シェイブテイル日記2

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QE3ではFRBによる国債の直接引き受けが良い理由

【要約】
FRBによるQE1,QE2政策により資産価格崩落は避けられましたが依然失業率は高止まりし、商品価格が高騰しています。
・QE3でこの副作用を避けるのであれば、FRB国債を直接引き受けて、財政政策を実施することが良策と考えられます。

S&Pによる米国債格下げの後、米国では景気減速、失業率高止まりが懸念される中、量的緩和第三弾(QE3)の可能性が高まっていると報じられています。*1

6月まで継続されていたQE2ではFRBは6000億ドルの米国債などの資産を市場から買い入れ、大量のドルを市場に供給しました。その結果、米国でも懸念されたデフレは回避され、長期金利を低く抑え、株式や社債、その他の金融資産の価格を押し上げることにも効果はあったと思われます。
ただ、金融機関に溜まったドルは石油や穀物、その他の商品に向かい、世界中でこれらの生活必需品の価格を押し上げ、新興国などでは金利を引き上げる動きが強まりました。
 米国では失業率を下げる効果は大きくなく、新興国で今後金利を上げるなど景気抑制策を取らざるをえなくなる要因ともなっていて、QE2が世界経済に与えた影響は善し悪しが混在するまだら模様となっています。(図1)

図1 QE2の効果 資産価格維持、デフレ回避には効果があったが、失業率は高止まりしたままで、国際的な商品価格の高騰を招いている

ではQE3を実施する場合、どのような方策での金融緩和であるべきなのでしょうか。
QE2の問題点は、資金不足の民間非金融部門には十分に資金を提供できておらず、金融部門に金余りが生じるために、国際商品市場などに資金が流入する点にあると考えられます。 そうであるならば、金融部門を介さず、直接に民間非金融部門に資金を提供できるスキームの方が優ります。こうしたスキームの一つは、政府が発行する国債FRBが市場(=金融機関)を介さずに買い入れ、この資金を用いて政府が減税その他の財政政策を実施することです。(図2)

図2 あるべきQE3の一方策  金融機関を介さないので金融機関の金余りを引き起こさず、直接的に民間非金融部門に資金を供給できる

このような政策のバリエーションとしては、他には市場で国債を新規発行し、財政政策を実施するとともに、FRB国債を買いオペすることで市場の国債残高をリバランスしやすくするというのでもいいでしょうし、 将来的な国債価格変動(好景気に伴う金利上昇、国債価格下落)によりFRBのバランスシートが痛むのを避けたいと考えるのであれば、国債発行に代えて米国の一部で議論された1兆ドルプラチナ貨構想も一考に値するかもしれません。*2
 マネーが不足しているなら、不足しているセクターに直接供給する。 これは日米、国がどこであっても真理といってよいのではないでしょうか。

*1:超低金利政策の時間軸設定はQE3の序章に、追加策探るFRB議長 http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-22665620110811

*2:アメリカ版政府貨幣構想が検討される? http://d.hatena.ne.jp/shavetail1/20110723/1311433765