シェイブテイルのデフレ脱却実践記

シェイブテイル日記ではデフレ経済研究を行ってきました。今後はこれをデフレ脱却実践につなげます。

日本商工会議所こそ消費税増税問題のカギを握っている

【要約】
・消費税の問題点のひとつが「輸出戻し税」問題です。
経団連とは会員が異なる日本商工会議所は、もしかすると消費税問題のカギを握っている団体かも知れません。

 よく知られているように、経団連経済同友会は消費税税率アップに積極的です。 これに対し、経済3団体の残るひとつである日商(日本商工会議所)は、「条件付き賛成」という微妙なスタンスです。
経団連経済同友会が消費税率アップに積極的であることは次の図と関係があります。*1
図の中にある、 戻し税とは、「輸出戻し税制度」による、輸出分に対する消費税のメーカーへの払い戻しを指しています。 この点については晴耕雨読氏の「経団連が消費税に固執するわけ」で詳細に説明されています。
その記事の主要部分を引用させていただくと、


日本経団連が消費税アップを主張するのは、それが法人税減税や高額所得者減税の財源になることだけではなく、トヨタを中心とした輸出企業の利益につながるからである。
トヨタ自動車は、国内で3兆5千億円もの売上を誇りながら、消費税を1円も納付しないどころか、「輸出戻し税」制度に拠り1600億円もの還付を受けている。
トヨタが計上している1兆円の経常利益にはこの1600億円も含まれている。
これは、消費税の課税対象にならない輸出であたかも消費税課税があったかのように国税庁財務省)が取り扱うことで成り立っている“国家的詐欺”である。

【例】
トヨタのディーラーへの卸値:200万円(消費税込みで210万円)
ディーラーの販売価格:250万円(消費税込みで262.5万円)

トヨタは、ディーラーに10万円の消費税を負担してもらうが、還付金が1600億円だからそれを国庫に納付することはない。
ディーラーは、顧客に12.5万円の消費税を負担してもらうが、トヨタに支払った消費税10万円を差し引きことができるから、2.5万円を国庫に納めるだけである。
250万円の自動車を500万台販売したとしてもディーラーが納付する消費税は1250億円程度だから、ディーラーが納めた消費税総額よりも、トヨタが受ける消費税還付金1600億円のほうがずっと大きい。
トヨタの卸値がいくらかわからないが、トヨタの国内販売台数は175万台程度しかないから、トヨタ車の国内販売でせいぜい500億円の消費税が納付されているはず)
トヨタに限らない話だが、国産乗用車の購入者は、負担した消費税を国庫ではなくメーカーに支払っているのである。
まだ輸出企業への消費税還付は当然と思っている方は「消費税」のネーミングに惑わされています。

消費税率が上がれば上がるほどトヨタキヤノンの消費税による儲けが増えるのですから、輸出企業が中核を占める、経団連が消費税に強く賛成するのは私利私欲のためと言えます。 なお、ここで消費税による儲け、と書きましたのは、消費税の一部が返って来るという意味ではなく、全く払っていない消費税が更に多く貰える、という意味です。例えば'05年のトヨタは、国内売上に対し支払うべき消費税が374億円、輸出戻し税で貰える消費税が2,665億円で差し引き2,291億円貰っていました。*2
トヨタあたりは、消費税が生まれてから、消費税は差し引きでは払ったことはなく、貰ったことしかないのです。

 ところで、日本商工会議所は立場が異なります。その会員の9割は中小企業であり、以前のエントリーで書きましたように、デフレ下で価格決定権のないことが多い中小企業では払ってもいない消費税を、身銭を切って払わされます。*3 その中小企業を代表する立場であるはずの日商が、なぜ消費税アップに賛成しているのか、筆者は以前から不思議に思っていました。
 最近、こんな記事が地味に出ていることを知りました。

日商、消費税で「慎重な対応」求める 「負担軽減策」とバーター
J-CASTニュース 2011/12/25 18:00
日本商工会議所が「税と社会保障の一体改革」について「消費税の引き上げのタイミングや幅については慎重な対応が必要だ」とする提言をまとめ、政府・与党に申し入れた。日商は「過去の消費増税が経済成長にマイナスの影響を与えた」と、データを基に主張している。
  万一、消費税を引き上げる場合は「デフレ脱却の実現や、中小企業に対する負担軽減策が不可欠だ」と、政府・与党に求めている。

東商会員の9割は中小企業
政府税制調査会民主党税制調査会は税と社会保障の一体改革をめぐり、大詰めの議論を行っている。経済3団体の中で唯一、現在も消費増税に慎重姿勢を示す日商は政府・与党に様々な注文をつけており、年末の議論に与える影響が注目される。
東京商工会議所の場合、会員の約9割を中小企業が占めるなど、日商は大企業中心の経団連経済同友会と構成メンバーが違うため、政策のスタンスも微妙に異なることが多い。今回も日商は「売上高が5000万円以下の小規模・零細事業者の6割以上は消費増税を価格転嫁できない」とする実態調査を挙げ、中小企業に配慮するよう求めた。
売上高1000万円以下の事業者の消費税を免除する免税点制度と簡易課税制度の継続を求めたほか、複数税率とインボイスの導入には「事務作業が繁雑になって混乱が予想される。現行制度でも透明性は十分確保されている」などとして、反対を表明した。
経団連経済同友会とは一線を画す
日商はかつて山口信夫・前会頭の時代は消費増税に明確に反対していたが、現在の岡村正会頭となった2008年10月、社会保障の財源として消費税を引き上げることを容認する立場に転じた。 日商はこれを「条件付き容認」と説明。「消費増税は飽くまで社会保障の財源としてなら、引き上げもやむを得ないが、財政再建などに用いるのは言語道断」という立場だ。この点、経営者の立場から積極的な消費増税を求める経団連経済同友会とは一線を画している。
経団連経済同友会の間では「日商が消費増税に反対していては、政府も消費増税を実現できない。日商が『条件付き容認』に転じてくれただけでも大きな進歩で、日商が求める中小企業の負担軽減策については反対などできない」との本音が聞こえる。
消費増税によって、社会保障など企業側の負担を減らしたい経団連経済同友会にとって、「2010年代半ばまでに消費税を段階的に10%に引き上げる」とした民主党政権の公約実行は「待ったなし」だが、日商はこの限りでない。民主党内では小沢一郎元代表のグループが消費増税反対の署名を集めるなど、増税に反対する動きも出ている。消費増税を含む一体改革の越年も取りざたされており、今後の行方が注目される。

日商って人がいいんですねぇ。 というか、会員の中小企業を全然守れていないですorz
さらに、というか、野田政権では

野田佳彦首相は(2011年11月)3日始まった主要20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)で、消費税増税を表明する。欧州債務危機が主要議題となる中、巨額の国債を発行している日本にとっても危機が「対岸の火事」で済まなくなる恐れは否定できないため、財政再建への決意を「国際公約」として明確にする。

と表明しているのですから*4、日商が懸念しているとおり、野田政権では「消費増税財政再建などに用い」ようと、言語道断のことをしている訳です。
となれば、今となっては日商が「条件付き賛成」の立場のままであることこそが問題だと思えます。
筆者は、経団連関係者が本音で語ったように、日商が、消費税増税のカギを握る団体だと思っていますので、近いうちにこの日商の態度について日商に問い合わせてみようと思っています。 結果が分かれば、またご報告します。

【追記】数日後、実際に日商に見解を聞いてみました。→  消費税に対し日本商工会議所はどう捉えているのか