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バブルを介さず、金利も上げずにデフレ脱却する方法

今朝の日経新聞に、日銀の包括的な金融緩和策に対する評価が載っています。

11月18日日経新聞大機小機
(以下引用)----------------------------------------------------------

日銀の「包括的な金融緩和策」は派手な見せかけとは裏腹に、実態的なデフレ脱却に向けた金融政策として不十分なものにとどまっている。
第1に、「ゼロ金利政策復活」と報道されたが、実際は政策金利である無担保コール翌日物金利は今も0.1%弱と包括緩和策導入以前とはほぼ同じ水準に維持されている。
第2に、FRBと異なり、日銀には自らのバランスシートをさらに拡大させようとする意欲がみられない。新たに設定する基金による長期国債買い入れは「銀行券ルール」の対象外としたのだから、長期国債購入の大幅増額による強力な量的緩和を実施できるはずだ。
第3に、包括緩和策を継続する期間の判断基準として「物価安定の理解」というおよそ一般国民には意味不明のあいまいな概念が使われている。なぜ端的に「2年後のインフレ率2%を目指す」といった形で目標インフレ率を明示しないのか理解に苦しむ。
第4に、ETFなどのリスク資産の買い取りに踏み切ったこと自体は大きな前進だが、買い取り規模は上場投信、REIT合計で5000億円とごく少額にとどまる。
リスク資産買い取りは財政政策の領域に近い性格のものであり、本来政府自らの責任で実施すべき施策である。実行部隊としての役割は日銀が担うとしても、政府保証を付することが適当であり、そうすれば買い取り規模は格段に大きくできるだろう。
日銀が速やかに緩和姿勢を強化し、「目標インフレ率」を明示したうえで、長期国債の買い入れ増額による量的緩和の拡充と政府との協働によるリスク資産買い取りの拡大に踏み切ることが望まれる。
デフレを克服し、日本経済を持続的な成長軌道に復帰させるための政府の役割を一言でいえば「企業活動を支援する環境の整備」であり、具体的には?法人税率の引き下げ?規制改革の徹底?TPP参加を含むEPAの積極的推進――の3点である。
(引用終り)----------------------------------------------------------

この日経新聞の批判は、3点とも量的な不足を指摘しています。
確かに、FRBの緩和策に比べると緩和規模が小さく、小出し小出しの印象は拭えません。

ただ、量はともかく方法論として、日銀の「包括的な金融緩和策」がデフレ脱却へのベストの道か、といえば疑問が残ります。

【市場から国債を購入】
 日銀は2001年から2006年まで、市場から国債を買ってインフレ誘導を狙いました。
しかし、国債を買ってもらった金融機関はこれをカネが不足している企業・家計にほとんど回すことはありませんでした。その理由は、国際的な規制により金融機関の資本を厚くする必要があったこともありますが、デフレ下の実質金利高では、優良投資案件は減ってしまっており、結局国債への投資が増え、国債バブルが形成されています。あれほど資産バブルを恐れる日銀が、国債バブルにはまったく鈍感なのは不思議ですが。
それはともかく、金融機関に着目すればカネ余りであり、中小企業や個人から見ればカネ不足という状態は、市場から国債を買うという方法では解消しませんでした。

【リスクのある金融資産の買取り】
10月、日銀は「包括的な金融緩和策」と謳って、ETFなりREITなどのリスク資産買取ることを決めました。
確かに日経の指摘のとおり、買取り量は不足しておりますが、ETFなりREITなりを日銀が買えば、これらの資産のリスクが下がり、価格上昇することを通じ、民間にカネが撒かれることは事実だと思います。
ところが、このやり方だとまず資産インフレを介してでなければモノ全体のインフレへの転換はできない欠点があります。 FRBのQE2も同様で、資産を買うのですから、まず資産価格が上昇します。 でも上げたいのは資産価格ではなく、一般物価であるはずです。 新興国などでは、先進国のこのタイプの金融緩和策が、インフレの輸出となって、弊害化しつつあります。

◎デフレ脱却という目的を考えると、直接カネ不足のセクター(中小企業や個人もさることながら、政府も)にカネを流すのがベストでしょう。 別に国債バブルや資産バブルを介する必要はありません。
そのためには
政府紙幣
 高額政府紙幣を政府が発行し、これと日銀券とを両替して、政府が財政政策につかう
あるいは、
【日銀による国債直接引受け】
 新規国債を発行し、これを日銀に直接引き受けさせ、財政政策に使う
のどちらか有力選択肢です。

また、【市場から国債を購入】、あるいは【リスクのある金融資産の買取り】といった方法の場合、積み上がっている1000兆円規模の国債・地方債はそのまま残っていますので、日本が破綻する場合と同様、景気が好転しても長期金利は高くなり、政府は利払い費の急増に苦しむことになります。

政府紙幣】、【日銀による国債直接引受け】であれば、市場に出回る国債の量を減らすことも自由ににできますから、この点もこれまでの金融緩和策に比べると大きなメリットです。

しかし、最近調べたところでは、政府紙幣が週刊誌などでも取り上げられたこの2年に限っても国会で政府紙幣関連の質疑は数えるほどしかなく、肯定的な質問をしたのが大久保勉、中野正志杉浦正健小沢鋭仁の4氏だけ。
答弁する政府側はことごとく否定的で、先の自民党時代の与謝野氏などに至っては「論外です。」で答弁終了。
 そもそも政府の収入は 税収+国債+紙幣発行益なのですから、
 デフレ脱却にこれだけメリットがある【政府紙幣】、【日銀による国債直接引受け】について十分な検討さえ出来ていない政府(旧自民党政権を含め)は一体何をしているのでしょうか。