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日銀は市場からの警告に気づくことができるか

4月に入って株式市場に変調しています。

 まず過去数ヶ月の東京株式市場を概観してみましょう。
 昨年来の欧州危機により株価は低迷していましたが、1月中旬ギリシャデフォルト確実との報道により逆にアク抜けし、1月25日のFRBインフレ目標設定報道で一段高となりました。FRBインフレ目標導入により、それまでの日銀のインフレ目標否定主義は世界の中央銀行から孤立を深めることになり、国会で自民党からも日銀法改正が声高に叫ばれ始めたため、2月14日には日銀はそれまでの路線を180度転換し、慌ててインフレ目標を導入しました。これにより株価は更に高値を目指すこととなり、3月27日には東日本大震災以来となる10255円をつけました。

 ところが、日本銀行は2月に物価上昇1%を目指して強力に金融緩和を推進すると宣言したにもかかわらず、日銀が供給する通貨の伸びが足元で急減速していることが4月3日に判明しました。 するとその翌日の4月4日には日経平均が前日比230円安・9820円の安値引けと、今年最大の下げを演じました。 

 日銀の言い分としては、昨年3月に東日本大震災があった後、日銀はベースマネーを増大させたので、1年後の今は昨年比ではベースマネーが減少してしまう、ということかも知れません。しかし東日本大震災の影響での見掛け上の落ち込みを避けるために3カ月前比年率で見てみた場合でも、今年3月は6.7%減と2月の16.4%減に続きやはり著しい落ち込みとなっています。

 前回3月の日銀金融政策決定会合では、追加緩和も見送られました。 結局日銀はこの2ヶ月間で物価安定の理解という文言をインフレ目標という文言に置き換えたことと、わずかに10兆円、日本の経済規模の2%ばかりの金融緩和をしただけで、実際にはベースマネーを減少させ、見せかけだけの金融緩和姿勢で済まそうとしていることが市場にも見透かされてしまったわけです。

 日銀が今回インフレ目標を自ら設定した責任は決して軽くありません。 もし仮に1997年に、消費税が上げられた局面で日銀が2-3%のインフレ目標を設定・順守し、日本経済に十分なマネーを供給してさえいれば、その後の日本経済は現在のようにデフレの15年に苦しむこともなかったのですから。 

 筆者は野田政権が消費税増税の過ちを犯す可能性は五分五分と見ています。もし消費税が10%に上げられた場合にも日銀が世界でも例を見ないデフレ目標政策を堅持しているとすれば、日本経済は前回の消費税アップ時を上回る、壊滅的な被害を受けるでしょう。
 その際日本経済に甚大な被害を与えた白川日銀に対して、世論は寛容的な態度を示すでしょうか。

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