シェイブテイル日記2

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経済的には日本は誰に支配されているのか

10月26日に財務金融委員会が開催され、自民党山本幸三議員と白川日銀総裁・野田財務大臣間での為替レートに対するやりとりがありました。
(その動画はこちら)

その内容は一番下に記載しますが、これを眺めていると、童話の「裸の王様」を思い出しますね。
配役としては「裸の王様」が白川日銀総裁、これにおもねる「大臣」は野田財務大臣、そして「子ども」が山本幸三議員なんですが、山本先生、大変よく勉強しておられ、大変鋭く王様と大臣のおかしなところを突きます。
過去にも「王様」は何度も「子ども」に『王様は裸だ!』と叫ばれ、自分が裸であることは重々承知していますが、「子ども」の論点をいなそうとできるだけ無表情でかわします。 野田財務大臣は「もしかしたら裸かな?」と思う心が2割、「でも日銀やマスコミなどがこぞって王様は裸じゃないって言ってるからなー。」というのが8割といったところでしょうか。 でも大変残念なことにこの童話では子どもの叫び声は外国語という設定で、経済学という外国語を勉強していない大半の周囲の人は「なんのこっちゃ」状態。山本幸三氏はよく勉強されており、日本経済の将来のため、いいことを沢山言っておられるが、残念なことにマクロ経済学が分かっていない国民(というか周囲の政府・国会関係者)には言いたいことが伝わっていません。 もう少し簡単に、実例を交えて訴えて欲しいところです。

ところで最近、日銀の組織について関心を持っていまして、中原伸之氏の「日銀は誰のものか」など、日銀関連の過去の書籍を読んでいます。 普通に考えれば、日銀総裁や政策審議委員など、日銀の中枢に登りつめれば、自らの信念に基づき動けばよさそうなものですが、意外に日銀に入った途端宗旨替えをして、日銀の伝統的な考え方に自らを改造していく人が少なくないように思えます。下の質疑にあるように、白川総裁もマネタリストから日銀理論を日銀文学で語る(騙ると書くほうが正しい?)裸の王様に堕ちてしまっています。 田谷禎三・元日銀審議委員あたりも宗旨替え組です。 
 現代日本経済を無意味に振り回しているものは、デフレターゲティング政策を行い続け、金融緩和の要求には小手先のまやかしで応える日銀であるのですが、こう考えてみると、その日銀を支配しているのは必ずしも日銀総裁や各政策審議委員ではなく、「日銀の空気」みたいなものだと思わずにはいられません。
旧日本軍も同様だったのかもしれませんが、愚劣な日本の組織ってタマネギのように剥いていくと最後には何も残らないものであり、今の日本経済ももしかすると、日銀内を満たす、こういった空気に支配されているのではないでしょうか。


(以下は国会インターネット中継の抜き書きです。正確な記述ではないかもしれません)−−−−−−−
財務金融委員会(2010年10月26日)
山本: 為替レートは何で決まっていますか?
野田:ファンダメンタルズで決まります。
山本:短期、中期、長期で分ける必要があります。 最近の短期的な動きは何で決まっています?
野田:投機的な動きによるものです。
山本:投機って何ですか?
野田:短期的な利益を求めての動きと記憶しています。
山本::為替リスクを負っているのはどういう人です?
野田:いろいろいます。
山本:いろいろな立場のみんながリスクを負っているんです。
   為替は短期では過度で無秩序な動きをするもんです。 短期はどうなるかわからない。   しかし中期はかなりはっきり説明できる。 マンデル=フレミング理論で説明できる。 財政政策は単独では効かない。  LM垂直、IS右上がりではIS右シフトしても円高になって効果が打ち消される。  金融政策は、LMがシフトして円安になる。 リーマンショック以降、欧米ともマネーの量を大幅に増やしたが日本は変えなかった。その結果今の円高になっている。マンデル=フレミング理論の言うとおりになっている。
総裁、マネタリとマンデル=フレミング理論をどう考えていますか?
白川:為替の動きの大半を説明する理論はまだ確立されていません。 マンデル=フレミングは有益だけど多くの仮定の上に成り立っています。  リーマンショック後も財政政策は必要だったよ。これは学者も経済運営の実務者も等しく感じているところです。
山本:大蔵省の役人だったころ、1979年でしたか、総裁がシカゴ大学から帰って、あなたがマネタリーアプローチという為替レートに対する考え方を持ち帰って、大変面白い、と勉強させてもらいました。その当時あなたが言っていたのは、為替レートというのは金融政策で決まる。つまり通貨を多く出せば為替は安くなるし、少なく出したほうが高くなる。 そういう主張をされていたんですがあなたは宗旨替えしたんですか?
白川:金融政策が実体経済や為替レートに重要な影響を与えるという認識は今も変わりません。ただこうした考え方は多くの前提に立っており、例えば世界の投資家がどのようなリスクを取っていくのか、あるいは回避するのかについては当時の理論では扱われていませんでした。
山本:リスクアセットの考え方は理解できますが、実際の為替の動きを説明できるのはマンデル=フレミング理論なんじゃないですか。 リーマンショック以降、欧米は猛烈に通貨の量を増やした。日銀は全く増やさなかった。まさにマンデルフレミングの言うとおり、になっていると思いますよ。プラザ合意後は実質実効レートも上がったが、交易条件も上がってそれほど問題ではなかったが、最近は交易条件が下がっている中、実質実効レートが上がっていて輸出業者にとっては大変厳しくなっている。    2003年の円高では、溝口介入、大介入により、実質実効レートが上がるのを止めることができた。その効果は2007年、リーマンショックの前まではあった。 この歴史的経験というのは大事です。 通貨安競争は本当にいけないか。何故いけないんですか?
野田:実質実行レートがなんで決まるかわからないというのは事実だと思います。 通貨安競争がなぜいけないかというと、近隣窮乏策になるからだと思います。
山本:そんなのは1930年代の話ですよ。それは歴史の教訓としては正確ではない。 変動相場制のもとでは、各国が、自国がよくなるように、それぞれ独自にやるのが一番いいというのが、結論で出ているんですよ。
   自国の物価と雇用を目指してやったら一番いいんですよ。 知っていますか?
野田:先進国の緩和が途上国のバブル原因になっています。
山本:議論が理論と違ったら、間違っていると言わなければいけないでしょ。 海外証券投資するときは国内で円口座で海外の人と交換するんだよ。為替レートが変わるだけでバブルなんて起こらないよ。 ダメだよ。 自分の国の責任でやっているからでしょう。
   変動相場制の元では、各国が物価=雇用の安定を達成だけ考えてやれば、世界全体の便益なんだよ。
 野田:介入まで含めたかどうかまでは議論しておりません。
山本:円ドル介入に協力するなんて何処に書いてあるの? 動きを監視する、(will be vigilant) この書き方なら介入なんてできないんじゃないですか?
野田:今までと同じです。
山本:ここは、円キャッシュと一番違うものを買わないとダメで、現在のような低金利では、短期債はキャッシュと変わらないんだから買っても効果はありませんよ。 外貨買わないと大変なことになりますよ。
野田:日銀の今回の措置については一定の効果があるものと評価しております。また今回の介入は為替の過度な変動と投機的な動きを止めるためのものです。大規模な介入を意図してはいません。
山本:今1995年と同じような状況ですよ。 当時アメリカは大規模な金融緩和をやったし、今回もまた大規模な金融緩和をやろうとしている。日銀も1年かけてゆっくりのろのろやっているようじゃダメですよ。
野田:今後は断言しておきますが、このままでは79円の最高値を確実に更新しますよ。断言しておきます。今後介入するつもりはありますか?
野田:必要な時に断固たる処置をします。
山本:海外諸国との協議では、国益を損なわないように理論武装して堂々と主張してください。


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