シェイブテイル日記2

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もう買うものがない?

以前は日の出の勢い、と言われていた日本。 最近ではGDPで中国にあっという間に抜かれ、国全体がしぼんだようになってきています。
こうした状況のなか、TVで評論家の方は言います。
「もう新興国で日本で作る大抵のものは作れるようになっています。国内でももう欲しいものがない。これがデフレギャップの原因にもなっています。」

日本国内にはもう欲しいものがない。 これは正しいのでしょうか。
これを判断するために、可処分所得と消費支出の関係を見てみましょう。出典は「国民経済計算」というデータです。 横軸に可処分所得、縦軸に消費支出をとってプロットしてみます。
可処分所得-消費支出
    図1 可処分所得と消費性向
緑色が1985年から2007年までの可処分所得と消費支出の関係を示しています。実線はy=xの線です。
これを見ると、可処分所得・消費支出が約400兆円・250兆円の年(1991年)までは可処分所得が順調に伸び、消費支出もこれに伴って伸びていますが、それ以降は可処分所得は伸びず、にもかかわらず消費支出が増えています。
これは見方を変えれば消費性向(可処分所得に対する消費支出の比率)は下図の通り次第に増大していることになります。
消費性向
    図2 消費性向
こうして見ると、もし日本が「国民から見てもう買いたいものがなくなっている状態」だとすれば、図1のグラフは次第に寝て、図2の消費性向は低下しているはずですが、実際は逆です。
結局因果関係としては、
買いたいものがない→企業の売上低下→従業員の給与減→可処分所得減少
ではなく、
企業の売上低下→従業員の給与減→可処分所得減少→急には今の生活レベルを変えられない→消費性向の上昇
ということだと考えられます。

日米欧とも中央銀行量的緩和を進め、金融機関まではカネが溢れる状況となっていますが、家計をはじめとする非金融部門はカネ不足。 (溢れる金融機関のカネが非金融部門に届かないのが「流動性の罠」です)
非金融部門では需要がないというよりカネがないのですから、日銀・白川総裁らが主張する、「需要自体が不足しているときは、流動性を供給するだけでは物価が上がってこない」ので、「金融政策だけでは限界がある」というのは、データから見て間違っているといえます。


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