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財務省・日銀は景気回復を恐れている

 普通に考えたら、財務省や日銀が日本の景気回復を恐れることなど思いもよらない話です。 実際、”景気回復を恐れる”でググッてもたった1件ヒットしただけでした。 ただ、ふと次のように思いました。

財務省資料・「我が国の財政事情」H23年版によれば、国及び地方の長期債務残高は合計約900兆円あるとされています(図1)。

図1 「我が国の財政事情」(財務省) 国及び地方の長期債務残高
その結果、国債利払い費も財政を圧迫する規模である年間約10兆円となっています(図2)。
この国債利払い費推移を見ると、公債、つまり国債残高が毎年増大しているにもかかわらず、利払い費の増加はS61年(1986年)あたりから鈍化し、H11年(1999年)からは逆に減少しはじめ、H17年(2006年)には年間7兆円にまで減少しました。 これは、我が国の金利がS57年(1982年)以降H17年まで一貫して低下し続けた結果です。
 ところが、金利もどこまでも下がるものではありませんから、同年以降は金利1.4%に張り付いています。そして国債残高はその間も増加する結果、利払い費は反転して増え始め現在は約10兆円となった訳です。

図2 「我が国の財政事情」(財務省) 国債利払い費と金利推移
今後、利払い費がどうなるかと言えば、金利はこれ以上下がらない水準であり、国債残高は単調増加するのですから、経済環境が大きく変わらない限り、利払い費は増加する一方で減少することはもうないでしょう。
 昨今、日本の景気は多少上向いているという報告が相次いでいます。 日銀もそれなりに金融緩和をしていますし、アジア諸国を中心とした新興国ではインフレが大きな懸念材料となるほど景気が好調ですので、輸出企業を始めとして業績好調企業も少なくありません。 
 ただ中期的に見れば、このまま景気回復が強まるシナリオもあれば、国内政治の混乱や中東政治情勢、あるいはギリシャなどの欧州諸国の財政問題再燃などから景気が二番底に向かうシナリオも十分考えられます。
 ところが、利払い費に注目すれば日本が大きく景気回復した場合にも、経済が混乱した場合にも金利は上昇し、利払い費が増大することが予想されます。 前者が「良い金利上昇」、後者は「悪い金利上昇」と呼ぶのでしょうが、利払い費増大を加速させることでは一致しています。
 現在でも一般会計約90兆円のなかで、税収は40兆円に過ぎませんから、政府にとって利払い費10兆円は軽い負担ではありません。財務省・日銀の官僚の立場で考えれば、少なくとも自分たちの在職中には国債の利払い費が発散状態となることだけは避けたいでしょうから、彼らの目には国債の信頼が落ちて金利が上昇する「悪い金利上昇」のみならず、景気回復による「良い金利上昇」であっても、国債の秩序あるシステムを破壊するものと映っている可能性は否定できません。 H17年の利払い費増加以降は、「自分の在職中には景気は回復して欲しくなく、また国債の破綻も避けたい。」 というわけです。
 つまり、現在の「不況で長期金利が底」という状態こそ財務省や日銀官僚にとって居心地の良い状態なのではないでしょうか。こう考えると、昨今の財務官僚が消費税増税キャンペーンを繰り広げるナゾが解けます。 日本経済が潰れてでも自分の在職中には波風が立って欲しくない。 こういったところでしょうか。
 しかし、高校生レベルで経済を知っている人でも、不況時に増税すればどうなるかは分かります。 1997年当時の消費税増税時と同じように、多少の好景気はいっぺんに暗転し、官僚が望む増収さえ実現せず、その結果彼らが嫌がるはずの「悪い金利上昇」を引き寄せることになるでしょう。

 景気がよくなっても、景気が落ち込んでも利払い費は増大するなら、打つ手はないのか。 次回はこの点を考えます。