シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

資金需要の低迷とリフレ政策の間

近年、企業の資金調達コストが下がり続けています。

企業の調達コスト最低、貸出金利1%割れ  カネ余りでも投資に慎重 (日経 H24.07.10朝刊)

 企業の資金調達コストの低下が止まらない。5月の国内銀行の貸出金利の平均は0.989%となり、1993年の統計開始以来初めて1%を割り込んだ。信用力のある企業が発行する社債金利も相次ぎ1%を下回った。低金利でも、先行き不透明感から企業は借金して投資することには慎重なためだ。空前の「カネ余り」なのに、実体経済にはお金が行き渡りにくい状態が続いている。
 国内銀行の6月の貸出残高は約400兆円。預金残高はこれを約200兆円上回った。預金の伸びが貸出の伸びを上回った結果、この差額は10年間で2倍に拡大した。

乏しい融資先
 預金を元手に融資するのが銀行の本業だが、法人向け融資は5月時点で総額262兆円と、ピークの95年当時の7割未満にとどまっている。企業の資金需要が乏しいため銀行の手元に預金が積み上がる「カネ余り」となり、貸出金利がさらに下がる構図だ。
 日銀が金融緩和を強化して企業向け融資の基準となる期間2〜3年の市場金利を下げたことも貸出金利が下がった一因だ。日銀は4月末に資金を供給するため購入する国債の償還までの期間を最長2年から3年まで延ばした。これを受け2年物の国債利回りは0.1%近辺まで下がった。
 9日にはみずほコーポレート銀行新生銀行あおぞら銀行商工組合中央金庫が大企業向けの貸出金利の指標となる長期プライムレート(最優遇貸出金利)を10日から現行より0.05%下げて年1.25%にすると発表した。水準としては2003年6月と並んで過去最低となった。

 足元の国内景気は堅調だが、「日本経済の長期的な成長力が下がるのでは」という不安から企業は借金して大型投資に踏み切る意欲はまだ鈍い。

 企業の資金調達コストはかつてないほど下がっているにもかかわらず、銀行からの貸出しは増えないジレンマが続いています。 
この状況はどう捉えるべきなのでしょうか。

 昨日、ある人のツイートに、青木泰樹という方が最近書かれた論文*1 が面白い、とあったのでみてみました。

経済論理の濫用による政策論議の歪みについて
─ 財政政策と国債問題を中心として ─ 
 平成24年7月7日 青木 泰樹
(前略)
しかし、インフレ・ターゲット論には致命的な欠陥が二つある。ひとつは、マネタリ
ズムと共通の欠陥である「貨幣の注入経路」が欠如していることである。中央銀行が民
間経済へ貨幣を注入する経路を欠いているために「ヘリコプターマネーの仮定(すなわ
ちヘリコプターで現金をばらまくこと)」をとっている。しかし、カネをばらまいただ
けで景気が浮揚する論拠が明確ではない。後に見るように、カネをばらまいても金融的
流通内にカネが滞留する限り所得の増加は起きない。産業的流通内でカネが使われて初
めて景気は浮揚するのである。第二に、実質金利の低下が投資増に結びつく経路を考え
ているが、先の見えない状態である不況期に若干の金利低下が大幅な投資増に結びつく
とは考えにくい。不況期にリスクをとれるのは中長期的視点から経済運営を考えられる
政府だけなのである。
いずれにせよ、インフレ・ターゲット論は、供給側の経済学にマネタリズムの主張を
重ね合わせた構造をとっているがゆえに問題が残る。すっきりしない。金融政策に依存
するだけで、財政政策の発動に論究できないからである。したがって、そうした論者は
常に奥歯に物が挟まったような言い方しかしない。自らが既にケインズ経済学を捨て去
ってしまっているから、財政発動の必要性を言えば論理矛盾に陥ってしまうからである。
もちろん、主流派経済学者から放逐される危険性も増す。ただし、需要側の立場を取り
入れ、すなわち拡張的財政政策との合わせ技(ポリシー・ミックス)を使えば利点が発
揮される可能性がある。(以下略)

青木氏はケインズ論者のようで、どちらかといえばリフレ政策には批判的なので、そこは割り引いて読んで良いと思います。
ただ、インフレターゲット量的緩和だけで、インフレ期待によりデフレを脱却、という考え方は、「致命的」は言い過ぎかもしれませんが、冒頭の日経記事とも通じるところがあり、私シェイブテイルも疑問におもっているところです。 
青木氏はヘリマネ政策とは金融機関に潤沢にマネーを積み上げる政策という意味に使っているようです。
そう捉えて読んだ場合、「カネをばらまいても金融的流通内にカネが滞留する限り所得の増加は起きない。産業的流通内でカネが使われて初めて景気は浮揚するのである。」という青木氏の主張は説得力があるように思います。 

 量的緩和政策が効きにくいのは日銀が敢えて残存期間の短い国債に限って買うため、という説があります。 しかし、もし残存期間の長い長期国債を日銀が買った場合にも、日銀当座預金として積み上がるのは同じマネーなので、その元が残存期間の短い国債だろうが残存期間の長い国債だろうが、期間的に量的緩和策自身がある程度の長期間続くとすれば、日銀が購入する国債の残存期間と量的緩和の効果には差がないように思えるのですがいかがでしょう。

 産業へのマネーの経路(出口)なしに「インフレ目標と量的緩和によって、によってデフレ下の企業や家計が投資や消費を拡大するだろう」、というのはデフレ下で資金を借りる企業や家計の立場にたっても、資金を貸す側の金融機関の立場に立ってももうひとつ説得性に欠けるシナリオのように思えます。