シェイブテイル日記2

シェイブテイル日記をこちらに引っ越しました。

日銀国債引き受けの有効性を日銀金融研究所はよく知っている

【要約】
・日銀金融研究所の歴史研究課長が高橋財政についてコメントしています。それによれば、
 1)高橋財政期の5年は高インフレとはならなかった
 2)国債日銀直接引き受け自体には問題はなく、物価も安定し、拡張的マクロ経済政策のもと、昭和恐慌から早期脱出できた;GNPは年平均6%、インフレ率は1.5%程度拡大
 3)円安と財政支出拡大による効果も大きく、金本位制離脱で大幅な円安を実現。
 4)軍部に高橋是清が殺害されるとこうした好条件が崩れ、高インフレとなった
と鎮目氏は事実を語っています。

日銀金融研究所の鎮目課長が、インタビューに答えて次のように語っています。*1
赤字をつなげて読めば鎮目氏の真意が分かりますよ。

インタビュー:日銀国債引き受け、いずれインフレ招く=日銀研究所
[東京 20日 ロイター] 日銀による国債直接引き受けの是非について、鎮目雅人・日本銀行金融研究所歴史研究課長は、1930年代前半の高橋是清蔵相時代の事例について、当初5年程度は高インフレが生じたわけではないとしつつ、その後の歯止めなき財政拡大につながり、激しいインフレをもたらしたと説明。
 当初の景気浮揚局面とその後の軍需による利用という局面を分けることなく、日銀引き受けという当初の制度の導入が後の戦時インフレまで連続的につながっていくという見方に立って、歴史の教訓に学ぶべきとの認識を示した。
  <当初の日銀引き受け自体に問題なく
 1930年代前半に昭和恐慌からの脱却を図るために高橋是清蔵相が主導した拡張的なマクロ経済政策のもと、日銀による国債直接引き受けが行われた。この事例では、当初は物価も安定し、昭和恐慌から早期脱却できたとみられている。実質国民総生産(GNP)は32─36年度は年平均プラス6.1%、インフレ率(GNPデフレータ)も1.5%程度の上昇におさまっていた。 こうした物価安定のもとでのしっかりした成長が実現した要因について、鎮目課長は円安と財政支出の拡大による効果が大きかったと説明。
 まず、金本位制離脱による円安政策により円の対ドル相場は1931年の金輸出再禁止の後1年で60%下落。「景気回復とデフレ克服に大きな効果を発揮した」とみている。2つ目が「財政支出拡大と金利の引き下げ。他国より大規模な財政支出を行い、併せて公定歩合は計4回引き下げられて3%程度利下げされ、大胆な景気刺激策がとられた」ことも寄与したという。
 同時に、発行が急増した国債について、日銀による直接引き受けを実施。しかし、日銀はこれを速やかに市中に売却していたため、日銀によるマネー供給量はさほど増加せず、円安による輸入物価の上昇にもかかわらず、国内物価ではインフレが抑制されていたとみられる。
 鎮目課長は、国債の発行市場が未発達ななかで中央銀行が一時的に国債を引き受けせざるを得ない状況があり、それをなんとか市中に売却できていた当初の段階ではインフレにはつながっていなかったと説明。

<拡張的財政支出につながり激しいインフレに>
 このように日銀引き受け導入当初において高インフレは生じなかったものの、鎮目課長は「中央銀行による国債引き受けはこのようにはじめは問題がないように見えても、財政支出の増加に歯止めがかからなくなり、その後激しいインフレをもたらしたというのが、歴史の教訓」だと指摘。1936年、二・二六事件で高橋蔵相が暗殺された後、日銀引き受けは歯止めがきかなくなり、戦時インフレへとつながっていく。
 鎮目課長によると、具体的な日銀引き受け状況の推移をみると、32年─36年度の各年度の国債発行額は7─8億円、GNP比4─6%で推移、うち8─9割が日銀引き受けにより発行された。
 ところが高橋蔵相が暗殺された後の37年度の国債発行額は22億3000万円、GNP比9.8%に増加。うち16億6100万円が日銀引き受けとなった。37─40年度までのインフレ率は(GNPデフレータ)はプラス11.9%に跳ね上がった。その後太平洋戦争の物価統制を経て戦後の物資不足もあり、激しいインフレとなったという。
 このほか、「軍需がなくとも日銀引き受けが実施され、インフレにつながった事例として、戦後の復興金融公庫債の日銀引き受けの事例がある。この時期、日銀の政府向け貸付と復金債の日銀引き受けにより、財政ファイナンスが行われたことが、激しいインフレの要因として挙げられることが多い」と説明。
 鎮目課長は「32─36年の間だけとれば高インフレが起きたということではない が、しかしその後の時代とは分けて考えることは適当とは思えない」との見方を示した。「いったん、中央銀行による国債引き受けを始めると財政支出の増加に歯止めが効かなくなり、国債の日銀引き受けの額が膨らんでくると、市中に売却しきれなくなり、インフレにつながった」と指摘し、当初はうまくいっていても日銀引き受けという制度を導入することでいずれ制御不能のインフレを招くと強調した。
 (ロイターニュース 中川泉 石黒理絵  編集 内田慎一)

鎮目氏はさすが日銀金融研究所で金融史の専門家。赤字だけをつなげてみると、戦争さえしなければ、日銀の国債直接引き受けは有効、とちゃんと高橋財政期の日銀国債直接引き受けを評価してます。まぁ日銀で禄を食む立場ですから、高橋財政を持ち上げすぎることはしていないですけれど。 
それに対し、この記事全体の日銀引き受けに対して否定的なトーン。ロイターの中川記者は日銀の御用記者振りが際立ちます。

【関連記事】このエントリーの、実証的な裏付け です↓
日銀による国債直接引受でなにが起きるか-高橋財政期の分析
高橋是清自身が語った高橋財政
デフレ日本では国債直接引き受けが国債買いオペに優る理由