シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

アベノミクスと伊藤元重東大教授の関係

昨年暮れ発足間もない安倍政権は、最重要課題と位置付けるマクロ経済政策の司令塔となる経済財政諮問会議の民間議員を発表しました。

諮問会議、成長重視の布陣 現役経営者を起用   日経オンライン 2012/12/28 13:03

 政府は28日午前、最重要課題と位置付けるマクロ経済政策の司令塔となる経済財政諮問会議の民間議員を発表した。東芝佐々木則夫社長、三菱ケミカルホールディングスの小林喜光社長、伊藤元重東大教授、日本総合研究所高橋進理事長の4人を起用する。来年1月上旬に初会合を開く。経済成長を重視する顔ぶれで、デフレ脱却への道筋を確実にしたい考えだ。

そうそうたるメンバーの中には、東大の経済学者、伊藤元重氏の名前も見えます。
伊藤元重氏はこの発表に相前後して、インフレターゲット政策についての自身の考え方を述べています。

 インフレ・ターゲティングはデフレ脱却の特効薬となるのか  2012年12月27日伊藤元重「瀬戸際経済を乗り切る日本経営論」

インフレ・ターゲットの設定はデフレマインドを払拭させる強力な手法ではある。しかし、それに伴って実体経済の需要が拡大しないかぎり、デフレからの脱却はありえない。
需要を拡大させるためには、政府による財政政策の発動や、規制緩和策などによる市場活性化が必要となる。そうした政府サイドの行動なしに、金融政策だけにデフレ対策の成果を求められても困る。日銀関係者はそう主張してきた。


 これを読むと伊藤教授は現在、財政発動を伴ったインフレターゲット論に理解を示しておられるようです。 文面を読めばインフレターゲットだけではデフレ脱却はなく、財政政策発動を伴ってこそデフレ脱却があり得る、ということで、どうやら現在の安倍首相・麻生副首相とも考えが近いと思われます。

ただ、今年4月の新聞では少し異なった見解を述べておられました。

東京大・大学院教授、伊藤元重 建設的論議なき反消費税2012年4月7日 産経新聞
「景気を悪くしてまで増税するのか」「日銀が貨幣を増やせばすむ話ではないか」「天下りや政府の無駄遣いを残したまま増税は認められない」「マニフェストに書いてない増税をするのは認められない」等々、実に様々な消費税反対論がある。それぞれの主張はバラバラでも、消費税増税反対という旗の下に集結することで、大きな政治的な力となる。反グルーバル活動と同じように、反対の声の下に集まることで、マスコミにも報道される。
しかし、それでは日本の財政制度はこのまま数年ほうっておいてよいのか、という点については何ら建設的な議論は見られないように思える。

 私のような経済学者から見れば、今の日本の財政状況を見て、危機感を覚えないのは不思議だ。
消費税を数パーセント上げたからといって問題が根本で解決するわけではないが、消費税の引き上げもできなくてはどうしようもない。そんな状況に追いつめられた中でも、反消費税の勢力がこれだけ大きくなるものだ。それだけ消費税引き上げは、攻撃の絶好の旗印になるのだろう。
結局最後は、国民がこの問題をどう判断するのかにかかっている。
国民が正しい判断ができれば、反対のための反対の勢力は力を失うはずだが。

この考え方は当時政権にあった野田首相の考え方に近いようです。

実際、野田首相は、2012年11月27日には伊藤元重氏を三党合意に基づく消費税増税に向けた社会保障制度改革国民会議委員に起用しています。

アベノミクスと、増税財政再建論は東大の経済学では両立し得るのでしょうか。 
経済学に疎い筆者などには解りかねるところです。
もう少し伊藤先生の考え方を遡って見てみましょう。

「大いなる安定」が終わった後に必要なシュンペーター的思想とは?
ダイヤモンド・オンライン 2012年7月2日

 財政の問題を例にあげてみよう。日本の財政状況は惨憺たる状況である。GDP比で200%近くの公的債務を抱えている国など、まともな先進国には一つもない。おおよそ40兆円の税収で90兆円近くの歳出を続けていく国の財政は、破綻しているようなものだ。皆さんの親戚や友人で、年収400万円で毎年900万円の支出を何年も続けている家があったら、それはほとんど生活が破綻していると警告するはずだ。日本の財政はそのような状況にある。
…。財政がこんな状況になっているのに、いまだに消費税引き上げに反対する政治家が、これだけ多い日本。政治の質は明らかに劣化している。

 現状を維持しようとするだけでは、いずれ大きな破壊が訪れる。その先には新たな創造への道があるとしても、そうした混乱に備える心の準備が必要だ。日本が直面している多くの問題がそういった面を持っている。

 たとえば日本のリーディング産業が次々に海外展開を加速化している。こうした変化は長期的な日本の繁栄のためには避けて通れない道である。ただ、その過程で地域経済に起こる混乱をどう考えるのか。

 日本の財政に問題があれば、本来それを是正するのが政治家の仕事である。しかし、政治家がそうした仕事をしなければ、市場が国債価格暴落という警告を発する。私たちは市場の警告に耳を傾けなくてはいけない。そして、その警告のなかに創造への道筋を探す必要があるのだ。

 かつての英国はGDP比250%の公的債務を抱え、しかもそれを減らしていきましたが(図1)、英国はまともな先進国ではなかったのか、というツッコミは置いておくとして、こちらの記事は、ゾンビ型企業が市場から退場してこそ新しい経済が蘇る、というシュンペータリアンの考え方ですね。
アベノミクス財政再建共存だけでもわかりにくいのに、更にシュンペータリアン的思想まで加わって参りました。

図1 第二次世界大戦後の英国の公的債務
第二次世界大戦後の英国はGDP比250%以上の
債務を抱えていたが、国債残高の前年比の伸びより、名目経済成長率が
上回って上昇したことで比率は下がった。*1

そして。

数年以内に危機のおそれ、構造改革の先送りは限界に--伊藤元重東京大学大学院経済学研究科教授《デフレ完全解明・インタビュー第6回(全12回)》2011年03月09日

要点
・人口減と高齢化、グローバル化の進展に適応していない
・産業の空洞化、財政は破綻の可能性が高まっている
・痛みを伴う構造改革が必要、先送りはもはやできない

構造改革によるTFP上昇に、成長率引き上げの可能性
──(インタビュアー)潜在成長率を引き上げるにはどうすればいいのでしょうか。

…。女性の労働参加率が日本はまだ低い。そのうえ、キャリアを志向しにくい状況にある。よくM字型というが、出産・育児で女性の就業率が下がるのは、日本と韓国だけという。保育園が未整備で待機児童の解消が遅れているとか、米国の女性がやっているように、外国人のメードさんを雇えないとか、そういう政策の失敗を改めて、女性が働く機会を提供できれば、成長率が上がる可能性が出てくる。育児も介護もインフラがボロボロで、キャリアをあきらめている女性が多い。フィリピンやインドネシアの労働者を入れたくないというのは、業界のエゴだ。

IT(情報通信技術)の活用も有効。医療はITを活用すれば、効率的にサービスを強化できるだろう。
そういうことを目に見える形で進めていけば、デフレギャップを解消していく原動力になる。

 伊藤先生、これってサプライサイド経済学ですよね。 痛みを伴う構造改革って、小泉カイカクで、竹中先生あたりが唱えていて、日本の非正規雇用ワーキングプア増加に貢献したアレですか。 
 要するに、伊藤先生は リフレ政策であるアベノミクス財政再建に加え、シュンペータリアン的思想とサプライサイド経済学構造改革を進めることこそ日本経済再生の道、と仰るわけですね。 よく解りました。

 話は全然別ですが、私が小学生のころ遊びでジャンケンをやっていると、ある友達、あまり仲の良くなかったある友達が、「パー」の形から薬指と小指だけちょっと曲げ、親指人差し指中指を立てた「同時グーチョキパー」というのを編み出して、私らがグーチョキパーのどれを出しても「勝ったー」と叫んでいたんですけれど、伊藤先生のご高説を賜ると、この「同時グーチョキパー」を喰らった小学生の時の、砂を噛んだような気分が蘇るんですけれど、一体なぜなんでしょうね?