シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

ベクトルが揃ってきた流動性の罠脱出法

三橋貴明氏がブログ*1に次のように書いています。

 ポール・クルーグマンの新著「さっさと不況を終わらせろ 」、すごくいいです。
 わたくしは自分が読んで感激した本以外は、当ブログでご紹介しないことにしておりますが、これは文句なしでおすすめできます。何しろ、帯の裏に本文からの引用があるのですが、
「いまは政府支出を増やすべきときで、減らすべきときじゃない。民間セクターが経済を担って前進できるようになるまでそれを続けるべきだ。それなのに、職を破壊する緊縮政策ばかりが広まっている。だから本書は、この破壊的な痛切の蔓延を食い止め、とっくにやっているべき拡張的な雇用創出策を主張しようとするものだ」
 となっているのです。
なんだ、三橋の言っているのと同じじゃないか
 と思われたかも知れませんが、あちらはノーベル経済学者、こちらは一作家、一中小企業診断士です。権威が違います。

クルーグマンの主張と三橋貴明氏の主張が第三者からみて「なんだ、三橋の言っているのと同じじゃないか」と言えるほど重なっているとはシェイブテイルは正直初めて知りました。

ここで以前提示しました、最も単純化した国の財政(図1)を使って整理してみます。この図ではマネーの動きだけ追っています。

図1最も単純化した国の財政スキーム
この図では政府は導管としてだけ存在し、そのほかの主要経済主体である民間(非金融部門)、
金融機関、中央銀行間をマネーが行き来すると描いている。

クルーグマンによる流動性の罠からの脱出シナリオは以前は図2左のように、殆ど金融政策一辺倒だったと思われますが(下のコラム)、2009年に転向 *2して、現在では「金融政策と財政政策の同時発動」に意見が変わってきたようです(図2)。

図2 クルーグマンの主張の変化
以前は、いわゆる量的緩和などの金融政策だけで流動性の罠から
脱出できる(左)という主張だったが、2009年以降は金融政策と財政政策
を同時発動させて脱出せよ(右)と述べている。

2009年以前のクルーグマンによる流動性の罠脱出シナリオ
 (1)構造改革が需要を喚起するかどうかは疑問
(2)バブル崩壊後、日本政府が非効率な経済対策を繰り返した結果、財政が急激に悪化し、これ以上の財政出動は許されない
(3)だから、ゼロ金利政策では十分ではなく、非伝統的な金融政策を中央銀行は取るべき 
(4)インフレ期待を高め、実質金利をマイナスにすれば「流動性の罠」からの脱出は可能になる。

 一方ブログを書いている三橋氏自身は、以前は内債である国債は破綻の恐れはなく、国債をどんどん刷って財政政策を行ないデフレ不況を脱出せよと主張していたと思われますが、最近では「日銀から借りて、財政政策を実施せよ」と、主張が変化してきているようです(図3)。 その結果クルーグマンと三橋氏の主張は共に、「中央銀行を財源として財政政策を実施して流動性の罠を抜けろ」に一致してきています(図2左,図3左)。

図3 三橋氏の主張の変化
以前は、国債発行による財政政策だけでデフレ不況から脱出できるという主張(左)だったが
現在は「日銀から借りて財政政策を実施せよ」と述べている(右)。

ということは、三橋氏の最近の主張は京大・藤井聡教授が主張している「列島強靭化論」、つまり「日銀と政府アコードによる大規模財政政策によるデフレ脱却」とも一致しているということでもあります。

クルーグマンにしても、三橋氏にしても、もしかすると、上のスキームはシェイブテイルの誤解であり、「私の主張は一貫している」と反論するのかもしれません。ただそうであった場合にも、図1のような簡単なスキーム上で金融財政政策でのマネーの向きを一種のベクトルとして示せば、それぞれの主張が明確になることは確かです。