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株価暴落のメカニズム

 株価暴落。 いやな響きですね。 最近では3月の東日本大震災とその後の福島第一発電所事故の後、株価は歴史的な暴落をしました。 これ以前でも2008年9月のリーマン・ショック、1987年のブラックマンデーなどなど、大小様々な株価暴落を私たちは経験しています。
 もしかすると、週明け以降米国債のデフォルトが現実化すれば、また株価暴落、という悪夢があるかもしれません。
【8月5日追記】8月4日のニューヨーク株式相場では、世界景気に対する懸念を背景に全面安の展開となり、投資家の損失確定の売りを巻き込みながら売りが加速した。優良株で構成するダウ工業株30種平均は前日終値比512.76ドル安の1万1383.68ドルと暴落しました。
では過去の暴落時の株価はどう動いたのでしょうか。

2011年東日本大震災前後の株価
日経平均

 
2008年リーマン・ショック前後の株価
(DOW平均)

 
1987年ブラックマンデー前後の株価(DOW平均)

ただ、面白いことに、株価暴落があった時、急速に株価が下がった所が、前後での株価最安値であることがしばしばです。リーマン・ショックの場合には翌年3月に2番底を経験していますが、仮に1番底付近で株を買ったとしても、中長期で持てば大きく儲かったでしょう。
では、後から見れば大きく儲かりそうなタイミングで、投資家はなぜ我先に株を投げるのでしょうか。

これを考えるヒントになりそうなのが、行動経済学*1、その中でもプロスペクト理論*2です。
行動経済学は、その他一般的な経済学とはことなり、分析対象の人間を完全無欠とは仮定しません。不完全な情報のもと、経験・山勘で不合理な行動も取るのが人間です。 1等賞が当たる確率よりも、抽選日までに不慮の事故で死ぬ確率の方が高い宝くじが売れたり、事故死する確率が低い飛行機を怖がって、より死ぬ確率が高い自動車で旅行したりするのが人間の行動というものです。
プロスペクト理論には価値関数というものがあり、実証的なデータを積み上げてみると、人間にとって損失は同程度の利益の2から2.5倍も強く感じるものだということがわかっています。 株式でいえば、ちょっと株価が騰がってもちょっとうれしいだけだが、ちょっと株価が下がると大いに痛みを感じる、というわけです。
株価が暴落する材料が出た時、リスクに特に敏感な人は早々と株を投げ売りして、これ以上の損失を避けようとします。すると更に下がった株価の痛みに耐えられない人々が続いて投げ売りします。 こうして雪崩を打って、株価下落と投げ売りの連鎖が暫く続きます。
そうすると、株式をそれでも持っている人々は、逃げ遅れて、暫くは株式投資を諦めた人々(恐らく多数派)とリスク耐性が高い人々だけになってしまいます。 面白いことに、価値関数は損失が大きくなると下落幅が小さくなり、更に株価が下がってももうそれほど酷いとも感じ無くなっていきます。 そして投げる人が尽きた株価はあとは騰がるしかない、こういったストーリーだと思われます。


プロスペクト理論の価値関数 人間は利益よりも損失を強く感じる性質がある。*3

 問題は、バブル崩壊後の日本の株価のように、暴落が繰り返されるタイプの株価下落も稀にあることです。我々日本に住むものからみれば、バブル崩壊からリーマン・ショック後最安値まで20年かけて下げているので、「稀」という表現も如何なものかとは思います。
 ただこの場合は、土地三法、高金利での強制バブル潰しに始まり、現在の不況下増税論、日銀デフレターゲット政策堅持など、日本政府が馬鹿げた政策を20年以上もの間採り続けた結果であり、株式や為替暴落時のプロスペクト理論の有用性はもっと研究されていいように思います。