シェイブテイル日記2

シェイブテイル日記をこちらに引っ越しました。

世界中がデフレ?

先日、週刊エコノミストをパラパラ見ていましたら(2010年9月28日 p36)、内閣府のある人が「個人的見解」と断って、「デフレになっているのは日本だけではない。」という論旨のことを書いていました。
私も前に書きましたが、デフレを「2年以上続く物価下落」と定義した場合、日本以外にもデフレを経験した国々は確かにあります。 下の表のピンクの部分がそれらの国々でデフレだった年です。

日本がデフレの継続期間ではダントツに長い(’98年以降’10年まで13年間、現在も継続中)ですが、シンガポールなども2年、3年のデフレを経験していますね。
 しかし、このデータを、簡単な統計的処理をしてみますと、新たな情報が現れてきます。

「デフレ国」の長期物価水準(平均)とその標準偏差(’97年−’09年)

まず、97年から09年までのGDPデフレータ消費者物価指数よりもバイアスが少ない物価指数)が平均値でマイナスであるのは日本だけです。
もう一つ、日本のGDPデフレータにバラつきが小さいことも分かります。
そこで、上の表に出てくる各国のGDPデフレータ推移(対前年比)をグラフ化してみました。

「デフレ国」のGDPデフレータ対前年比
赤い線が日本、緑色がシンガポール、黄色がルクセンブルクです。細い線はその他の「デフレ国」です。
物価指数平均上昇率が低いほうから1,2,3位の3カ国ですが、物価変動の様子は随分違っていますね。
シンガポールルクセンブルクは、他の「デフレ国」と同様に物価対前年比が上下にブレています。
 それに対し、日本は、対前年比マイナス1%付近で大変安定しています。 この間07年から08年には商品価格の激しい上昇が、そして08年後半以降はサブプライム問題、リーマンショックと、経済環境が激動しているにも関わらず、です。 その他の「デフレ国」の物価変動にも要注目です。 日本を含めた「デフレ国」のGDPデフレータ対前年比の平均値を青い点線(----)で示してみました。物価のコントロールが十分でない国々の物価は、環境要因によって、他の国々の物価変動(つまり方向としては青い点線)の上下に釣られるように変動していますが、日本はあたかもマイナス1%にイカリを下ろした船のように、殆どマイナス1%前後から外れません。 

 それと、最初のピンクで塗ったGDPデフレータの表を見て思いますのは、「デフレの罠だから、どんな策でもデフレからは脱却できない。」というまことしやかなウソをつく学者も少なからずいる、ということです。
 要はやり方であり、シンガポールでも中国でも、イスラエルでもギニアビサウでも、エクアドルでも、トリニダード・トバゴでも、一旦デフレになっても簡単に脱出しています。

さて現在、与謝野氏が入閣し、藤井氏が副大臣就任と、ガチガチの増税論者で菅内閣は固まりつつあるようですが、それで問題はないのでしょうか。

 戦略には、それを考えるべき枠組み、フレームというものがあります。
最初から図の右下の増税に的を絞るのではなく、日銀による恒常的通貨不足という大元の原因に焦点をあてなければ、年金のみならず、国債増発、産業空洞化、円高、デフレなどの、日本経済が直面する全ての問題から抜け出すことができません。


 内閣府の方がどのような意図で日銀弁護とも取れる記事を書いたのかは知る由もないですが、データから見れば、日銀は、確信犯としてマイナス1%のデフレターゲティングをやっているのは明らかです。
また、昨今は日銀も世論に押されて欧米の後追い金融緩和をしていますが、その金融緩和も「物価上昇率が1%になるまで」しかしないそうですから(2番目グラフの点線まで)、他の「デフレ国」の物価のブレから見ても、+1%までとは、極度にインフレを恐れた金融緩和の限度であるように思われます。


ここまで見てきましたように、物価水準をコントロールできるし、また実際出来ている日銀がマイナス1%のデフレターゲティング政策を採っていることはデータから示されました が、なぜそんな馬鹿なことをしているのかは「ナゾ」です。
次回のエントリーからはこの「ナゾ」を考えてみたいと思います。

もしこの記事をご覧のあなたが、日本をデフレから脱出させたいとお思いでしたら、このエントリーのURL
http://d.hatena.ne.jp/shavetail1/20110119
を、ツイッターなどで広めることにご協力ください。