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補正予算のデフレ脱却効果を考える

少し前になりますが、10月26日に 政府は26日、「円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策」を盛り込んだ補正予算案を閣議決定しました。
今日はこれを材料に、財政政策とデフレ脱却の関係を考えてみましょう。

(引用開始)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

[東京 26日 ロイター] 政府は26日、「円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策」を盛り込んだ2010年度補正予算案の概算を閣議決定した。

 対策規模は、公共事業の契約前倒し分を含めて5.1兆円程度。財源は2010年度税収見積もりを当初予算から2.2兆円増額したほか、国債費の不用など既定経費の削減や2009年度決算の剰余金などを充当し、新規国債の発行を回避した。この結果、補正規模は4兆4292億円となった。

 緊急経済対策の内訳は、雇用・人材育成に3199億円、新成長戦略の推進・加速に3369億円、子育て、医療・介護・福祉などの強化に1兆1239億円、地域活性化、社会資本整備、中小企業対策に3兆0706億円の合計4兆8513億円。これに公共事業の契約前倒しによる「ゼロ国庫債務負担行為」の2388億円を加え、5.1兆円程度となる。

 これを賄う主な財源として、09年度下期の好調な企業収益を反映した法人税の増加などを中心に2010年度税収見通しを2兆2470億円増額。想定よりも市場金利が低位で推移していることなどによる国債費不用分を中心とした既定経費の減額1兆4313億円、09年度の決算剰余金1兆6247億円などで確保した。財務省によると、新規国債発行を伴わない補正予算は、1999年度1次補正以来。10年度税収見積もりは、増額の結果、当初の37兆3960億円から39兆6430億円となる。

 補正予算案では、09年度決算剰余金のうち半分の8123億円を財政法の規定通り、国債整理基金特別会計に繰り入れる。

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この補正予算を要約すると、
◯使途としては
・雇用・人材育成関係、
・新成長戦略の推進、
・子育て、医療・介護・福祉強化、
・社会資本整備、
・中小企業対策
・公共事業

◯財源としては
・税収
・政府予算減額
となります。
これら財源とその使途の組合せを一つ一つ考えていきますと、結論としましては、残念ながらどの施策もデフレ脱却には繋がらないと思われます。 
以下詳しく見てみます。

 財政政策を、まずそのお金の使い方(財源と使途との組合せ)の効果を「一次効果」、その一次効果による経済効果を「二次効果(今回の分析にはこちらは省きます)」と呼ぶものとすればそれぞれの使途の一次効果は全て、
税収または他用途政府予算→家計または企業…?
というカネの流れになっています。
ここで税収は、といえば、
納税者(家計または企業)→税収 …?です。
他用途政府予算はといえば、
他用途政府予算→補正予算(別の政府予算)つまり政府予算→政府予算ですから
結局は 政府予算→家計または企業…? です。
?、?、?より今回の補正予算全てが
家計または企業または政府予算→家計または企業…?というカネの流れになっています。
?で、特に家計または企業→家計または企業という部分は、要するにカネを右から左に移しているだけです。
ところが現在の政府予算の財源は、といえば、
税収または国債→政府予算…?ですから、
?、?から
今回の補正予算案は税収(家計または企業)あるいは国債→家計または企業というカネの流れを作っている
つまり、
イ)国内のどこかの家計または企業のカネを別のどこかの家計または企業に付け替えているか
ロ)国債を財源に家計または企業に渡しているかのどちらか、と単純化できるのです。
しかもこのカネの流れは、今回の補正に限った話ではなく、平成の財政政策は全てこのパターンでした。

しかし、
イ)家計または企業のカネを別の家計または企業に付け替えること
 は、国内のカネの量を変えるものではありませんから、供給力に対してカネの量の不足であるデフレに対しては全く効果が有りません。 
ロ)国債を財源とする方については、以前のエントリーに書いたように
ロ)−1: 国債の元本部分は国民(企業・家計)でのカネの付け替えであり、
ロ)−2:利子の部分は非金融部門から金融部門への非可逆的なカネの流れですから、国債にたよれば頼るほど、非金融部門のカネは減り、金融部門にカネがブタ積みされていく、ということになります。
これは小渕内閣以降十分に実証されているとおり、国債による財政政策をどれだけ実施しても、財源として非金融部門のカネを吸い上げているのですから、結局イ)と全く同じでそれでデフレ脱却が出来る訳はありません。
というより、ロ)−2の利子部分については非金融部門からのカネの吸い上げ効果により、デフレを加速しているといえましょう。

では、税収も国債も、デフレ脱却の財源とは成り得無いとすれば、現代の万年デフレ・日本にはもう打つ手は残されていないのでしょうか。

ここで、そもそも論ですが、国の財源には何があるのかに戻ってみますと、ここで考察している
1)税収
2)国債 の他に

3)通貨発行益というものがあります。
つまり
政府収入=税収+国債+通貨発行益
なのです。

現代日本では通貨発行益というものに馴染みが薄くなってしまっていますが、現代でも例えば中国政府は
半固定相場の元安を維持するために、恒常的に元売り・ドル買いを継続しています。
半固定相場の場合、ドルが増えれば元が不足しますが、その不足分の人民元を人民銀行=国営銀行が発行している、すなわち事実上の政府紙幣を印刷しているとのことです。この政府紙幣の通貨発行益で、元不足をカバーしているというわけです。

今後のエントリーから史実を引いて明らかにしていきますが、過去にデフレになった国で税収によってデフレを脱却した国、というのはないのです。 
デフレ脱却の方策はほぼ決まっており、国債を市場から買うのではなく、政府から直接買う(中央銀行による国債の直接引受け)または通貨発行益を原資に国内(より厳密にいえば非金融部門)の通貨量を増加させるしか手はないと歴史は教えております(近い将来のエントリー予告)。

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