版フィリップス曲線に改善の兆し

今日の日経新聞夕刊では、日本の自殺者数が15年ぶりに3万人を下回ったことが報道されています。

昨年の自殺、3万人下回る  2.7万人、15年ぶり 経済底打ち影響か

 2012年の全国の自殺者数は、前年より2885人(9.4%)少ない2万7766人(速報値)となり、1997年以来、15年ぶりに3万人を下回ったことが17日、警察庁のまとめで分かった。3年連続の減少。11月分までの内閣府のまとめによると、動機別では「経済・生活問題」が前年同期比で20%以上減少しており、全体を引き下げたとみられる。

内閣府は「経済環境が底打ちした影響もあるのではないか」(自殺対策推進室)とみている。

 11月分までの内閣府のまとめでは、動機(複数計上)は「健康問題」が延べ1万2090人で最も多く、年代別では60代の割合が17.8%で最も多かった。

 男女別では、男性が同8.3%減の1万9216人、女性が同11.8%減の8550人。…。

 年間の自殺者は97年まで2万〜2万5千人の範囲で推移したが、不況が深刻化した98年に急増。03年には3万4427人と過去最悪を記録した。

 人口10万人当たりの自殺死亡率では日本の24.4(09年)は主要8カ国(G8)ではロシアの30.1(06年)に次いで高い。G8では以下、フランス16.3(07年)、ドイツ11.9(06年)、カナダ11.3(04年)、米国11.0(05年)、英国6.9(09年)、イタリア6.3(07年)の順。

 00年以降のデータがある中では、リトアニアの34.1(09年)が世界最高で、韓国の31.0(09年)が2番目に高い。

日本での自殺数は図表1のように推移しています。

図表1 日本の自殺者数推移
出所:警察庁発表自殺者数統計  縦軸:自殺者数(千人)
日本では、1980年以降、自殺者数は90年代終わりまで2万-2.5万人だった。
1998年に突然自殺者数が3万人を超え、2011年まで3万人を上回って推移していた。

1998年に突然自殺者数が3万人超えとなった理由は私が知る限り公的な分析はありません。
ただ、この前年橋本内閣が消費税を3%から5%に上げ、1998年以降日本はデフレに陥っています。

そこで、日本の消費者物価指数と自殺者数を散布図としてプロットしたものが図表2です。

図表2【自殺版フィリップス曲線消費者物価指数(CPI)前年比と自殺者数の関係
出所:縦軸・自殺者数は図表1に同じ。横軸・消費者物価指数前年比(%)はIMF WEO Oct.'12。
図内の数字はプロットされた年。
自殺者数は1998年にジャンプして3万人台となった。
その後物価が高かったのは世界的にコモディティ相場が上昇した2008年で
コストプッシュインフレ気味だった。
2012年予測値は物価がやや上向く(CPI=プラスマイナス0%)とともに、自殺者数が3万人を割り込んでいる。

 1980年からバブル期の1990年、バブル崩壊後の1995年頃までは日本の自殺者数は2万-2.5万人でした。CPIが好ましいとされる2-3%を大きく上回っても、日本の自殺者数は2万人以下になるわけではないようです。*1それが、橋本内閣での構造改革と称される緊縮財政策と消費税率3%から5%アップを境に日本の物価がCPIで-2%から+1%のデフレ領域に突入しました。すると、自殺者数は3万人台へと急増しました。 

この関係は、物価と失業率とのトレードオフの関係、いわゆるフィリップス曲線によく似ています。*2
昨年2012年の物価統計はまだ公表されておらず、図は昨年秋のIMF World Economic Outlook Databaseでの予測値になっています。ただ、筆者が日経月曜日の景気指標欄から算出した2012年1月-10月のGDPデフレータ前年比は▲0.4%と、1998年以降ではデフレながらも最良の値となっています(CPIがプラス領域に入った2008年はGDPデフレータでは▲1.3%とマイナス領域)。筆者の推測に過ぎませんが、日銀などの予測とは異なり、日本の物価はあとひと押しでデフレ脱却が見通せるところまで来ているように思えます。

安倍政権では現在アベノミクスとよばれる、金融・財政政策総動員の政策によりデフレ脱却を目指しています。 2012年には既に物価上昇の兆しがあるのですから、この政策が成功すれば、自殺者数も更に減って元の2万人程度に減少する可能性が出てくるでしょう。 

 ただ、インフレ転換を確認せずに、自公民三党合意を守って来年以降消費税を5%も上げるとすれば、国債の日銀直接引き受けといったような、よほど強いリフレ政策を併用するのでもない限り、再びデフレ傾向が強まり、アベノミクスの成果が水の泡となる可能性があることにも注意が必要です。

*1:フィリップス曲線に倣えば、不謹慎な表現ですが、経済的背景がない「自然自殺率」が2万人といったところでしょうか。

*2:フィリップス曲線では横軸:失業率、縦軸:物価が普通ですが、筆者のエクセル操作技術不足で、図表2はフィリップス曲線とは縦軸横軸が入れ替わっている点はご注意ください