シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

NIFでは何年後にレーザー核融合発電が実現するか

去る7月20日、核融合研究の進展について次のようなニュースが流れました。

レーザー核融合反応の実験に成功、クリーンエネルギー実現か=米国
Y!2012/07/20(金) 09:49

  世界最大のレーザー核融合施設である米国国立点火施設(NIF)はこのほど、米カリフォルニア州でレーザ―光線192本を放射する実験に成功した。これは、「衝撃点火」方式による人類史上もっとも威力のあるレーザー光線の放射で、核融合を利用したエネルギー変換の歴史を大きく変えるものと期待されており、将来的に、人類はこの方法を利用し、クリーンエネルギーを手にすることが期待できる。中国網日本語版(チャイナネット)が報じた。
  5日に行われた実験でのレーザー放射時間はわずか230億分の1秒で、米国全土の消費電力量の1000倍以上に相当する500兆ワットのエネルギーが放出された。マサチューセッツ工科大学(MIT)の科学者は「実験の成功に興奮している。以前なら、こんなことは太陽や惑星の中心部でしか起こり得なかったことだ」と話す。
  NIFが設立された目的は、恒星の中心部で起きているレーザー核融合反応を人工的に起こすことによって、クリーンエネルギーを生産するという偉大な夢を実現することだ。
  人類は今後、実験室で人工的に核融合反応を起こし、巨大なエネルギーを作り出すことができる。「使い切れない」と言ってもいいほどのクリーンエネルギーを手にし、エネルギーの新時代を切り開くことも夢ではない
。(編集担当:米原裕子)

さてそれでは、ここで紹介されているNIFのこの装置を使えば、一体いつ頃核融合による電力供給が始まるのでしょうか。もしかすると、はやばやと数年後には核分裂による原子力発電所からも、限りがありまたCO2を排出する化石燃料を燃やす火力発電所からも開放され、クリーンなレーザー核融合発電所が出現するのでしょうか。 
ところが、実はどうやらその答えは未来永劫始まらないかも知れない、というもののようです。

と言いますのは、ひとつにはこのサーチナのニュースには原文*1と比較すると、大きな誤訳またはミスリードする表現があるからで、もうひとつは、NIFの設立意義に関するものです。

 上の記事で誤訳またはミスリードするだろうという部分に緑色をつけました。
そもそも、この編集者が誤解しているのは、今回NIFの装置で核融合反応の実験をしたわけではなく、その準備段階の実験で、核融合に点火するためのレーザーの出力がごく瞬間的に全米の発電量の1,000倍に達した、というだけのことなのです。 
従って、500兆ワットの出力が放出されたのは、核融合によってではなく、外部電力源駆動のレーザー装置からということです。

 また文中の緑字の「こんなこと」を太陽内部で発生する事象などと言うのですから、読者は普通に核融合のことかと思いますが、実際には、恒星内部のような高温高圧状態のことを指しています。

 それともうひとつのNIF設立意義について、記事の結論部分で、「レーザー核融合反応を人工的に起こすことによって、クリーンエネルギーを生産する」とされていますが、

NIF設立の本当の目的は

1990年代初め、・・・、米国は1942年に始まる原子爆弾開発からの半世紀に渡る核物理学の研究実績の結果、水素爆弾の開発に関連した最高度の軍事機密であるコンピュータ・シミュレーションによって水素の核融合時の挙動を解き明かしたとの自負から、1990年半ばに他国に研究内容を一切明かさぬままローレンス・リバモア国立研究所内でレーザー核融合に関する実験施設の建設、つまり軍事研究としての性格を帯びたNIF計画(National Ignition Facility)を開始した。この秘密計画が順調に運んだため、米国は1999年にITER計画*2より離脱した。しかし、その年の末に設計上の大きな問題が隠蔽されていたことが判明し、必要予算は膨らみ、建設は大幅に遅れることが明らかとなり、計画は根本から見直されることとなった。全てをNIF計画に賭けていた米政府も、2003年2月にITER計画に復帰した。 NIF計画は当初での建設費用は7億ドル以下であったが、1997年には21億ドルまで上昇し、2000年には33億ドルに増えて、完成予定も結局7年遅れる事となった。関連費用まで含めると50億ドルに届くとNIFの反対派は主張している。この誤算以前は米国も磁場閉じ込め方式で世界のトップの位置を日仏と争っていたが、ITER計画に再加入した時点では大きく遅れをとっており、計画の主導的地位には戻れそうにない。今もレーザー核融合のNIF計画は継続している。

ということだったのです。*3 
つまり、NIF設立は軍事目的(水爆シミュレータ)であって、この技術の発展形ではもしかすると、レーザー核融合もあるでしょうし、実験天文学ということで恒星内でのプラズマの挙動を調べたり…、ということもあるのでしょうが、現在のNIFの装置については、ある報道では、”Commercial power will never come from NIF itself”と書かれていまして、商業的なレーザー核融合までにクリアすべき多くの課題は、NIFでの経験を踏まえた別のレーザー核融合装置を待つ必要があるようです。*4
 こうしてみますと、NIFに比べても今年4月に報じられた、「レーザー核融合反応を「爆縮高速点火」による手法で100回連続して起こすことに成功」した阪大・浜松ホトニクストヨタグループの装置*5の方が、商業的なレーザー核融合発電に向けては1歩も2歩も先んじているように思います。