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日本の物価トレンドは変化したのか

5月27日の日経新聞によれば、消費者物価はプラスに転じたとのことです。

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消費者物価2年4カ月ぶりプラス 4月0.6%上昇  2011/5/27 10:56  総務省が27日発表した4月の消費者物価指数(CPI、2005年=100)は変動の大きい生鮮食品を除くベースで99.8となり、前年同月比で0.6%上昇した。前年比でプラスとなるのは08年12月以来2年4カ月ぶり。原油高騰などでエネルギー価格が上昇したほか、高校授業料の実質無償化の影響が4月で一巡したことも物価指数を押し上げた。
 4月の上昇率は、民間エコノミストの予測中央値と同じだった。生鮮食品を含む総合は0.3%上昇の99.9。食料とエネルギー価格を除いた総合指数(欧米型コア)は0.1%低下の97.2だった。
(以下略)

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日本のマスコミは一口に消費者物価指数と呼んでいますが、正確に言えば消費者物価指数(CPI)とは生鮮食品もエネルギー価格も含んだ価格変動となっており、天候などで大きく変動する生鮮食料品は除かないと中長期の傾向が見えにくくなりますので生鮮食料品を除いた消費者物価指数を、日本ではコアCPIと呼んでいます。 欧米では更にエネルギー価格も除いた指数をコアコアCPIと呼んでいます。(ややこしいですが、日本でいうコアコアCPIを欧米ではコアCPIと呼びます。)
次のグラフの2枚目は、これらCPI、コアCPI、コアコアCPIの推移を示しています。

日本の消費者物価指数推移(CPI,コアCPI,コアコアCPI)
3つのグラフを比較すればすぐ分かるように、日本の最近の「物価上昇」とはCPIとコアCPIに限られ、コアコアCPIは中長期的な下落トレンドが継続していることが分かります。 要するに日本の消費者物価上昇は、ほぼ全てを海外に頼るエネルギー価格の上昇を反映しているだけで、肝心の国内の物価は下がり続けているというわけです。 
 
 では、他の主要国ではCPIはどのように変化しているのでしょうか。 総務省の統計によれば次の図のように変化しています。

主要国のCPI推移(出典:総務省統計局) 各国の物価水準(CPI)は日本も他の諸国もリーマンショック以前の水準に戻った(2本の矢印)。ただ、リーマンショック当時はCPIは日本も他の諸国もマイナスだった(楕円部分)にも関わらず、戻ったCPIの水準が異なる。

 このグラフで注目すべき点は(1)現在の日本のCPI水準が他国よりも低い(2)リーマンショック当時(2008年秋)には物価が下落し、日本と同様にCPIがマイナスに転じた国もありましたが、日本を除けば全てそれ以前のCPI上昇率2%前後に復帰していることです。 日本についても、現在はリーマンショック以前のCPI0%に戻っているとも言えます。つまり、日本でも物価水準を理想的な2%程度にしたければ、リーマンショック当時に他の国々も実施したような規模の金融緩和をしさえすれば2%にすることは可能なのに、日本(日銀)はCPI0%が望ましいと考え、実現しているということになります。 しかし、CPI0%という状態は、日本のこの15年間の状況通りのデフレです。 それはCPIという物価のものさしが実は1%前後プラス側に歪んでいることに起因しています。

 東日本大震災では製品・サービス供給が途絶えて物価が騰がるという予測もありましたが、実際には需要も冷えており震災で国内の需給がバランスし、物価が上昇することはありませんでした。 震災の復興財源に消費税を上げるなんてことでもしたら、97年の3%から5%に消費税をあげたときと同様にデフレを加速するだけです。 またただ単に国債を増発しても物価を上げ、景気を回復させる上では意味が無いこともこの20年間の失政で証明済です。
 日本の物価を適正に上げるには、日銀がCPIの狙いを0%から2%に上げ、他の諸国が実施したように適正な水準に紙幣を増やす。 この単純明快な答え以外には解はないのです。

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