シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

「人は静かに狂っていく」こととデフレ格差日本

ツイッターで、akaya625さまから『なんかこう、マクロで見ちゃうと問題点がズレる気がしてならない。うつ、ってはっきりと診断して断言できる医者がどれだけいるのかも疑問』というコメントをいただきました。
昨日の2番目の うつ病についてのエントリー についてかと思います。
確かに'97年からデフレが始まり、そのころからサラリーマン給与が下がり始めたことと、同時にうつ病急増していることから筆者が

日銀デフレ→不況→うつ病

 という仮説を導いていることに対して「問題点のズレ」と言われればご指摘の意図は分からないでもない気がします。 
まだそんな定説もないですし。

そこで一旦、マクロ経済と疫学の両方から離れ、次のエッセイについて考えてみたいと思います。
ポスドクからポストポスドクへ(円城塔).pdf 直円城塔)-人は静かに狂っていく

 このエッセーを書かれたのは非線形物理学の研究で東大での博士号を得、その後ポスドク*1さらにポストポスドクという経歴を辿られた34才の作家でもある円城塔氏です。 
 みなし公務員として雇用が定年まで完全に守られた大学職員達と、雇用が1〜数年でしか持続せず年収の金額的にも厳しい期間雇用の非正規雇用者であるポスドクとは、研究内容はほとんど優劣がつけがたいのに、その環境は天と地の差が開いています。 その両者が毎日接触する、大学での研究生活。 そしてポストクやポストポスドクたちは次第に精神を病んでいくという話です。

 これが直接akaya625さまへの回答とは言えませんが、akayaさまあるいは筆者がこの、若い人達にも厳しい格差が存在するデフレ経済環境と精神疾患の関連性について考えるヒントになるかと思います。

【関連記事】
現代日本でなぜ精神疾患が増えているか」(2011-07-09)


(一部再掲)
(前略) 厚生労働相患者調査で、各精神疾患の増減状況が公表されています。*2
1996年を基準年とした精神疾患別増加数に変換したものが次のグラフです。
図を見ると、近年急増している精神疾患とはうつ病・不安障害と認知症であることが分かります。認知症は日本の高齢化の反映です。つまり老齢者以外で増加している精神疾患とはうつ病と不安障害のことなのです。 
では'90年代末からのうつ病・不安障害の増加は一体何の反映なのでしょうか。

下のグラフは社会実情データ図録に掲載された自殺数の推移です。*3 

自殺は'98年から急増し高止まりしています。 職業別では、無職者(失業者など)、勤労者の増加が目立ちますが、絶対数が少ない自営業者は、増加率ではトップです。
このことは、消費税の実質負担者が中小・零細企業主であることと関係がありそうです。*4 *5
次の円グラフは、警察庁の「平成 21年中における自殺の概要」*6から、自殺者32千人中の動機判明者24千人内での自殺動機です。

多くの分析で、自殺原因の中に健康問題というのがありますが、その大半はうつ病で、うつ病と経済問題を合わせれば自殺原因の約2/3を占めています。
 筆者はこのブログで以前インフレ率と自殺者数に強い相関があることをお示ししました。*7
 右下がそのグラフです。横軸が物価指標のGDPデフレータ、縦軸が自殺者数(千人)です。'97年の消費税アップを経て、GDPデフレータがマイナスになると、自殺者は一気に急増し、高止まりしています。(消費税とデフレの関係についてはこちらこちら

これら一連のデータを眺めると、日本社会は'97年あたりから大きく変化し、うつ病・自殺多発社会に変化していることが分かります。 うつ病は自殺の引き金ともなっています。 自殺者は、失職者・勤労者・自営業者など働き盛りだった男性が中心です。 毎年1万人として、自殺が急増した’98年以降、15万人近い働き盛りの人たちが余計に自殺させられています。 またその予備軍のうつ病患者も増大中です。

【関連記事2】
デフレ日本でOccupy Wall Street国際呼応デモが盛り上がらなかったのはなぜか
(前略)
図4はJMRというコンサルタント会社が世代間の劣等感に関する自己認識の違いをアンケート調査により調べたものです。*8
これによると、世代が若くなればなるほど、特にバブル後世代では劣等感が強くなっていることがはっきり見て取れます。バブル後世代とは1975年から'86年生まれ世代であり、少子化世代とは'87年から'94年生まれ世代です。バブル後世代が学校を卒業する頃には既に日本はデフレ傾向が顕著で、就職もままならないのが当たり前という時代になりました。その後現在までの約15年、労働者から見た景気は良くなったことがありません。
良い景気を知らない世代。 彼らは何度受けても正規雇用してくれない会社や、働いても配偶者と子どもひとりの三人暮らしもままならない200万円台の賃金、めでたく正規雇用されたと思ったら、自分の2倍3倍の賃金の高齢上司らから長時間残業を命ぜられるなどといった自分自身を取り巻く酷い経済状況を、政府や日銀の失政の為とは思わず、「不甲斐ない自分」を責めているのではないでしょうか。 だから日本では賃金が減り続けていても、Occupy Tokyoは盛り上がらない。 
そう考えると、日銀デフレの犠牲者の若い世代に対して、筆者は深い同情を禁じ得ません。

図4 日本の各世代の劣等感
[各世代の生年]
焼け跡世代:1925-'45年、団塊世代:'47-'49年、断層世代:'51-'60年、新人類:'60-'70年、
団塊ジュニア:'71−'74年、バブル後世代:'75年-'86、少子化世代:'87年-94年

*1:ポストドクター、ポスドク=博士研究員(はくしけんきゅういん、postdoctoral fellow)とは、博士号(ドクター)取得後に任期制の職に就いている研究者や、そのポスト自体を指す語である。英語圏での略称であるpostdocに倣ってポスドクと称されたり、博士後研究員とも呼ばれる。

*2:http://www.mhlw.go.jp/kokoro/nation/4_01_00data.html

*3:http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2740-2.html

*4:http://d.hatena.ne.jp/shavetail1/20110704/1309759431

*5:http://d.hatena.ne.jp/shavetail1/20110710/1310265638

*6:http://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/220513_H21jisatsunogaiyou.pdf

*7:http://d.hatena.ne.jp/shavetail1/20100705/1278332428

*8:「嫌消費」世代の研究――経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち 松田 久一 (著) に掲載されているデータです。