シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

日本ではなぜ消費税増税がデフレを持続させるのか

 前々回(消費税・世論調査と税収の推移)、前回(消費税アップで税収が減ったのは減税のせい?)のエントリーで、1997年の消費税増税以降、日本はデフレ*1に陥り、税収が減ったことを書きました。
それに対しある方から、「たった一度の消費税アップがなぜ15年にも渡ってデフレ化する影響を与え続けているのか」という疑問をいただきました。 今回は、なぜデフレ下の消費税がデフレを更に悪化させるのかを考えてみましょう。

1.デフレにより消費税の価格転嫁不足
 現在の日本のように、デフレ下で消費税が課せられた場合、企業は原材料を仕入れる際にできるだけ安価で仕入れようとします。
その結果、原材料供給側の企業は消費税を完全には転嫁できずに販売してしまいます。

図1 消費税を価格転嫁できない企業の比率
「中小企業における消費税実態調査」による。売上階層別。
消費税を十分に価格転嫁できていないと回答した企業比率。
売買の力関係が弱い中小企業は、消費税を価格転嫁できない
と分かっていても販売せざるを得ないという実態が見える。

2.消費税身銭払いによる運転資金不足
企業の会計年度内は消費税転嫁不足の影響はそれほど顕在化しないかもしれません。しかし、企業の会計年度が終わり消費税支払い時期になれば、税務署は価格転嫁できていようがいまいが、事業者からその付加価値の5%を消費税として召し上げます。 すると預かっていない消費税を身銭払いすることになり、運転資金の不足を招きます。 運転資金の不足した企業は、自らの仕入先に対しても価格を値切ったり、似た仕様の低価格品に乗り換える低級財シフトを行なって資金不足を補おうとしますが、この過程で日本の名目GDPは一回り小さくなります。

3.家計も縮小
企業の運転資金が不足すると、企業は原材料費を縮小するばかりではなく、人件費も縮小しようとします。 正社員の月給こそなかなか下がりませんが、ボーナスが減額され、また正規雇用社員をリストラして、給与を変動費扱いできる非正規雇用の社員に入れ替えます。
http://d.hatena.ne.jp/shavetail1/20110723
図2 非正規雇用者比率の推移 年々増大の一途をたどっている。詳細は画像をクリック

こうして、サラリーマン給与もデフレ下で消費税が増税された1997年をピークに下落を続けることになります。
http://d.hatena.ne.jp/shavetail1/20120429
図3 下がり続けるサラリーマン給与と足踏みを続ける日本経済の規模 詳細は画像をクリック

4.日銀による資金の供給不足
日銀では物価を観察しながら市場への資金供給を行なっていますが、物価を「同じ商品バスケットを購入するとすればいくらかかるか」という消費者物価指数(CPI)で把握しているため、企業や家計がマネー不足となって、下級財シフトを起こしていることが検出されていません。 下級財シフトも含めて反映されるのは、同じ物価指標でもGDPデフレータという物価指標であり、デフレ経済では特にGDPデフレータに対して消費者物価指数が上方にずれる傾向があります(消費者物価指数の上方バイアス)。要するに本来の物価より、日銀が把握する物価が常に1%内外は高めに出ているということです。 日銀は、物価の安定と称して、消費者物価指数(CPI) を0%に維持しようとしていますので *2、資金は本来の需要よりも常に絞り気味となり、消費税と日銀のCPI0%デフレ目標政策とが相互に増強しあって、日本経済を強力にデフレ圏内に押し留めているといえます。
http://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/283520/www.stat.go.jp/data/cpi/4-1.htm
図4 消費者物価指数(CPI)とGDPデフレータの関係 詳細は画像をクリック
日銀はCPIを0%に押さえ込むことを好むが、CPIには1%程度の上方バイアスがあり
下級財シフトも含めて反映される物価指標であるGDPデフレータはCPIを常に下回る。
CPIとGDPデフレータの差は、デフレ突入前(平成9年以前)よりもデフレ突入後
の方が拡大しているようである。 

以上のように、財務省主導の消費税増税策と日銀主導のCPI0%デフレ目標政策により毎年毎年日本経済は縮小を続けています。
これらのふたつのデフレ要因のひとつまたは両方を除かない限り、日本のデフレ脱却は困難でしょう。*3

*1:2年以上連続した物価下落。物価指標をGDPデフレータで見た場合。

*2:今年の2月14日以降はCPI1%を目指すと日銀は発表しましたが、現在までの日銀の金融政策はデフレ脱却姿勢は見せかけだけのような動きに終始しています。

*3:今日の新聞では公正取引委員会中小企業庁の人員による消費税「転嫁Gメン」を新設し、消費税が転嫁されているかを監視する方向で検討されているようです。ただ、日銀の資金供給絞込みが今後も続くとすれば、バイイングパワーがある企業は、本体価格を下げさせてトータル金額を抑制させることも可能ですから、事実上は転嫁Gメンも物価向上にはつながりにくいのではないでしょうか。