シェイブテイル日記2

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デフレ日本でOccupy Wall Street国際呼応デモが盛り上がらなかったのはなぜか

 少し前の話になりますが、今年10月25日に、全米に拡大する抗議行動「Occupy Wall Streetウォール街を占拠せよ)」に呼応したデモが世界中で催されました。*1

言うまでもなく、Occupy Wall Street運動とは、1%の最富裕層に富が集中し、格差が拡大し失業率も高止まりする米国の現状に抗議する運動で、日本ではOccupy Tokyoとして国際呼応デモが開催されました。 ところが、当日会場の日比谷公園に集まったのはわずか100人程度だったとか。当日は、例えばニュージーランドオークランド市でも約3000人が運動に参加しています。





図1(右) 米国トップCEO100人平均の所得は平均的労働者の何年分か 図2(左) 米国での26週以上の失業率推移
図1はアメリカの企業トップで所得上位100人の平均所得が平均労働者の年収何年分かを示したものです。 近年では米国労働者は1700年以上働かないとトップCEOの年間所得に追いつかず、相当に所得格差は大きくなっていることが分かります。
図2は米国での26週以上の失業率推移です。 こちらもリーマン・ショック以降下がる気配はありません。。*2
これらのデータを見れば確かにOccupy Wall Streetに参加した米国労働者の気持ちも分かります

それでは日本の労働者は恵まれているか、といえばどうでしょうか。 図3は日本と他の主要国の名目賃金推移を比較したものです。*3
これを見れば生活実感に近い名目賃金が下げ続けているのはデフレ日本だけであり、日本の労働者だって海外労働者、あるいはそれ以上に怒ってもよさそうなものです。

図3 主要国の名目賃金水準推移(自国通貨名目ベース)

ここに気になるデータがあります。
図4はJMRというコンサルタント会社が世代間の劣等感に関する自己認識の違いをアンケート調査により調べたものです。*4
これによると、世代が若くなればなるほど、特にバブル後世代では劣等感が強くなっていることがはっきり見て取れます。バブル後世代とは1975年から'86年生まれ世代であり、少子化世代とは'87年から'94年生まれ世代です。バブル後世代が学校を卒業する頃には既に日本はデフレ傾向が顕著で、就職もままならないのが当たり前という時代になりました。その後現在までの約15年、労働者から見た景気は良くなったことがありません。
良い景気を知らない世代。 彼らは何度受けても正規雇用してくれない会社や、働いても配偶者と子どもひとりの三人暮らしもままならない200万円台の賃金、めでたく正規雇用されたと思ったら、自分の2倍3倍の賃金の高齢上司らから長時間残業を命ぜられるなどといった自分自身を取り巻く酷い経済状況を、政府や日銀の失政の為とは思わず、「不甲斐ない自分」を責めているのではないでしょうか。 だから日本では賃金が減り続けていても、Occupy Tokyoは盛り上がらない。 
そう考えると、日銀デフレの犠牲者の若い世代に対して、筆者は深い同情を禁じ得ません。

図4 日本の各世代の劣等感
[各世代の生年]
焼け跡世代:1925-'45年、団塊世代:'47-'49年、断層世代:'51-'60年、新人類:'60-'70年、
団塊ジュニア:'71−'74年、バブル後世代:'75年-'86、少子化世代:'87年-94年

*1:世界で一斉に反ウォール街デモ

*2:The Shocking, Graphic Data That Shows Exactly What Motivates the Occupy Movement

*3:OECD単位労働コストデータベース

*4:「嫌消費」世代の研究――経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち 松田 久一 (著) に掲載されているデータです。